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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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未来予測の色々
戦略策定、計画など言葉は色々ですが、私たちは常に何らかの未来の予測のもとで、行動しています。今期だけを考えて行動しているつもりでも、ITの動向や顧客業種の将来など、未来に対する意識は少なくとも潜在的に常にあるはずです。しかし、未来を予測するとき必ずしもシステマチックなアプローチは取られていないではないでしょうか、未来予測について少し考えて見ましょう。

1)「既に起きた未来」

ドラッカーの言葉です。例えば10年後の30歳の人は今20歳である必要があります。現在10歳だったり40歳だったりする人は、決して10年後に30歳にはなれません。したがって、5年後、10年後の人口の年齢構成はほぼ正確に予測できます。10年後の年齢構成は未来であっても「既に起きた未来」なのです。

同様に、法律などで実施の決まっている施策、実行着手された計画(例えば2004年版Windows)などは、確実に起きると考えてよいものです。工場も何年も完成までかかるような類の産業は、数年先の供給能力を工場の着手状況から予測することができます。このような確実性の極めて高い予測を他の不確実な予測と混同してはいけません。これらは「予測」ではなく、「事実」として取り扱われるべきです。。

反面、「皆が言っている」というのは既に起きた未来とは全然別物です。米国の通信業界が「年率1,000%の需要増」という、もともとはどうもワールドコム自身が発信源の情報を信じて莫大な投資を行って、苦境に陥ったのは、予測をあたかも事実として取り扱ったためです。結果として、需要増は「誤った予測」であり、通信インフラの増強は「既に起きた未来」として実現してしまったのです。

似たような例で1980-90年頃の白書などで「来るべき21世紀をひかえ、ますます多様化する消費者の需要性向は」などどいう言い方がよくありました。21世紀が来るのは既に起きた未来どころではない事実なのですが、そのレトリックに引きずられると間違う危険性が大いにあります。例えば最近のCDのヒットは何百万枚という単位になりますが、レコードの時代に100万枚を超えるヒットは何年に一度のことでした。これはレコードプレーヤーがCDプレーヤーより数が少なかったからといううわけではなく、むしろ消費者がCD購買に対しては、非常に画一的な消費動向を示しているからです。何故という理由はともかく、「多様化する」というのは音楽業界では「21世紀をむかえる」のような事実としての予測ではなかったのです。


2)確率を設定できるリスク

狭い意味での「リスク」とは、ある種の確率が設定でき、そのために売買することも可能なものです。保険はその典型ですし、運輸業のように何百台、何千台というトラックを持っている会社が、事故率を設定して、事故費用を積み立ていることは普通に行われています。一台一台のトラックの事故は予測不能ですが、多数の集団に対しては確率が適用できるからです。

少し拡大すると、SI業者が赤字プロジェクトの発生確率を予測して、利益とは別に、赤字発生の損害の分を各プロジェクトに割り振って、受注金額に含めるのは本来は必要です。そうしなければ、経営全体から見ると赤字プロジェクトのために利益が出なくなる危険があります(というより、確実に出なくなる)。

ただ、リスクの確率の決定は必ずしも容易ではありません。最近の銀行が貸し出し引当金が不十分だと言われているのは、もともとは従来より貸し倒れ確率がはるかに高くなったためです。もっともこれは、膨大な貸し出しを行う大企業は倒産確率0としてどんどん貸した結果でもありますが。

不確実なリスク確率でも、逆に不確実な故に市場で売買が可能となります。先物市場、より複雑な金融オプションやデリバティブなどは、確率に対する見方が人によりことなるからこそ成立するので、誰も「8年後に2010年になるかどうか」などで市場を作ったりしません。経営者は可能な限り、これらのリスクオプションを有効活用して、未来の不確定な要素を除去すべきでしょう。

3)不確実な未来

未来は基本的に不確定ですから、1)や2)のようにほぼ事実として取り扱えるようなものはむしろ例外です。ただ、多くの事柄は現在の事実をもとに、演繹的に未来の予測をすることは可能ですし、実際の計画は殆どそのように行われます。来年度の販売額やそれに必要な生産量の確保などは、現在の状況をもとに、比較的容易に計画できます(受注残のような「既に起きた未来の生産量」などがあれば、さらに容易となる)。

しかし、予測範囲が長期に及んだり、予測が外れたときのインパクトが非常に大きい場合(大規模な工場建設のような投資を行うようなとき)は、「シナリオプランニング」と呼ばれる手法が有効です。これは相反する(MECEになっていることが本来望ましい)いくつかのケースを想定して、どのような事態が起きうるかを予めシミュレーションして、かつ対応策を立て実行することです。実行までしなくてはただの遊びになります。

例えば「デフレが突然終焉してインフレになる」、「半導体の需要が急に増える」、「XXX法が改正される」などの仮定で何が起きるかを、シミュレーションし、対応策を実施しておくことは大切でしょう。この場合、「起きそうもない」とか「誰もそんなこと言っていない」などと言ってはいけません。インパクトが大きければ、それ相応の事態のシミュレーションはを行うのは、危機管理以上に経営そのものと言っても良いと思います。

ただ、シナリオプランニングは有名なわりに実施はあまりされていないようです。「通信需要の年率1,000%増加」という安易な予測によって何兆円の投資をしてしまった、米国の通信業界、さらにその通信会社を何千億円で買った日本の会社。シナリオプランニングというきちんとしたプロセスを無視して、「悪夢が頭をよぎった」程度で決断していたのではないでしょうか。
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テーマ:意思決定 - ジャンル:政治・経済

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