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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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EVはトヨタ王国を終焉させるか?
thomas_edison_electric_car.jpg
トーマス・エジソンとEV(電気自動車)

同じ市場に二つの製品があったとき、どちらの製品が勝利をおさめるかは、技術的な優位性だけでは決まりません。家庭用ビデオでVHSがベータマックスを圧倒したり、PCのOSでWindowsがマックを打ち負かしたのは、より沢山のソフトメーカーから自社製品の稼働するプラットフォームとして選ばれたからです。しかし、ソフトメーカーがVHSのあるいはWindowsを選んだ理由は、技術的にすぐれたからというより、市場でのシェアが高かったためです。

当初二つの製品のシェアの差が僅かでも、その差自身がシェアの差の拡大につながることは稀ではありません。顧客も含め市場全体がシェアの高い製品にシェアが高いという理由で支配されてしまうことを、英語ではLock-inと呼ぶこともあります。

Lock-inの例としてタイプライターのキーボードの配列があります。キーボードの一番上の文字列からQWERTYと呼ばれるレイアウトは、最初はタイプライターが速く打たれすぎて、故障するのを防ぐためにわざわざ使いにくくするために選ばれたのですが、その後タイプライターが進歩しても、変えられることはありませんでした。QWERTY以外の配列はQWERTYに慣れ親しんだユーザーから受け入れられなかったのです。
qwertytypewriter.jpg



現代の自動車のエンジンはガソリンによる内燃機関にLock-inされています。部品産業はガソリン自動車を作るために最適化されていますし、ガソリンスタンドのようなインフラも完備しています。顧客もガソリン自動車以外の選択肢は考えもしません。しかし、自動車が生まれてしばらく、20世紀の初頭まではガソリンエンジンは他の二つ動力機関、蒸気機関、電気モーターと市場をほぼ3分していました。

今となっては他の二つのエンジンと比べ、ガソリンエンジンの優位性は疑問の余地がないように見えますが、ガソリンエンジンのようなものがなぜ市場を支配できるようになったか、冷静に考えるとむしろ不思議です。

そもそもガソリンは非常に危険な物質です。消防法で危険物としての指定を受けていて、200リットル以上の保管は許可が必要ですし、火炎瓶の材料にもなるような代物です。ガソリンエンジンの動作原理自体が、ガソリンと空気を混合した爆発を原動力にしているため、エンジンは高い精度の気密性と堅牢さが必要となります。

おまけにガソリンエンジンは、本質的にエネルギーの効率が非常に悪いという問題を持っています。爆発と冷却のサイクルで大量のエネルギーが失われ、その比率は現代の技術でも実質60%以上にもなります。しかも、一定の回転数を維持しなければ著しく能力を落とし、そのため複雑な伝達機構(トランスミッション)で速度によりエンジン回転数が大きく変化しないように工夫する必要があります。複雑な伝達機構はさらにエネルギーの効率を低下させます。

これに比べれば、電気自動車(以下EV:Electric Vehicle)は少なくとも20世紀の初めごろは、ずいぶんとましに見えたはずです。EVの動力源は電気モーターで、電気モーターは内部のエネルギーロスが小さく、回転数で力が減衰することもないので、複雑なトランスミッションは必要ありません。確かに速度や一度走ることができる範囲はお粗末でしたが、同時代ののガソリン自動車と大同小異でした。20世紀の初めに最初に時速100キロを記録したのはEVです。

EVの弱点は当時もバッテリーでした。しかし、EVの推進者の一人のトーマス・エジソンは「バッテリーの問題は早晩解決される」と自信満々でした。実際、19世紀の終わりに、バッテリーのキログラム当たりのエネルギー密度(Wh/kg)は10程度であったものが、1901年に18Wh/kg、1911年には25Wh/kgに向上します。10年で2倍程度の勢いで改善が進んでいたのですが、そこからさらに2倍の改善を達成するのに80年かかってしまいます。EVとバッテリーの進歩はガソリンエンジンに阻まれてしまったのです。

ガソリンエンジンがEVとの競争に勝った理由は明確ではありません。一つの理由は1913年にキャディラックがバッテリー駆動のスターターを実用化したことがあります。それまで、ガソリンエンジンの欠点の一つは始動が難しく、危険でさえありました。クランクシャフトを回転させてエンジンを起動するのは力仕事でしたし、時としてクランクシャフトの逆回転で死亡事故まで起きました。

皮肉なことにバッテリー駆動のスターターの発明と、ガソリンエンジンの普及は、バッテリーメーカーにEV用の大型のバッテリーより、小型のスターター駆動用の小型バッテリーへの投資を推進させます。EVはガソリンエンジンに二重に発展を阻害されたのです。
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フォード モデルT

