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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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靖国と普天間
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靖国神社を参拝する安倍元首相


8月15日の終戦記念日、民主党政権の閣僚は総理を含め一人も靖国神社へ参拝しませんでした。これに対し自民党は谷垣総裁を始め幹部の多くが参拝を行いました。その中で安部元首相は民主党内閣が全員参拝しなかったことに、記者のインタビューに答えて「信教の自由の点で問題があるのではないか」と発言しました。

この発言には違和感を覚える人も多いのではないでしょうか。当の安部氏は首相在任中は終戦記念日を含め(少なくとも知られている限りは)靖国神社の参拝はしなかったからです。

安部氏は「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」のメンバーであることからもわかるように、熱心な靖国参拝論者です。その安倍氏は首相就任時には「戦後レジームからの脱却」を掲げました。戦後レジームからの脱却が意味するのは、東京裁判史観とも呼ばれる太平洋戦争にいたる日本の責任に対する否定的な考え方です。

もともと靖国神社への首相の参拝が問題になったのは、1978年にA級戦犯14名を祭る、いわゆるA級戦犯合祀が行われたからです(実は合祀はされていないという主張もある:注記)。東京裁判自身を戦勝国が事後法で敗戦国を裁いた(A級戦犯の罪状の「平和に対する罪」は開戦時には存在していなかった)無効な物だと考えれば、A級戦犯は戦犯でも何でもなということになります。

戦後レジームからの脱却をうたうなら、靖国神社参拝ほど具体的な行動もないでしょう。しかし安倍氏は前任の小泉首相と異なり、靖国神社参拝を行わないこととします。首相の靖国神社参拝に抗議する中国、韓国に配慮したことは言うまでもありません。

安倍氏は思想的には靖国神社参拝を当然としながら、外交を意識して参拝を行わなかったことになります。これは「沖縄の心」を繰り返し言いながら、普天間基地の移設を辺野古周辺にすることを改めてアメリカと合意した鳩山元首相の行動と相似形です。外交のために主義主張を曲げてしまったのです。

靖国神社参拝中止は中韓との関係をこれ以上悪化させたくはないという安倍氏の配慮ですし、普天間基地の辺野古移設は鳩山氏のアメリカとの関係悪化を避けたという配慮です。相似形とは言うものの、靖国神社参拝が本来純然たる国内問題だということを考えると、安倍氏の妥協の方がより大きなものとも言えます。

ここでは靖国神社参拝が妥当かどうかを問いませんが、首相になって従来の主張を曲げ、同じように靖国神社参拝をしなかった民主党を平気で批判するという神経はいささか理解しがたいものがあります。安倍氏だけでなく谷垣自民党総裁も靖国神社参拝を行わなった民主党閣僚を非難しています。

谷垣氏や安倍氏の発言を聞けば、自民党政権になれば首相は靖国神社参拝を当然行うように思えますが、恐らくそのようなことはないでしょう。もし、そうなら沖縄の基地負担軽減を言い続けて結局何もできなかった民主党と同じことになります。

結論から言えば、靖国神社参拝にしろ、沖縄の基地負担軽減にしろ、実行するには大きな外交的コストを払うか(小泉首相の靖国神社参拝で中国との関係は非常に冷たいものになりました)、よほどの手腕を発揮するしかありません。安倍氏も鳩山氏も「そんなことはできません」が答えだったわけです。

もともと二大政党政治は野党が政権を獲得した時を想定して、反対のための反対ではなく責任のある政策を提言することと、与党が政権交代されないために、より緊張感のある政治をおこなうことを目指したもののはずです。しかし靖国神社参拝での安倍氏の発言を聞く限り、野党は実現可能性など関係なく与党を批判すれば良いと思っているようです。

中国の国力増大が進む中、中国との対立のコストはますます高くなっていくと考えられます。アメリカと対立した政権が経済運営、たとえば円高是正などでアメリカの協力を得にくくなるように、中国との対立は経済、軍事両面で今以上に大きな負担を日本に強いることになるでしょう。

日中関係と戦死者への敬意とどちらを取るか。沖縄の心と日米関係のどちらを取るか。簡単とはとても言えない問題ですが、野党のお気楽さで解決できる話でないことだけは確かです。

注記
ジャーナリストの上杉隆氏は合祀が行われたこと自体が疑問としています。上杉氏は、靖国神社が厚生省が提出した合祀すべき戦死者を記した祭神名票に基づいて合祀を行っていると主張しているにもかかわらず、厚生省が1971年に祭神名票の提出を止め、1956年に遡って靖国神社の「照会」に基づいて提出された祭神名票を無効にしていると指摘しています。

A級戦犯の含まれる祭神名票は1966年に靖国神社に厚生省から送付されていますが、上杉氏の主張ではこの祭神名票は厚生省により無効にされているはずで、靖国神社がA級戦犯を含め合祀の根拠を祭神名票としていることと矛盾しているというのです。1966年に提出された厚生省の祭神名票に記載されたA級戦犯合祀はいったん宮司預かりとなっていたものが、1978年に新たに宮司に就任した松平宮司により合祀されます。

上杉氏の主張は厚生省が無効とした祭神名票に基づき宮司の一存で合祀したのだから合祀自体が無効とするものですが、祭神名票は厚生省が靖国神社の照会により提出されたもので、合祀自身は靖国神社が行うと考えれば合祀が無効となるかは議論になるところでしょう。また、厚生省も祭神名票を無効としたというより、各都道府県に戦死者名簿の提出協力を要請した1956年の通知を取り消したという意味で、提出された祭神名票の中身を無効化したとものではないとも考えられます。
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