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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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社会福祉は最大の景気刺激策
介護2


医療と社会福祉は崩壊寸前

医療の崩壊が大きな社会問題になっています。妊婦がお産をする病院が見つからない。救急車は引き受けてのない患者を抱えて、何時間もうろつきまわらされる。地方では唯一の病院が閉鎖になり、入院しようと思うと何十キロも離れた病院に行くしかない。入院どころか、そもそも医者が近いところに全くいない。

年金も問題だらけです。「消えた年金問題」は社会保険庁の事務能力のなさが原因で、本質的な問題ではありませんが(そんな連中に年金を預けて、でたらめに運用されていたというのは重大で本質的な問題ですが)、国民年金は30%以上の未納者を抱え、納付している人たちも自分は年金を本当にもらえるか不信感で一杯です。

生活保護は対象者が厳しく審査され、病気があろうが、小さな子供がいようが、とにかく働き口を探せと矢の催促、挙句に生活保護を打ち切られて、餓死してしまう人まで出る始末です。昔が良かったというのは、過去の美化に過ぎないことが多いのですが、医療を含めた国民の福祉という点ではこの20年日本は急激に悪い方向に向かっています。こんな国を私たちは作ろうとしていたのでしょうか。

国民の福祉水準が低下してきている理由ははっきりしています。高齢者の人口が増大し、医療や年金の負担が増えるのに、それをささえる現役世代の拠出額は増えていないからです。小泉改革が現在のような状況を作り出したという見かたは当たっている部分もありますが、主たる原因とは言えません。増えない収入に合わせて無理矢理支出を抑えようとする限り、平均的には福祉の水準は下がらざるえません。

厚労省の役人は、医療や福祉というある意味「究極のサービス業」を経営するには、顧客満足度とかブランドイメージとかいった基本的なビジネスセンスと知識、そして何より気持ちに著しく欠けていますが、数合わせという点では、企画マンとしての仕事は一応こなしています。厚労省は福祉政策は決められても、そのための収入は決められません。金をかけずに現在の福祉水準が多少なりともましになることは、ほとんど不可能と言ってもよいのです。

要は日本人は金を払っていない

この際、使い放題のタクシー代も、つぶれてしまった年金施設も、やりたい放題の天下りもとりあえず、置いておきましょう(少なくとも別に考えましょう)。日本の役人の能率は世界的に見てそれほどひどいわけではありません。天下りのために無駄な施策を行うことは、相当な非効率を招いているのでしょうが(天下りを考える)、それでも福祉のための金の大半を食いつぶすほどではないでしょう。米が足りないのは、米蔵のネズミのせいではなく、米そのものが足りないのです。

国民所得に占める、税金や社会保障の負担率を見ると、日本は概ね40%、実際は赤字国債を出しているので、その分を考えても50%には達しません。これに対し、ドイツは60%、フランスは70%近くになります。高福祉で知られるスウェーデンは75%にもなります。アメリカの負担率は40%程度で日本と同等程度ですが、医療費については民間で莫大な額を負担させられています。

公的負担を行ったときの、国民が公的サービスを乱用するというモラルハザード(救急車をただのタクシー代わりに使うような輩の出現)や、配分の非効率性という危険はあるのですが、そのような問題は日本にだけ存在するわけではありません。人口構成の変化を考えれば、日本が20年前と同程度の福祉水準を回復するには、おそらくドイツやフランス程度あるいはそれ以上の負担を行う必要があるでしょう(もちろん結論を出すにはもっとちゃんとした計算をしなくてはいけません)。

現在の福祉水準の最大の問題は金がないことです。工夫でできるこことは限度があります。医療や介護のような人手のかかるサービス業は、電子機器製造のような画期的な生産性の向上は期待できません。福祉の問題は金の問題つまり、日本国民がもっと金を払うかどうかということに尽きます。

なぜ北欧諸国は高負担に耐えられるのか

北欧諸国は福祉水準が高いことで有名ですが、日本より30%も高い75%の負担率を甘受しなければならないと聞くとひるみます。社民党や共産党は福祉は北欧並み、負担は現在より低くと主張していますが、もし本当に可能なら、すぐにでも政権を任せるべきでしょう。もちろん、そんなことは不可能に決まっています。

