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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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脱原発のコスト
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福島第一原発の事故は依然として収束からは遠い状況です。大量の放射性物質が広範囲に広がる、あるいはその危険があって首都圏を含めた数百万人ないしそれ以上が行き場所もない退避を強いられる、といった大惨事が起きることはもうないでしょうが、放射能汚染水の海への投棄など、環境被害は収まっていません。避難している人々が自宅に何時かえることができるかの見通しも立っていません。

このような状況が長引けば長引くほど、原発の危険性に対する認識は日本国民中に深く刻み込まれていくでしょう。今回の事故でも一般人には死者や危険なレベルの放射能被爆者は一人も出ていませんが、もはやそれは原発の安全性の証明とは看做しては貰えないでしょう。

今後日本で原発の立地は困難というよりほぼ不可能になったと考えられます。既設の原発でも地元の退去要求は強まってくのは確実ですし、柏崎刈羽原発のように一度事故で停止すると、容易には地元の再稼働の許可をもらえなくなることも間違いありません。

福島第一原発事故の以前は国家戦略の上で原発は地球温暖化防止ための二酸化炭素排出削減の切り札と考えられていました。現在30%程度に達している電力での原発への依存度を2030年には50%高めるという計画は、今では全く実現不可能になりました。

このような状況では原発推進をエネルギー政策の軸として位置付けるのは、それこそ現実無視ということになるでしょう。従来から反原発派は「代替案のない非現実的な人々」と原発推進派、擁護派は批判してきたのですが、原発の拡充どころか維持を考える事さえ「非現実的」になってしまったのです。

それでは原発を廃止することはどのくらいの不利益をもたらすのでしょうか。まず、電力を作り出すためのコストが大幅に増大することです。今比較的短い期間の間に原発の停止を行うすると現実的な代替手段は火力発電しかありません。

火力発電の燃料は、石油、天然ガス、石炭がありますが、1kWh(1キロワットの発電を1時間行って得られる電力。電力をエネルギーとして見ると瞬間風速ではなく一定時間に発電する電力量を測ることは必要となる)の燃料費は2009年度で5-6円となっています。これに対し原発の燃料費は1円以下、便宜的にはただと考えても差し支えありません。

日本の発電総量は年間約100万ギガワットで、このうち3割が原子力です。この分が全て火力なると、年間コストは2兆円程度増加します。原油の価格は安定的に推移した20世紀末と比べると産油国の不安定な政治情勢や何より新興国のエネルギー需要の増大のため上昇を続けています。最近の価格上昇には投機的な側面もありますが、根本に需要の増大と原油生産の頭打ちがある以上、今後も上昇は避けられないでしょう。

原油価格の上昇は石炭や天然ガスの価格上昇も連動して引き起こします。原発を全廃することによる電力の燃料費は2兆円の2倍の4兆円程度にはすぐに達すると予測すべきです。原発推進の動きが世界的に原発廃止へと向かえばこの傾向はさらに加速します。4兆円が6兆円、8兆円となることも十分考えられます。もちろん火力発電の能力を拡大させるための経費は別途かかります。

消費税の1%の税収は概ね2兆円です。日本は化石燃料はほとんど全て輸入にたよっていますから、8兆円も電力用の燃料費が増えれば消費税を4%ほども追加したのと同じことになります。しかも、財政赤字が減るわけでも、社会福祉が充実するわけでもありません。

日本はウランを準国産エネルギーとして位置付けていました。ウランの産出国は産油国を違って政情が安定している国が多いですし、そもそもコストに占める燃料費が小さいので、ウラン価格の値動きは発電コストを大きく変えるようなことはありません。

しかも、使用済みウランは再処理により再び燃料として使うことはできます。手品のような話なのですが、ウラン(U235)が原子炉で核分裂を起こした時、分裂しないウラン(U238)がプルトニウムに変換され、そのプルトニウムを燃料をして使うことができるからです。

