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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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チキンゲームはもう終わり? PAC3の配備
pac3.jpg
PAC3の配備が始まった

3月30日、日本政府は弾道ミサイル防衛システム(BMD)の一環として、地対空誘導弾パトリオット・ミサイル3(PAC3)を自衛隊入間基地に配備したことを発表しました。PAC3はイージス艦に搭載される、SM3、警戒管制レーダー(FPS-5)と連携して日本を攻撃する弾道ミサイルを迎撃することになります。

BMDは2011年に当面の整備を終える予定になっていますが、配備が急がれたのはもちろん北朝鮮がノドン、テポドンという弾道ミサイルと原爆の実験を行い、核兵器およびその運搬手段の開発を行っていることに対応するものです。

BMDがきちんと働いてくれれば、北朝鮮が日本に核ミサイルを打ち込むという、日本がおよそ考えうる最悪の事態を回避できることになります。逆に言えば北朝鮮が国際社会を敵に回して開発し、チキンゲームに他国を引きずり込んだ兵器体系が実質的に無力化します。日本にとってはチキンゲームは終わることになります(チキンゲームは終わらない参照)。

北朝鮮の切り札が無力化されるというのは、見方を変えると北朝鮮が核実験をしたのと同じくらい大きな事件だと思うのですが、PAC3配備自身は予定されていたこととはいえ、報道は無視とは言わないまでも随分と控えめなものでした。

しかし、もしこれで北朝鮮の核兵器が日本にとって脅威でなくなれば、日本は北朝鮮に対し交渉力で絶大な優位に立つことになります。また韓国が日本が拉致問題を盾に北朝鮮への援助をしぶることに対し「朝鮮半島の非核化という果実を得て、何もしないということはありえない」と非難する理屈にも対抗できます。北朝鮮の核は今や脅威ではないからです。

なぜ、そこまではしゃぎまわらないか不思議な気もするのですが、一つはBMDなるものをとことん信じてよいかという健全な疑問があるからかもしれません。実際第一次湾岸戦争で有効性を喧伝されたPAC2はイラクのスカッドミサイルに対し40-70%程度の撃墜率だったと言われています(撃墜できても無力化はできず実効性はそれを大幅に下回るという説もある)。

ただ今回配備されるPAC3は対弾道ミサイル用に開発されてはいない(航空機用と言われている)PAC2と異なり、弾道ミサイル撃墜を目的としており、性能は大きく向上しています。また、BMDはイージス艦のSM3とPAC3の二段構えで撃墜率を高めています。

MD.jpg

ミサイル防衛構想の概略(クリックして拡大)

軍事や兵器は電力ネットワークの制御システムやデリバティブ取引などと比べても専門的で一般には評価が難しいものです。いや専門家であっても、日本の軍事能力のレベルについて軍事評論家の江畑謙介が「やってみなければわからない」と言うように有効性の判断は難しいのです。個々の戦闘機や戦車の必要性など、総額で兆単位の投資になるにもかかわらず、きちんとした説明も滅多にありません。かりにあったとしても、軍事オタク以外には興味も意味もないものになりがちです。兵器体系はあまりにも評価軸が多く、絶対的な効果の数値化は困難なものがほとんどです。

この中でBMDのKPI(Key Performance Indicator)は極めてシンプルで、弾道ミサイルの撃墜率に尽きます。もちろん、運用費を含むコストは重要ですが、そもそも原爆を一発大都市で爆発されたら被害は東海大地震と比べても甚大で、払える範囲であれば費用対効果はあまり考えるようなものではないはずです。

このほか、有効に機能させるためには迅速な指揮命令系統が確立されているかとか、偽装ミサイルに対し有効な識別が行えるかとかなど心配、考慮事項は色々あるでしょうが、全ては撃墜率という単純な数字に集約されます。

ここまで単純であれば、性能の評価についてそれほど意見の違いはなさそうですが、そうでもないようです。一応発表されている数値としてはPAC3は実験で12発のミサイルのうち10発、SM3は8発中7発というものがあり、国会答弁でも引用されているのですが、それらの数字をそのまま単純に計算すれば、約98%の撃墜率が達成できます。