高福祉は良いことでも社会が経済的に成り立たなくては話になりません。しかし、国民所得の75%も税金や社会保障費で取られるのに、なぜ北欧諸国は崩壊しないのでしょうか。北欧諸国なみでではなくても、フランスでも70%近い負担率なのです。

原理は簡単です。福祉の費用というのは、国民から金を取り上げて豪華な宮殿を建てたり、核兵器を開発するのとは違います。税金や社会保障のために徴収された金は、再び国民に戻されるのです。全体としてみれば、国民の所得水準の平準化は行われますが、窮乏化にはつながりません。防衛や公共投資などとは、同じ税金でも意味合いが違うのです。

公共投資はなぜ駄目なのか

日本では90年代のバブル崩壊の後、公共投資は一種の社会福祉政策として行われました。しかし、その効果はきわめて限定的です。公共投資で税金を還流してもらえるのは、一部の建設業者が中心です。建設業者は景気がよければ、派手な金遣いをするかもしれませんが、潤うのは飲み屋や、外車ディーラーです。

日本産業の高度化という点でも、地方の零細な建設業者は技術的蓄積ができるわけでもありません。製造業なら、中小企業でも世界に通用する製品を作る会社はいくらでもありますが、地方のほとんどの建設業者は海外どころか、県外への進出もできません。

世の中が不景気なとき穴を意味もなく掘ったり埋めたりするだけでも効果があると言いますが(また公共投資ですか)。経済学では乗数効果といいますが、公共投資の乗数効果は1.2程度と見積もられています。つまり、公共投資では公共投資直接かかわる人以外が受ける経済的効果は高々2割程度です。

どうせ金をばら撒くなら、確実に必要な人に届くようにしたほうは良いでしょう。しかも社会福祉の一番の受益者は相対的に貧しい人たちですから、届けた金はすぐに使ってくれます。その点3割程度は貯金にまわってしまう減税より効果は高いと言えます。

もちろん、この議論は福祉の財源をどうするかということを抜きにしては無意味です。福祉に使う金を増税でまかなえば、経済的効果は帳消しになります。しかし、忘れないでください。今の日本のように赤字国債で帳尻を合わせている状態では、公共投資も減税も将来の税金を当てにしていることでは、福祉と同じです。

景気刺激策として公共投資に政治家が熱心なのは、公共投資が経済的な乗数効果が高いからではなく、むしろ特定の業界しか潤さないからです。生活保護や医療をいくら充実させても、配分の仕組はきちんと決まっていて、どの道路を作るかを決めるような優先順位に個別に政治家が介入することはできません。献金をもらえるわけでも、選挙で票集めに努力してもらえるわけでもありません。福祉は公共投資より政治家にとってうまみが少ないのです。

モラルハザードをどう防ぐか

社会福祉のレベルを上げようとすると、福祉にただ乗りしようとするモラルハザードの問題が出てきます。失業手当が十分あるから働かない、年金や医療が充実しているから貯金しない。ただでもらった教科書を大切にしない。もっと悪いのは、障害者を偽って生活保護を不正に受給するような悪党が出てくることです。

フランスでは少子化対策で子供に対し一人当たり2万円近くが支給されますが、4人まで妻を持てる(フランスの法律では正式な妻は一人ですが)イスラム国からの移民が10数名の子供を抱えて悠々自適に暮らしているといった類の話が非難の的になることもあります。北欧の若者は潤沢な失業手当で働かずに世界中旅行するようなことがよくありました。

このような問題は社会福祉を充実させることの負の面であることは間違いありませんが、実際にどの程度予算が有効に使われているかを判断する場合はもっと慎重に実態を検証する必要があります。たとえば、給食費の未払いは全体の1%に過ぎません(給食費くらいただにしたら)。未払いは問題は問題ですが、給食という仕組を危機に陥れるようなものではありません。

