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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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高福祉それとも低負担?
MichaelMoore.jpg
マイケル・ムーア監督

「華氏911」でブッシュ政権のイラク政策を標的にした、アメリカの映画監督のマイケル・ムーアが今度は「シッコ(SiCKO)」でアメリカの保健医療を取り上げました。映画の評価はご自身でご覧いただくとして、映画が指摘しているのは、アメリカが健康保険の満足度が先進国最低で、国民の6人に1人が医療で無保険状態にあるということです。

映画では救急車に予約が必要だとか、色々な話題が満載されているわけですが、国民皆保険を基本とする日本人の大部分(今や少数とは言えない例外がでてきていますが)に、病気になって健康保険がないという不安は理解しがたいものがあるかもしれません。

アメリカは医療保険は基本的には個人の「自己責任」です。医療保険により受けることができる医療サービスも大きく異なります。日本でも差額ベッドをはじめ金を払えば、より手厚い医療を受けられる部分もありますが、健康保険でカバーされている治療内容は基本的に誰でも同様に同価格で受けることができます。

日本の健康保険料の支払いは所得によりかなり差があります。政府管掌保険の場合、標準月額報酬が5万8千円なら本人負担の保険料が月額2,378円なのに対し、最高の121万円の標準月額報酬に対しては、保険料負担は月額49,610円と20倍以上になります。

仮にこのような負担をそのままに、医療保険をすべて「自己責任」にして、生命保険のように負担と保障が比例するようにしてしまうと、所得の高い人はより手厚い医療保険に加入しようとするでしょう。アメリカで起きているのは、要するにそのような状況です(少し単純化しすぎてはいますが)。
pet_scanner.jpg
金さえ出せば高度な医療を受けられる

アメリカは社会福祉政策に対し伝統的に懐疑的です。社会福祉=共産主義という考えを持つ人も多く、自助努力、自己責任という建前を貫こうとします。「働く者食うべからず」という理念を守ろうとしているとも言えるでしょう。

ただ、医療にまでそのような考え方を徹底すると、医療費が払えないのでみすみす死ぬのをほっておくという事態も起きてしまいます。低開発国でHIV感染の患者は実際にそのような取扱いを受けますし、日本でも健康保険制度の確立する以前はそうしたことはいくらでもありました。

いくらアメリカ人でも、貧乏人が病気で死ぬのは自己責任とは思いませんし、何とか現行制度を変えたいという気持ちは持っています。しかし、いざ実行するとなると医療費がもともと高額であるため、公的援助の拡大が大きな負担になる上、「自己責任」ですでに高額の医療保険に入っている高所得の人たちには、何も得になる話ではないので、各論になるとまとまりません。アメリカに比べれば、相対的には今まで日本の健康保険制度は、非常にうまく運営されてきたと言えます。

このアメリカと日本は租税と社会保障負担つまり健康保険費や年金費用を合計した国民負担率は、GDPに対しほぼ同じで33-38%です。アメリカは軍事支出が日本よりはるかに多いのですが、GDPに対する比率では差は3%程度です。軍事費を除いた日米のGDPに対する国民負担率の差は概ね5%程度日本が多いと考えられます。

アメリカはブッシュ政権で大規模な減税を実施してクリントン政権で達成した財政の黒字化から再び財政赤字に転じてしまいました。財政赤字はいずれ国民自身が返却するしか解消の方法がありませんから、国民負担率に財政赤字を足して実質的な国民負担をみるとほぼ37-38%です。イラク戦争で多額の軍事費の増加がありましたが、その影響はGDP比でみると1%程度です。
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財政赤字の警告をするアメリカ政府の「借金時計」

これと日本を比べると日本の国民負担率は名目的には36-38%程度ですが、GDPの8%にもおよぶ莫大な財政赤字があるので、実質的な国民負担率は45-48%になります。これに対し財政赤字のGDP比が0-4%と小さいイギリス、ドイツ、フランスの実質国民負担率はそれぞれ概ね50%、60%、70%程度です。スウェーデンなどは実質国民負担率は75%近くになるのですが、ほとんど財政赤字がありません。

実質国民負担率がヨーロッパに比べ低い日本が莫大な財政赤字と借金を抱えているのは、要するに税金や社会保障費が低い、つまり税金が安いからに他なりません。財政赤字の問題は税金の安いということの単なる裏返しです。

もし日本の消費税率が5%ではなくヨーロッパ並みの15-20%になれば、(増税による経済への悪影響を無視すると)財政の黒字化は簡単に実現できます。結局財政赤字を解消しようとすると、今のヨーロッパ並みの租税負担、社会保障費負担を受け入れるか、アメリカのような社会福祉レベルにするかどちらかということになります。

高負担、高福祉にするか低負担、低福祉にするかは国民の選択です。今の日本のような低負担、高福祉(と言って良いかどうかは問題ですが)にすれば財政赤字は増大し続けますが、それは将来への問題の先送りに過ぎません。

これは官から民に権限や業務を移管して経済的効率を高めるというのとは本来別の話です。確かに国鉄からJRになって合理化が進んだとか、郵政事業を民間レベルで競争させた方が能率は高まるというのは事実でしょうが、もともと親方日の丸で経済的合理性を無視して業務を行っていたのを、民間企業になって無駄を省こうという話です。高負担高福祉か、低負担低福祉かというのは国民の間で所得移転をどの程度おこなうかという問題です。