使用ずみ核燃料をプルトニウムを含んだ核燃料に作り替えるのは再処理と呼ばれます。日本では青森県の六ヶ所村に再処理工場を建設し、すでに2兆円が投下されていますが、この投資の回収は今後困難でしょう。

同じように炉の中でU238から変換されるプルトニウムを燃やすことで次から次えへとU238をプルトニウムに変えていき、半永久的に燃料を自前で作りつける高速増殖炉は文字通り「夢」のままで終わってしまいそうです。日本は高速増殖炉の実験炉「もんじゅ」をすでに建設済みですが、2兆円以上を費やしていまだに稼働していません。こちらの方も先行きは全く見通せないことになりました。

原発を止めてしまえば、資源輸入国の日本の立場がより弱くなることは確実です。エネルギーなどカネを出していくらでも買えばよいと、言ってきましたが、「カネを出す」の部分が、非常に高くつくのは喜ばしいことではありません。電気料金が今以上に国際情勢や原油相場に振り回されるのは確実です。

化石燃料は二酸化炭素を不可避的に排出します。日本は1990年比25%の温暖化ガス削減を2020年までに行うと、鳩山首相がいわば国際公約しているのですが、実現は不可能どころか大幅な増加という結果に終わる可能性の方が高くなってしまいました。

ここまで原発廃止に伴うマイナス面ばかり書いてきましたが、原発廃止が経済的に損なばかりではありません。原発は燃料費は殆どただと言っていいくらい安いのですが、莫大な建設費がかかります。これには施設そのものの費用だけではなく、地元への対策費も含まれます。

老朽化した原発は取り壊されることになりますが、強い放射能を帯びているためこれもかなり費用がかかります。廃炉は1兆円かかるという人もいますが、それは出鱈目としても建設費の1-2割というのが妥当な推定と思われます。今回の福島第一原発のような無秩序な破壊状態になればもっとかかるでしょう。

放射性廃棄物の処理もあります。これも反対が強いのですが、現在ほぼ実用化されている技術としては3百メートル程度の地下に放射性廃棄物をガラスで固めて埋める方法があります。放射性廃棄物の処理は運営費の数%と言われています。

ただ、放射性廃棄物の処理や、廃炉の費用は今原発をやめたからといってなくなるわけではありません。むしろ原発廃止を早く進めようとしていると、資産勘定になっている原発施設や貯め込んだウラン、プルトニウムなどの燃料を帳簿から除却する必要があります(燃料は外国に叩き売る手はあるかもしれません)。下手をすると電力会社は軒並み債務超過に陥ってしまうかもしれません。

また、原発関連の費用は基本的に日本国内に落ちます。雇用の創造はもちろんですし、高度な技術を蓄積することにより原発技術を輸出することもできます。ただただ産油国の懐を潤す燃料輸入費とは性質が違います。GDPの統計上は輸入費用はGDPのマイナス勘定なのに対し、原発建設費はGDPのプラス勘定になります。

ここでは原発の代替として火力発電を考えました。自然エネルギー、再生可能エネルギーなら少なくとも燃料輸入の必要はないので、負担は随分軽くなるかもしれません。おまけに(というより従来はこちらが主でしたが)二酸化炭素を排出は桁違いに小さくなります。

しかし、再生可能エネルギーが原発代替のレベルに達するのには(そんな日が来るとしても)何十年もかかるとだけ指摘しておきます。再生可能エネルギーは長期的な解決策にはなるかもしれませんが、短期間には原発の代替にはなりえません。特に日本は風力、太陽光のような設置面積を非常に大きく必要とする技術にはあまり適していません。

本来であれば、政府は原発廃止の利害得失をきちんと示して国民の判断を仰ぐべきでしょう。しかし、過去の原発論議は「原発は絶対安全なのか」という反原発派の抵抗に「絶対安全です」という有体に言えば嘘を政府、電力側が地元民に繰り返してきました。

まさかと思った「嘘」が覆された今、政府や電力会社の言う利害得失を素直に国民が信じてくれるものではないでしょう、総論としては納得しても地元民として各論ではとても受け入れられるとは思いません。日本での原発の時代は終わりました。
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