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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

ご連絡はrealwaveconsulting@yahoo.co.jpまで

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機械音痴のコンピューター屋
IBMimage009.jpg
メインフレーム時代のコンピュータールーム

今から30年以上前のことになります。空調の効いたビルのフロア一杯に林のように立ち並んだコンピューターの中を、私はたった一人でおろおろと歩き回っていました。土曜日の夜遅くから日曜の明け方にかけて、やっと確保した超大型メインフレームコンピューターを使って、顧客のテスト用にOSのセットアップをしなければいけなかったのです。

大学で電子工学を修めたことになってはいましたが、入社して日もない私にはあまりにも何もかもがわからないことだらけでした。「マニュアルをちゃんと読めばいいんだ」と先輩は言いましたが、英文のマニュアルは電話帳ほどの厚さのものが何百冊もあるような代物で、全貌を理解することなど全く不可能なことに思えました。

単純にコンピューターを起動させるだけでも、わけのわからないないコマンドを山ほど入力させる必要がありました。システムのセットアップのための入力情報は、葉書を細長くしたような数百枚のパンチカードと呼ばれる紙の束に書かれていて、それをコンピューターに読み込ませるところから作業は始まりました。

パンチカードにはシステムにどのような機器を接続させるか、どのような機能を取り込むかが定義されているのですが、一枚一枚がどのような意味を持っているか私には見当もつかないものばかりでした。

そんな私でもわかっていることがありました。コンピューターの使用料が1時間あたり30万円以上になるということ、システムのセットアップができあがらないと、顧客システムのテストが大きく遅れるということです。誰もいないコンピュータールームの中で、コンピューターの冷却用ファンの音が、闇に潜んだ猛獣のうなり声のように低く聞こえていました・・・・。

それから30数年後。

「ええ、こちらの機種はVistaではサポートされていないので、機種変更が必要です」店員は私の持ってきたPHSのカードを見て言いました。借りていたノートブックPCを返さなければならなくなって、新しいものを買うことにしたのですが、店頭で標準で搭載されているノートブックPCのOSは、いっせいにWindows XPからVistaに切り替えられていたのです。

軽いのが気に入って買うことにしたパナソニックのLet’s Noteは標準の512MBではVistaを快適に動かすことはできず、最大の1.5GBに拡張するのに4万円以上も支払わなければなりませんでした。Let’s Noteは小さいのはよいのですが、拡張メモリーは専用品が必要で普通の倍以上も値段がするのです。それでも、一からWindows XPを入れなおす気がしなかった私は仕方なしに標準搭載のVistaをそのまま使おうと思ったのです。

結局30万円ほども支払って、Let’s Noteと拡張メモリー、Office2007それにウィルス対策用のソフトも購入して家に戻った私は、NTTのADSL接続用のソフトが揃っていないことに気がつきました。私の住んでいるマンションはまだNTTの光ファイバーが使えないのです。

ところがNTTに電話すると「ADSLはVistaにはつながりません」という返事。目の前が暗くなるような感じを覚えながら、それでもLet’s Noteは外出用に使うのだからと、割り切ってあきらめることにしました。

自宅の外でもPHSではなくEMOBILEのカードを使うと高速で利用できるのですが、使用可能なエリアがあまりに限定されています。PHSとEMOBILEの二つのカードを使うのは、やはりばかばかしく、結局低速のPHSだけがLet’s Noteとインターネットをつなぐ細いクモの糸と言うことになりました。

私は工学部に入ったのは間違いとしかいいようのないようない機械音痴です。いまだに、家にはフラットテレビどころかDVDすらありません。本当はテレビくらいは大画面で見たいのですが、デジタルだフルハイビジョンだといった機能がマンションに引かれているケーブルでどこまで利用できるかわからず決心がつきかねているのです(金の問題ももちろんありますが)。

多少自分の名誉のために言っておきますが、入社したメインフレームのメーカーでその後、メインフレームに関してはずいぶん詳しくなることができました。何もわからなかったシステム操作のコマンドやセットアップのためのパラメーターの数々も、人(専門家です)に教えることができるほどになりました。しかし、メインフレームの知識は最適なPCの仕様を決めたり、セットアップを間違わずに行うためには、ほとんど全くといっていいほど役に立ちません。