ワタミの社長の渡辺美樹が「もう国には頼らない。経営力が社会を変える」という本を書いています。医療、教育、介護色々な分野で官が実行してきたものを民が行うことにより、物事がうまく運ぶということを言っているのですが、どんなに合理化を徹底しても、国民の間での所得移転ができなければ、金がないので医療費が払えず病人を見殺しにするという問題は解決しません。そして国民の間で所得移転を実行するためには官の権力がなければなりません。
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金があれば?「もう国には頼らない」(写真は渡辺ワタミ社長)

アメリカは日本と比べれば、税制の優遇もあって民間レベルでの寄付とチャリティーが活発に行われているのですが、額にすればGDPの1.7%に過ぎません。民間のチャリティーは官のものより柔軟で有効であることが多いのですが、格差社会のアメリカでヨーロッパ並みの福祉を低所得者層が受けるには、とても十分な額とは言えません。

今の日本はヨーロッパ的な高福祉を実現するには国民負担が低すぎるため、医療、教育、低所得者への援助などを削り続けています。国民が納得していればそれでも良いのかもしれませんが、結果は給食費を取り立てるために教員が駆り出されたり(給食費くらいただにしたら)、生活保護を無理矢理打ち切ったりと、末端で矛盾やトラブルを引き起こしています。

医療費にしても、医療費の総額を抑えたままで医師の不足を解消しようとすると、医療従事者の給与水準を下げるしか方法はありません。ワタミの社長なら、合理化で医療費も安くなると言いたいかもしれませんが、医療費のような人件費が大きなウェートを占める産業では限界があります。

製造業は合理化により大幅な生産性の向上を期待できますが、医療や教育のように高学歴の人間がサービスを提供するものに、同じような改善効果は期待できません。教育でもインターネットなどで効率化が達成できる要素は多々あるでしょうが、落ちこぼれ対策のようなきめ細かな対応が必要なものには限界があります。まして、生活保護のようなような「金がない」という状態は「金を与える」という以外根本的な解決策はありえません。

ついでに言うと、国民の負担率を高めるという選択肢を取ると、恐らく消費税の大幅な増額(がもっとも効率的です。「金持ちや大企業からもっと取れ」というのは一つの考え方ですが、高い税負担は節税、脱税によりかなり相殺されてしまいます。確かに消費税は貧乏人からも税金を取り立てますが、赤字会社にしておいてフェラーリを乗り回すような人々、さらにやくざや泥棒からも税金を取ることができます。
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消費税は痛いのは事実だが・・

もし、国民の中の所得移転を行うのなら、低所得者に低い税率、高所得者に高い税率を課すより、取った税金を後から福祉の名目で配ってしまうことはより簡単で確実です。共産党、社民党のように「大企業はつぶれても構わないから税金を取れ」と言うなら(そんな言い方はしていませんが)別ですが、消費税を福祉に回すというのは本来、社会主義的考え方を取るのなら当然選択すべき政策です。

社民党や共産党が本音で何を考えているかはわかりませんが、文字通り「消費税は悪税(というか一般国民への税金は全て悪税)」というなら、これは一種の囚人のジレンマ(少子化という囚人のジレンマ)です。自分たちの利益の最大化を目指すために、増税も福祉の向上も実現できなくなっているのです。

繰り返しますが、高負担高福祉を目指すか、低負担低福祉を目指すかは国民の選択の問題です。実際には高負担で財政赤字がなくなって、官の非効率的な部門の改善が遅れたり、意味のないばらまき型の公共投資(また公共投資ですか?)が行われてしまうこともあるでしょうから、安易な増税は気をつける必要がありますが、最終的には二者択一になります。

アメリカでは共和党が低負担低福祉型の政策を、民主党が高負担高福祉型政策(あくまでも相対的にはですが)をとりますし、イギリスではサッチャー政権の時に国営企業を大幅に整理し、福祉の切り下げで高所得層の税金を下げたことが今日の経済的成功につながってると言われています。しかし、基本は政策の重点をスイッチしながら官依存のモラルハザードを防ぎ、負担と福祉のバランスを追求しようとしています。

乱暴な言い方をすれば、今日本で財政赤字の「問題」は存在しません。存在するのは福祉に見合った負担を受け入れる決心を国民が受け入れるかどうかです。幸い日本は莫大な個人の金融資産があり借金を海外に依存していないので、財政赤字が直ちに経済の崩壊につながるようなことはありません。90年代のアジア経済危機やロシアの経済危機は外貨のない状態で赤字を積み上げた挙句、経済が崩壊してしまいました。

仮に消費税が20%になったらどうなるのでしょうか。ドイツ、フランスや北欧諸国を見る限り、社会が滅茶苦茶になることはなさそうです。しかし、いまだにコンクリートで国中を固めたいと思っている土建大国の名残りがある日本では、あまりに拙速な増税は避けたほうが良いでしょう。誰でも税金は払いたくありません。しかし、救急車を予約したいとも思っていないはずです。納得するのには少し時間がかかりそうです。

関連: 社会福祉は最大の景気刺激策
借金なんか怖くない
何故救急車はタダなのか?
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この記事に対するコメント
すばらしい意見でした。
目からウロコがおちるような意見でした。
まったく同感です。
経営力で、サービス業はたいして効率化しないと思いますし、
消費税は、「貧乏人からお金を取るのか?」といわれると、税率を上げにくかったですが、「赤字会社にしておいてフェラーリを乗り回すような人々、さらにやくざや泥棒からも税金を取ることができます」といわれれば、納得です。
最後の問題は、お金があると際限なく分配してしまう政府ですね。
【2008/01/11 18:56】 URL | kaz #WzzJX4NY [ 編集]


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