おそらくガソリンエンジンがEVに優位にたてた大きな要因は、ヘンリー・フォードが多分関連特許の取得しやすさからガソリン自動車の生産を行うことにしたことでしょう。フォードはモデルTの大量生産で自動車の価格を劇的に引き下げることに成功します。1914年ごろEVの平均価格が3千ドル近かったのに対し、モデルTは440-640ドルで販売されました。もし、フォードがモデルTのエンジンをガソリンではなく電気モーターにしていれば、自動車の歴史は全く違ったものになっていたかもしれません。

ガソリン自動車にLock-inされた自動車産業が再びEVに注目するようになったのは1973年の第1次石油ショックのころからです。1990年代に入るとGMのEV1をはじめ、トヨタのRAV4 EVやホンダ、フォードなど主要なメーカーが次々にEVを開発しました。
GMEV1.jpg
GMのEV1

新世代のEVともいうべきそれらのEVは最高速度は100キロを超え、充電なしで100キロを走ることができましたが、ガソリン自動車の水準を考えれば実用レベルに達しているとは言い難いものでした。バッテリーの性能が不十分だったからです。

ガソリンの重量当たりのエネルギー密度が13,000Wh/kgに達ししているのと比べれば、鉛電池は1901年の18Wh/kgが1990年にようやく40Wh/kgになったレベルですし、効率の高いリチウムイオン電池でも70-150Wh/kg程度です。ガソリンと比べれば2桁の違いがあります。

もちろん、新世代のEVの歴史はまだ浅く、バッテリーの進歩はこれからも期待できます。充電を行ういわゆる二次電池ではなく、燃料電池を使用すればエネルギー密度はもっと高くすることができます。亜鉛空気タイプの燃料電池の理論的限界は1,000Wh/kgを超えますし、アルミ空気タイプの燃料電池の理論的限界は4,000Wh/kg以上です。

EVはガソリンエンジンよりはるかにエネルギー効率が高く、現在でも平均的な車の10倍程度、燃費の良いトヨタのプリウスやホンダのインサイトと比べても3倍程度のエネルギー効率を持っています。さらに駆動系がはるかに簡素になるので、バッテリーによる重量増をある程度相殺できます。発電所の効率や送電ロスを考えても、EVはガソリン自動車と比べCO2の発生量は半分以下ですし、火力発電を想定しなければCO2の削減効果は非常に大きいと考えられます。

走行距離に直結するバッテリーのエネルギー密度とともに問題だった充電時間の長さも改善が進んでいます。一晩かかると言われた時代から、今では10分程度で充電ができるようになってきました。これならガソリンスタンドとそう違いませんし、コンセントからコードを引けばよいだけですから、特別な設備もほとんどなく充電場所を確保することができます。

それでもEVがガソリン自動車を駆逐するようなことが近い将来たとえば10年程度で起きるとは考えにくいでしょう。ガソリン自動車は長い歴史の中で絶対的な性能を磨き上げていますし、ガソリンスタンドをはじめインフラが完備しており、EVの優位性が発揮できる場面はまだ限られています。

何よりEV普及の障害はコストです。バッテリーはまだ高価ですし、寿命も車自身ほど長くはありません。エネルギー効率の高さ(3-10倍あるいはそれ以上)から燃料代は安くなりますが、EVの量産が軌道に乗るまでコストの差は続くでしょう。自動車産業はガソリン自動車にLock-inされているのです。

しかし、石油の資源的な制約が大きいことや、エネルギー効率の悪さによる環境負荷を考えると、EVが次第に普及の臨界点に近づいてきていると考えることは妥当でしょう。ハイブリッドカーの普及もバッテリーの進歩と価格低下に貢献することでEVの進歩には有利に働きます。

今かりに、EVが普及と量産効果の好循環に乗ることができ、ガソリン自動車を駆逐することになったらどのようなことが起きるでしょうか。銀塩フィルムがデジカメに置き換えられたり、ブラウン管テレビが液晶テレビやプラズマテレビに席を譲ったようなことが自動車業界で起きたときの影響を考えてみましょう。

エンジンは自動車のまさに心臓部分です。ガソリン自動車、EVという言い方もエンジンの方式の違いを言っています。主要な自動車メーカーでエンジンを自社生産していない会社はありませんし、製品ラインの差別化に重要な役割を果たしています。

EVでは電池と電気モーターが、ガソリンエンジンとトランスミッションに置き換わりますが、これは従来の技術力や製造ノウハウの蓄積が使えなくなるということです。EVではもはやすべての自動車メーカーが個別に電池や電気モーターを開発するとは考えられませんし、逆に電機メーカーなどが新たに参入してくることが考えられます。同じようなことはデジカメがフィルム型のカメラを置き換えるときにも起こりました。

