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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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進む円高 なぜ経済界は静かなのか
USDJPY.jpg

円高が続いています。今日(2010年7月2日)1米ドルは88円を割り込み、1時は160円以上だった1ユーロは110円程度になっています。リーマンショックの前と比べると日本円はドルに対し2割、ユーロに対し3割以上上げた計算です。

円が高くなったのはドルやユーロに対してばかりではありません。韓国ウォンに対してはリーマンショック前0.11円程度だったものが今は0.072円程度です。リーマンショック直後ウォンは0.06円少しまで下落して韓国は日本からの観光客が激増するという「特需」に恵まれたのですが、今は再びその水準に近づいています。

ところが経済界から円高を是正するようにという声は意外なほど聞かれません。一昔前は円高が進むたびに経団連会長が政府に力強い介入を求めるニュースが報じられたのですが、そのような声はほとんど無いかあってもとても小さいようです。

これはどういうわけなのでしょうか。一つにはかつてのように輸出が輸入の1.5倍もあり円高で輸出の収入が減ることの打撃が大きかった時代と比べ、現在のように輸出入がほとんど均衡していると円高は輸出の手取りと輸入の支払いが打ち消しあって国民経済的には中立だということもあるかもしれません。

しかし、これは必ずしも正しいとは言えません。1986年は前年の円高ドル安政策をとることを各国が決めたプラザ合意の余波で、輸出が41兆円から36兆円に激減しましたが、輸入は31兆円から21兆円にさらに大きく落ち込みました。円高で日本は全体として黒字を増やしたのです。

これに対しリーマンショックの前、日本の輸出入額はそれぞれ、84兆円、73兆円だったのが、2009年は輸出が54兆円、輸入が51兆円となり黒字幅は縮小してしまいました。

基本的なおさらいをもう一度するとGDPは(政府最終支出+設備投資+個人消費+輸出入黒字)です。黒字が減ればほかの項目が増えない限りGDPは減少します。リーマンショックは日本に貿易上では7兆円のGDP縮小効果があったと計算できます。これは消費税で考えると3%程度ですから小さな額とは言えません。

国民経済的に見れば現在の円高は過去の円高と比べてずっと「体にこたえる」ようです。もちろん過去の円高の克服が困難でなかったかというとそうではありません。プラザ合意以降日本の製造業は急速に海外進出を始め、それに乗り切れなかった多くの中小企業は倒産してしまいました。

その意味で今や日本の大企業は円高に対しかなり抵抗力を付けてきたということは確かです。トヨタやソニーは現地生産を進めていますし、普及品の多くは東南アジアなど日本以外で生産されています。経済界があまり騒ぎ立てないのはそのためもあるでしょう。

しかし個人のレベルになるとそうのんびりしたことは言っていられません。80年代の円高では日本の製造業は圧倒的に強く、円高になっても価格に転嫁することはかなりできました。ところが現在は普及品は韓国と競争しなければいけませんし、レクサスのような高級車はドイツ車と争っています。ウォンとユーロが円に対し3割も安くなるような状況で価格転嫁は容易ではありません。

しかも80年代は終身雇用が日本的経営の最大の強みと持てはやされていた時代です。大企業は赤字になっても簡単に従業員を解雇することなどありませんでした。ところが現在は日本の製造業は悪名高い派遣労働者に労働力を依存しています。円高で少しでも企業収益が不利になると、日本から簡単に生産は海外に移転し、労働者は解雇されるだけです。

80年代の円高局面では企業が我慢して、そのうち輸入価格が低下するメリットを国民経済が受け、結果的に円高が生活水準の向上に役立ったのに対し、現在は企業はあっさり労働者、下請けを切り捨てて収益を守ろうとします。いくら輸入品が安くなっても給料がもらえなければ意味はありません。

企業が派遣労働者をあまりに簡単に使い捨てにし、労働需要の緩衝材として扱うので、製造業での派遣労働者の採用を制限しようとする改正派遣業法が提出されました(前国会で成立しなかった)。しかしこれで企業が派遣の代わりに正社員を沢山雇うようになることはあり得ず、海外移転がより進むだけでしょう。派遣業法の改正は労働需要をさらに減退させるでしょう。

日本の大企業のグローバル化が一層進むのは確実です。円高はそれを加速します。しかし、このまま対策もなく円高が進めば負担は企業でなく個人が被ることになります。就職氷河期が再び訪れ多くの若者は職業人としてのキャリアをコンビニのアルバイトのような形で始めさせられています。

コンビニの店員が悪いとは言いませんが、専門教育を受け高度の職業訓練を積まなくては高い所得を得ることはますます難しくなるでしょう。これでは将来の年金システムの維持も一層困難になってしまいます。

もちろん、円高も悪いことばかりではありません。低付加価値の普及品から高品質、高付加価値の製品に移行するために円高は効果的でしたし結果的に日本経済の高度化につながりました。しかし、若者が能力を伸ばすことが十分できない形で円高が進めば、国力の衰退に加速度が加わるでしょう。国民は円高批判は経済界の話だと言わず、もっと自分自身のこととして考えるべきです。 (補足: そもそもなぜ円高になるのか
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この記事に対するコメント
輸入障壁がなくなってほしい
RealWave様

こんばんは。
日本のこの20年、日用雑貨を中心に随分と物価が下がりました。円高や新興国の工業の発展のおかげです。流通経路の合理化もあります。
ただし先進国と比べると、住宅はまだまだ安普請なものが残っているように感じます。また食品については、近隣のアジア諸国に比べると日本はかなり高いようです。
もっと輸入が旺盛になって、円高を謳歌できるようになるといいと思います。日本国内の都市に隣接する農地や工場が別の用途に使われたりすれば、住環境も改善して生活しやすくなるでしょう。
それに国際収支がトントンにならないといつまでたっても円高傾向がやみません。
【2010/07/02 22:52】 URL | 佐藤健 #- [ 編集]


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