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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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「沖縄をタックスヘイブンに」は奇策?それとも正論?
okinawa1.jpg

経済小説家の橘玲(たちばなあきら)氏が、「沖縄県民の平均所得を劇的に増大させ、失業率を大幅に下げ、みんなが豊かになる」方法として沖縄をタックスヘイブンにすることを提案しています(「沖縄をタックスヘイヴンに」、「沖縄をタックスヘイヴンに(2)」)

タックスヘイブン(tax haven)は租税回避地とも訳されますが、一定の税金が非常に安かったり、まったくなかったりする地域です。Havenは安息所、回避地という意味の英語で、天国:heavenではありません。

税金と名がつけば何を安くしてもタックスヘイブンとも言えますが、よく話題になるケイマン諸島などのタックスヘイブンは金融サービスに関する税金をほとんど課税しないことと、企業が名目上だけで実質的な活動をすることを要求しないといった特徴があります。また、情報交換を他国とあまり行わず、企業活動の透明性がないことも典型的な特徴です。

橘氏の提案は
1)米軍基地を受け入れるかわりに、沖縄は日本国に対して自治権を要求する。
2)日本国の自治領として、タックスヘイヴン(オフショア金融センター)化を実現する。

の2点です。さらにジャージー島などを参照に、
1.金融商品(預貯金・株式・債券・ファンド・デリバティブなど)から得るインカムゲイン(利子・配当)とキャピタルゲイン(譲渡益)は非課税。
2.相続税・贈与税は廃止。
3.(沖縄の)域外で得た所得には課税しない。
4.日本居住者は域内の金融機関を利用できない。

を制度的な枠組みとして述べています。

橘氏は「沖縄が東アジアのオフショア金融センターに成長するとわかれば、世界じゅうから金融機関が進出してくる」し、「アジアの富裕層が(相続税・贈与税のない)沖縄に移住してくるから、地価は高騰するにちがいない。不動産業や建設業はもちろん、富裕層を対象とする観光業や飲食業などのサービス産業も活況を呈するだろう」と予測しています。

このようなことが実現されれば、高層ビルなど何もない辺鄙なジャージー島の一人当たりGDPが56,000ドルと日本の39,000ドルを大きく上回るように、都道府県別所得で最下位グループの沖縄が一気に世界有数の金持ち国になれるかもしれないのです。

米軍基地と日本政府の公共投資という名の援助に大きく依存した沖縄が、アジアさらに世界の金融センターになる。しかも大してカネは必要ではなさそうです。この提案はあまりに魅力的に響くので、「何故いますぐ実行に移さないのか」という気にさえなってしまいます。

それでは沖縄をタックスヘイブンにすることは本当に可能なのでしょうか。いくつか疑問点を提示してみましょう。ただ私は金融取引にも法律にも精通しているわけではないので、あくまでも「素朴な疑問」です。

(1) 自治権の付与は簡単にできるのか
違う税体系を持つということは徴税だけでなく、法体系全体が違うということでしょうし、年金などの福祉も別になりそうです。司法、外交、防衛が違えば外国との関係も違ってきます。

実際、ヨーロッパでタックスヘイブンと看做されているモナコ、リヒテンシュタインは小さいといっても、元々独立国です。外交や通貨発行などの多くの国家主権の行使は、モナコはフランスに、リヒテンシュタインはスイスに委嘱していますが、委嘱するということを決めているのはモナコ、リヒテンシュタイン自身です。最初は全ての国家主権を有するところから出発していることには変わりません。

年金や福祉も、どうせ金持ちになれば日本に頼らなくても構わない、ということになるかもしれませんが、一度日本の福祉システムから離脱すると「いいとこ取り」は他の日本国民の非難を集めそうですから、独立独歩を覚悟しなければなさそうです。

香港はタックスヘイブンと考えられますが、元々もは独立した法体系と自治権をもっており、今でも一国二制度の下で、他の中国人は入国にパスポートが必要です。沖縄にそこまでの自治を与えることが技術的にも、政治的にもどこまで可能かは十分に検討が必要です。
(2) 沖縄は大きすぎないか
モナコやケイマン諸島のように元からの独立国でないはない英領バージン諸島は、本国のイギリスから遠く離れていて、人口も2万にと少しです。ここまで小さな地域であれば、本国との人的往来も少なく、様々な例外措置を設けても、本国に大きな影響を与えることはあまりありません。

一方沖縄は人口140万人近く。独立国として十分と言っていいくらいの規模があります。これほどの数の人々に自治権を与えるのに伴う様々な特別な取り扱いをするのは大変そうです。

しかも、沖縄は島とは言っても、バージン諸島とイギリスほど離れているわけではありません。歴史的には琉球王国、米軍の施政権下という時代はあったものの、日本の一部として深く本土と結びついています。無数の人間関係、商取引をある時点で別の国として切り離すというのは、とても簡単には思えません。
(3) 他国の反対はないのか
タックスヘイブンというのは先進諸国の天敵なようなものです。モナコのような極小の独立国でなく、日本のような経済大国が自国の一部を切り離してタックスヘイブンを作ることことに他国の反発はないのでしょうか。

実際、OECD諸国は情報公開が不透明なことや租税機会を失うことなどからタックスヘイブンに厳しい目を向けてきています。タックスヘイブン対抗税制と呼ばれる税制は、タックス・ヘイヴンに留保された利益について、居住者又は親会社に配当がされたものと看做すなど、タックヘイブンでの租税回避を防ごうとしています。