まして、生活保護を暴力団員などが不正に受給するのは犯罪行為です。社会福祉によるモラルハザードではありません。国民のモラル向上にいくら努めても、犯罪的傾向を持つ人間、集団の根絶はできないのですから、チェックシステムを充実させることしか解決策はありません。社会福祉の充実に関係なく、今でも生活保護の不正受給は存在しているのです。だから、生活保護という仕組を全て廃止しろと言うのでしょうか。

若者(若者とは限りませんが)が失業手当に依存して働くなってしまうということはどうでしょうか。この問題も誇張されていると考えてよいでしょう。社会福祉とは関係なく、親もとで自立しないニートと呼ばれる存在が注目を浴びるようになったのは比較的最近ですが、ニートの増加は若者の就職環境が厳しくなったことが大きく関係しています。

失業手当が充実しても、働ける環境が整っていれば、一生働かないで国家に寄生して生きる人がそれほど多いとは考えにくいでしょう。失業手当が充実しているデンマークでは解雇を行うことは非常に簡単です。また、同一職種であれば正社員、非正社員の給与格差もありません。企業から見れば、社員を雇いやすい環境が整っているのです。正社員の権利が現在のように強いままだと、正社員になれないので働かない若者が増加する可能性はあります。このあたりは雇用制殿見直しが必要にはなってくるでしょう。

消費税の良いところ

日本の消費税は5%ですが、ヨーロッパ諸国は大体20%前後、フランスや北欧諸国では25%になっています。消費税は生活保護を受けていようと億万長者でも同じ率で負担させられます。金持ちや企業から税金をもっと取るようにしたほうが良いのではないでしょうか。

決定的な答えはありませんが、消費税が他の税制と比べて優れた点が多々あることは確かです。まず、脱税が困難です。小売業者が売上げを誤魔化してその分消費税を納めるのを回避しようとしたとしましょう。不正ですが、それほど難しいごまかしではありません。しかし、そのようなことをしても小売業者も仕入れは必要です。零細な小売業者でなく、大手の卸売業者やメーカーは消費税は確実に支払います。取る側から見ると、誤魔化される消費税は小売業者の粗利の部分に課される消費税だけです。

今の日本の税制では源泉課税をきっちり取られる給与所得者以外は、合法、非合法に数々の税金逃れが行われています。株式会社と名のつく法人は何十万もありますが、法人税を納めている会社ほんの一部です。上場企業でなければ、利益を表に出して税金を納めようという会社は、例外的です。

税金には山ほど種類がありますが、それと同じように山ほど特例措置があり、税金をまける制度があります。税理士の商売には良いでしょうが、特例の適用自体に怪しげなものが多い上に、特例が既得権化していて、不必要に税金を安くしていることも少なくありません。多くの場合既得権を得ているのは古い業界です。新しいい業界は特例措置を受けられることが少なく、結果的に産業の新陳代謝を遅らせます。

アメリカではレーガン政権時代、特例措置をほとんど廃止してしまい、その代わりに法人税を大幅に引き下げました。税の簡素化は税収を減らさずに、新しい産業の活性化につながりました。同じように消費税は細かい理屈抜きで、一律の税率を適用するので、制度が時代遅れになるようなことはありません。

消費税は。消費する限り泥棒やヤクザからも税金を取ることができます。金持ちも貧乏人も同じ税率という不公平感はあるのですが、それを補って余りあるものがあるでしょう。どうせ金持ちは腕のいい税理士を抱えて、色々税金逃れをするのです。貧しい人が消費税意を支払うことで受ける不利益は、それこそ社会福祉の充実で解決できるでしょう。

消費税を増額しても国の借金は返さない

消費税率を上げるとしても、注意しなければいけないことがあります。消費税の増額はあくまでの社会福祉による日本国民の間の所得移転、所得の平準化のためで、積みあがった国債の借金を返すためではありません。国には寿命も定年もありません、借金は増やさずに少しづつ返していけばよいのです。多少でも物価が上昇することを考えると、借金は増えさえしなければ50年もすれば、ずいぶん返したのと同じことになります。