この数字をそのまま達成できるかどうかは問題ですが、この種の兵器はコンピューターのソフトウェアを含め改良が日々進むこと、北朝鮮の能力がそれほど高くないこと(核兵器をミサイルで本当に日本まで打ち込めるレベルに達しているかすら疑問)などを考えると、「枕を高くして寝られる」とまではいかなくても「座して死を待つ」というほどひどい状態でもないでしょう。

BMDは核兵器を無力化できるという意味では、核兵器と同等と言ってもよいほど強力な兵器です。アメリカと旧ソ連は1972年ABM(Anti Ballistic Missile)条約を締結し双方ともABMの基地を一箇所に制限しました。このABMは大陸間弾道弾(ICBM)に対抗する点で違いはあるものの、基本的な目的はBMDと同一です。米ソはABMにより核ミサイルの均衡が崩れ、軍拡競争からかえって核戦争の危険が高まる可能性を恐れたのです。

アメリカは2002年ABM条約から脱退し、本土防衛のためのNMD(National Missile Defense)の整備をしようとしていますが、ICBMはPAC3では防御できず、より高高度での撃墜が可能なTHAAD(Terminal High Altitude Area Defense)システムの開発を行っています。

気がつけば日本は世界でほとんど唯一(イスラエルはどうかわかりませんが)核ミサイルに対応できる防衛システムを持つ国になろうとしています。これは中国にとっては脅威なのですが、中国は日本のBMDに対し表立って強い非難はしていません。中国も北朝鮮の滅茶苦茶ぶりを前にして、日本に文句をつけにくい状況なのでしょう。

ここでまたしても日本は北朝鮮をダシにして、極めて強力な軍備拡張を行ったことになりました。BMDのようなコンピューター技術、レーダー技術に依存したハイテク兵器は中国も容易に追随できないでしょうから、日本は実質的に中国の軍事力を大幅に減殺したことになります。核ミサイルが本当に無力化できれば中国の軍事力が日本に実質的な脅威になることはほとんどありえません。

中国は核ミサイルだけでなく、潜水艦や航空機のような他の核兵器の運搬手段を持っていますが、対潜水艦攻撃能力と航空機迎撃能力は自衛隊が唯一世界レベルに達している分野と言われ、中国も少なくても現時点では日本に対する攻撃能力は乏しいと思われます。いつの間にか、中国の軍事力は日本に対し「使えねぇー」ものになりつつあるのです。

軍事力のバランスが崩れるのは平和にとって必ずしもプラスではないのですが、日本のことだけを考えれば北朝鮮どころか中国も深刻な脅威でなくなるのは悪い話ではないでしょう。六カ国協議で孤立化まで心配されている日本ですが、国内的に大した議論もなしにちゃっかり極東の軍事バランスを自国に有利に傾けているのは、チキンゲームは終わらないで指摘したように日本が「外交的天才」だからかもしれません。

PAC3の配備について反対らしい反対をしたのは沖縄の人だけだったようです。昨年10月には沖縄で反対勢力による県民大会があり、PAC3の沖縄配備は「沖縄の基地負担を増加させる」などとして1,200人(主催者側発表)が集まりました。

PAC3が沖縄に配備されるのは、アメリカ軍基地が密集しているからですし、PAC3という最新兵器が配備されれば基地負担がその分増えるのは事実でしょう。しかし、PAC3はアメリカ軍基地を守りますが、同時に沖縄の市民も守ります。「アメリカ軍基地を撤去しろ、しないならせめてPAC3を配備しろ」というのはわかりますが、配備に反対するのはいかなる故なのでしょうか。

もちろんPAC3が軍事バランスを崩し、それにより平和が危険にさらされることは十分ありうるのですが、沖縄の市民を守るということに関してはPAC3はないよりあったほうがずっと良いはずです。

これでは観念的な平和のほうが沖縄市民の生命より大切だと言っているのに等しいという気がします。第二次世界大戦のときの沖縄戦では沢山の市民が「捕虜になってはいけない」というばかげた観念論で自決を強いられました。市民の生命より自分の観念を優先するという点で、PAC3の反対運動は実質的にこれと変わりがないのではないでしょうか。不思議です。
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