他国以前に日本国内の反発はないでしょうか。沖縄をタックスヘイブンにすることで、香港、上海、シンガポールに奪われたアジアの金融センターとして地位を取り戻し、結果的に大幅な税収増を実現できるといっても、財務省は「とらぬ狸の皮算用」みたいな話には耳を傾けず、税収減のリスクばかりに目をやりがちです。沖縄のタックスヘイブン化には内外の反対を押し切る政治力がなければ実現はとても困難でしょう。

***
否定的なことばかり書いてきましたが、手はないわけでもないでしょう。沖縄が大きすぎると言うなら、石垣島だけをタックスヘイブンにすることも考えられます。自治権を与える地域を狭くすれば、障害も小さくなるので、実現可能性も高くなります。

しかし、グローバル化の進展でタックスヘイブンが増えていくと、消費税を除けば税金を取るのはますます難しくなっていきそうです。沖縄をタックスヘイブンにするくらいなら、どうせ日本も島国なのですから、いっそ日本全部をタックスヘイブンにして経済活動を活発したらどうでしょう。

これはそれほど奇想天外とも言えません。シンガポールや香港はモナコやケイマン諸島と比べて桁外れの大国で、人口はスイスや北欧諸国に匹敵します。日本も中国にGDP世界2位の地位を奪われたことを嘆くより、大中堅国家を目指す、そのために全ての商業活動に大幅な自由を与える。今の日本を元気づけるのはこれくらい大胆な発想かもし知れません。
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ビッグマック指数
Mac.jpg

ビッグマック指数とは、世界中で同じ品質のものが提供されるマクドナルドのビッグマックの価格を指数として、国ごとの購買力の水準を計るものです。イギリスの経済紙「エコノミスト」が考案しました。

ビッグマック指数は毎日更新されていますが昨日(2010年11月8日)現在の主要国ビッグマック指数は以下の通りです。
BigMacIndex.jpg
表のビッグマック指数は1ドル=81円で計算しています。日米のビッグマック指数が一致するのは1ドル=86円ですが、若干円高気味とは言っても、現在の円の水準はビッグマック指数からは概ね妥当な水準と考えられます。

反面中国の元は随分割安感があります。ビッグマック指数がアメリカと一致するためにはほとんど2倍に対ドル相場で元が上昇する必要があります。アメリカが中国が為替操作で元安を作り出していると批判するのはもっともです。

国際市場で激しく日本と競争している韓国も、20%程度は割安のようです。日本はウォンが30%程度切りあがってくれないと、ビッグマック指数からは不利だということになります。

逆に高級品市場で日本と競争することの多いドイツを含むヨーロッパ地域は。ユーロが大幅に安くなったにもかかわらず、依然割高です。ただビッグマック指数にはヨーロッパ諸国では当たり前の20%前後の消費税も含まれますから、現在の為替水準はほぼビッグマック指数と合致していると考えた方が良いかもしれません。

世界最高水準の一人当たりGDPを誇るスェーデンはビッグマック指数でも突出しています。これはスェーデンに限らずノルウェーなど他の北欧諸国も同様です。名目上の平均所得は高くても、税金や物価の高い北欧諸国の人々がそれほど裕福なわけではないということも判ります。

資源国の割高感も目立ちます。オーストラリアは358円のと日本より割高ですし、表にはありませんがカナダも330円です。両国ともアメリカと比べて物価が安いとされていたのですが、いつの間にかアメリカより物価の高い国になってしまいました

総じてビックマック指数はビッグマックというたった1品の価格だけを見ているにもかかわらずかなり実際の購買力に近く、ビックマック指数で通貨価値を判断するのは少なくとも見当外れではなさそうです。特に旅行者がホテルに宿泊したりレストランで食事を取ったりするときは、物価水準を判断する簡便な方法として十分使えると思われます。

しかし、ビッグマックの価格で各国の実質購買力を計るビッグマック指数は、国つまり通貨が同じならビッグマックの価格も同じだということが前提です。ところが実際は、日本では地域ごとにビッグマックの値段は違います。

ビッグマック1個320円の地域は東京など大都市で、地方によっては280円という価格が設定されています。この価格を基にすると1ドルが75円という「超円高」がビッグマック指数での購買力から見た円の実力ということになります。

ただし、これは地方が円高に東京より強いということを意味してはいないでしょう。ビッグマック指数でも通貨の割安感が目立つのは中国を始め開発途上国ですし、割高に見えるのは日本やヨーロッパ諸国です。ビッグマック指数の割安感は生産性の低さの表れとも考えられます。

生産性の目安として重要な労働対価、つまり給与を比べてみると地方は東京よりかなり低くなっています。マクドナルドのアルバイトの時給をマクドナルドのサイトでみると地域により時給に最大6割近い差があります。
Macアルバイト

さらに注意しなければいけないのは、最低賃金とマクドナルドの時給の差です。東京では最低賃金をマクドナルドの時給が大きく上回っていて、青山店などは最低賃金の2割以上高い時給が提示されているのに対し、沖縄や札幌では最低賃金とマクドナルドのアルバイト時給が同一です。

最低賃金は各県ごとに同じですが、マクドナルドの店舗は各県最大都市の繁華街のものをサンプリングしています。これは同じ県でも他の地域では時給ベースはさらに低いはずということになります。つまり、最低賃金は多くの地方では本来の雇用機会と比べて高く設定され過ぎているのです。

最低賃金が本来の雇用機会より高く設定されているということは、その地域では「円高」であることと同じことです。もしある地域の平均的な生産性から支払える時給が500円なのに、最低賃金が700円なら、その地域は4割の「実力以上の円高」になっていることになります。

円高が日本経済を直撃すると言いますが、地方では実力以上に「円高」にさらされていて苦しいことが分かります。これは日本国内が円という単一通貨を使用している以上仕方のないことなのですが、円高は東京より地方により深刻な打撃をもたらしているようです。