別の例ではMPUによりコンピューターの心臓部の演算装置がインテルを中心とした少数のメーカーに集約化され、しかもインテルがシェアの大部分を取ってしまったケースがあります。IBMなど一部のメーカーを除き、コンピューター会社はMPUをインテルなど外部から調達し、最終製品に組み立てるだけになってしまいました。

自動車の最重要部品であるエンジンの生産が一部のメーカーに集約化されると、コンピューター産業や電機メーカーのように生産工程の付加価値の流出が起きると考えれられます。同時にこれはメーカーごとの技術や生産性の差が大幅に縮まることを意味します。

今では電子製品の多くは半導体や液晶パネルに機能やコストの多くが集中しています。このような業界ではトヨタのカンバン方式のように部品を必要な都度納入させて、在庫を最小化する意味は小さくなっています。

それどころか、半導体の納入は一定数量を特定の時期に購入することを約束しなくては発注もできません。メーカー主導の発注管理は難しいのです。また部品製造の立場から言えば、電池は半導体や液晶と似て、巨大な設備で連続生産をする必要があります。規模の利益を維持するため、現在のエンジン部品と比べて生産調整はずっと難しいでしょう。

自動車は最終製品のメーカーを頂点とした垂直統合を基本とした産業です。コンピューター産業もかつてはそうでした。しかし、今ではコンピューター産業は半導体、OS、その他の部品メーカーが水平分業を行っています。
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EVは自動車の製造概念を一変する?

EVは自動車産業を水平分業に大きく転換させるでしょう。ガソリンエンジンをメーカーが内製している現在の形態では、「モジュール化」は限界がありますし、自動車の性能を決めるという最重要の戦略は自動車メーカーの手にあります。PCでは製品のサイクルはインテルのMPUの製品サイクルで決まってしまいます。

このような世界になっても、トヨタは最大の製造業者として大きな力を維持することは可能かもしれません。しかし、カンバン方式による在庫削減や、巨大な発注量を背景にしたコストの低下などの強みの多くは失われるでしょう。IBMはPCで一度は最大の生産メーカーの地位を得ましたが、コストの優位性は小さく、業界1位の地位どころかPC業界に留まること自身が許されませんでした。

EVがガソリン自動車に置き換わる日は来るのでしょうか。原理的なエネルギー効率の高さや、環境負荷の小ささから考えて、いずれEVが主流になると考えるべきでしょう。しかし、「壁掛けテレビ」ができると液晶技術がもてはやされてから、実際にブラウン管を液晶などフラットテレビが生産量で上回るまで30年以上の年月が必要でした。

家庭用テレビで液晶が主流になるまで、液晶は最初は電卓の表示装置、高価なノートブックPCと徐々にマーケットと生産量を拡大し、技術を進歩させてきました。EVもゴルフカートやヨーロッパなど一部の都市のコミューターから少しづつマーケットを広げていく必要があります。

それでも、今から20-30年のうちにEVが急速に自動車の主流になると考えるのは無理な予測ではないでしょう。そうなれば自動車産業は今とは大きく形を変えているはずです。想像はつきにくいかもしれませんが、20年前ソニーや松下が有力カメラメーカーになることは考えられませんでしたし、IBMがサービス主体の会社になると考える人も希でした。時代はゆっくりと、しかし気がつけば時として突然大きく変わっていくのです。

EVの立ち上がりのための施策として、宅配便配送車をEVに限り駐車可とすることも考えられます。
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この記事に対するコメント
QWERTY配列に対する誤解
「QWERTYと呼ばれるレイアウトは、最初はタイプライターが速く打たれすぎて、故障するのを防ぐためにわざわざ使いにくくするために選ばれた」というのは、残念ながらガセネタのようです。どうガセネタかについては、私のページの『QWERTY配列に対する誤解』をごらん下さい。
【2007/08/05 07:18】 URL | 安岡孝一 #eioMINxA [ 編集]

図版の権利について
こんにちは。いつも読ませていただいています。
実は、以前から気になっていることがあります。この記事ら限らず、こちらのサイトで使われている様々な写真や図版は、権利上の問題がクリアになっていますか?
【2007/08/09 04:24】 URL | 椎名 #- [ 編集]


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素敵なアジアン家具 フラワーポットチーク

 アジアンインテリア私は、ガラスの天板を特注して上に置きサイドテーブルとして使っています。中が、見えるので小さいグリーンを入れようか、夏らしく貝殻などを入れて楽しもうか思案中です。ポット部分が大きいので、自分のアイディア次第で何にでも変身しそう!!初 ラック・スタンドをあなたに捧げます【2007/08/17 03:48】

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