もし、生真面目に消費税を国の借金の返済に回してしまうと、経済には大きなマイナス要因になります。借金が継続的に増えていくのは問題ですが、巨大な借金が積みあがっていても日本国民が健全に経済活動を行っていれば大して怖いものではありまぜん(借金なんて怖くない)。

財務省の役人たちはもともと「入るを図って、出を制する」的な思考方法が強い上に、歳出の自由度が減るのを権力を失うことと考えるので、財政の黒字化を「健全化」と言います。不健全な財政は赤字そのものではなく、アメリカがイラク戦争でほとんど一方的に資源を流出させてしまうようなことです。財政のバランスは毎年毎年ではなく、何年かの期間で考えるべきです。もちろん、景気が良くなって税収が増えて浮かれて使いまくるのはいけません。そのような時は借金を返して経済を冷やすべきときです(でもこれは難しいですよね。実際問題としては)

急がずゆっくりと

福祉の充実が行われようと行われまいと、いずれ消費税の増額は避けられないでしょう。しかし、福祉の充実や医療制度の整備が必要だとしても、時間をかけなければいけないということは強調していたほうがよいでしょう。医者が足りないからといって、医学部を増やしても医者が増えるのは10年近く先になります。介護を行うにも訓練は必要ですし、急ぎすぎるとグッドウィル(それにしても皮肉なネーミングですが)のような悪徳業者が入り込む可能性が高まります。きちんとしたインフラなしで、金だけで福祉の充実はできません。

かりに年平均1%づつ消費税を上げて20年経つと消費税率は25%になり現在の北欧諸国なみになります。これで十分かどうかはわかりませんが、福祉と医療にその金が回れば、今よりましな状態にはなるでしょう。年間1%の増額は消費者物価の上昇と比べても我慢できる範囲でしょう。スピードがゆっくりであれば、受け皿の福祉のインフラ整備もできるでしょう。

消費税が上がって、財政がそれなりのバランスをとりもどすまでは、国債で補うしか方法はありません。でもしょうがないじゃないですか、本当に日本国の国債が暴落するような心配がないとは言いませんが、救急車に載せられて何時間もうろつきまわされたり、子供を抱えた病弱な母親が生活保護も受けられないような状態よりはましなはずです(少なくとも私はそう思います)。健康で、生活が安定すれば消費も活発になるはずです。今の日本は金はあっても投資先がないのです。景気刺激策の主役を公共投資から社会福祉に交替させる時ではないでしょうか。

関連: 高福祉それとも低負担?
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日本にとって太平洋戦争とは何だったのだろうか (アンソロジー)
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終戦の日皇居で天皇に詫びる日本人

日本にとっての第2次世界大戦、太平洋戦争での日本の正当性については、侵略戦争だったのか、アメリカに無理矢理しかけられたものなのか、意見は分かれます。しかし、無駄で勝てる戦争ではなかったという点では比較的見方は一致していると思います。

しかし、以下のような話は、少し常識とは違うかもしれません。

1) 日本の被害は甚大だったが、ソ連やドイツ、あるいは第1次世界大戦のイギリスやフランスと比べても軽微だった
2) 日本の無条件降伏は陸軍兵力の主力が残存している段階で実行された珍しい例だ
3) 日本は情報戦や、戦略の弱さで負けたという考えは枝葉末節にこだわった愚論で、物量に負けたという単純な見方が正しい。間違いは物量が決定的になるような海戦主体の戦争を行ったことだ
4) 「自決の命令書がない」から、自決は個人の意思だというのは、自決という言葉の矛盾だ
5) ドイツには白洲次郎のような人間が無数にいた
6) 南京事件や慰安婦問題は中国、韓国の主張は数字的には間違っているが、でたらめと言い切りことは難しい

振り返ると、太平洋戦争に関連して、ずいぶん沢山の記事を書いてきました。、「ビジネス」を考える前に日本人そのものを考えるとき、私にとって太平洋戦争はやはり避けては通れない問題なのでしょう。

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