こんな悩みは私のまわりには沢山いるコンピューター好きの人たちには、あきれるしかないようなものでしょう。しかしそのような人の大部分も別に原理がきちんとわかって、PCと付き合っているわけではありません。

PCに詳しい人たちがPC導入の手順を間違えないのは東京の地下鉄網に詳しくて、どこに行くにも最適な乗換駅をたちどころに言うことができるのと同じです。別の街、たとえばニューヨークに行ったら、東京の地下鉄網の知識が役立たないように、コンピューターの体系が変わってしまえば、また最初から学びなおす必要はあるはずです。ちょうどメインフレームの知識が役立たなくなった私のようにです。

確かにコンピューターは恐ろしく複雑なものです。今私の膝の上にのっているLet’s Noteはディスクが60GBあります。これは私が30年前にうろつきまわった、巨大なコンピュータービル丸ごとのデスク容量と同じくらいです。メモリーにいたっては30年前の日本の全てコンピューターを合わせたよりもっと大きさがあります。難癖をつけるのは筋違いかもしれません。現に機械音痴の私でも、1日でとにかくインターネットに接続して使えるなる程度には、「ユーザーフレンドリー」ではあります。

しかし、マイクロソフトのVistaについては、Vistaの提供する機能とVista導入にともなう様々なコストを比較すれば、Vista移行はほとんどのユーザーのためではなくマイクロソフトのためのように思えます。いまさら表計算やワープロに機能を付け加えたいと思っている人は少数派でしょう(機能を削ってもらいたいと思う人は多いと思いますが)。

今のマイクロソフトとPCの状況はダウンサイジングに直面していた頃のIBMと大変よく似ています。一部の特殊なユーザーの要求には応えながら、普通のユーザーには過剰な機能を提供しているのです。Linuxやインターネット上のオープンオフィスに対する言い分もそっくりです。「責任のあるメーカーが作ったものではない、信頼性、安定性の低い製品だ」と言うのです。

今後さらにマイクロソフトが自分の都合で互換性も乏しく、コストだけやたらかかる製品を、「古いOSにはウィルス対策のソフトを提供しない」という手段で押し付けようとすれば、ある段階でユーザーは雪崩をうってオープンソフトに流れていくでしょう。マイクロソフトのビジネスモデルでは、それを防ぐのは難しいでしょう。

不思議なことにマイクロソフトではIBMを叩きのめした「イノベーションのジレンマ」(日の丸コンピューターを再評価する(5)参照)をバイブルのように学んでいるそうです。イノベーションのジレンマとはハイエンドのユーザーに焦点を当てて、技術の進歩が一般ユーザーにははるかに低価格で十分な性能の製品を提供できるようになったことに、気づかないことです。一体マイクロソフトの人たちは何を学んでいるのでしょうか。


(追記)

2年前の記事なのですが、その後液晶テレビやDVDも買いそろえ、少し人並みの環境になりました。ADSLも光に替わり、無線で室内では高速に2台のPCでインターネットアクセスができるようになりました。PHSはカバン入れる拍子に壊れてしまい、それを機会にEmobileに取り換えました。

ずっと文化的にはなったものの、当初から性能に問題のあったLet's Noteはますますノロマになってきています。Let's Noteに限らず、PCは導入してしばらく経つと、何かゴミがつくのでしょうか、処理速度が次第に遅くなってきます。 機能が向上しているとはあまり思えないので、システムにゴミがたまること自体がマイクロソフトやPCメーカー、インテルの陰謀のような気がしてきます。

PCを買い替えると、ソフト込みで20万円はかかることは変わりなく、しかもデータ移動やセットアップで手間は結構掛かります。こんなバカなことをいつまで続けなければいけないか憂鬱になりますが、IBMの天下が永遠でなかったのと同様に、いつかは終わりが来ること思ってはいるのですが・・・
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