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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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リスクは管理するものです。避けるものではありません
SOX法や個人情報保護法など企業が対応すべきリスクが増大しています。SOX法は企業の財務報告の正当性の保証を求めたものですが、具体的な内容は米国のCOSO(The Committe of Sponsoring Organization of the Treadway Commission)の活動が元になっているようです。COSOは米国会計協会など5者の団体のスポンサーシップによる独立組で1985年に設立され、財務報告の正当性を担保するためのフレームークの開発など、財務報告の品質向上のための活動を行っています。

COSOの作成したドキュメントの中で重要なものとしてERM(Enterprize RiskManagement)があります。ERMは財務報告の正当性をどのような内部コントロールを確立すべきかというフレームワークを示すもので、SOX法への対応のためのテンプレート作成のベースになっています。ERMでは企業がいかに「リスク」に対処すべきかという基本的な考え方が述べられていますが、これはリスク管理というものの本質をどのように理解すべきかということについて多くの示唆を含んでいます。

ERMでは、本来ビジネスは多くでの「不確実」な事象があり、その中で企業にとって有利なものは「機会」であり、不利なものが「リスク」であると考えます。つまりビジネスはリスクが避けられないものであり、むしろリスクがあるからこそ機会も生じると考えているのです「ハイリスク、ハイリターン」という言葉がありますが、裏を返せばビジネスは「ノーリスク、ノーリターン」ということです。

確かに、金を貸さなければ貸し倒れはありませんし、工場を建てなければ売れないものを作る心配もありません。人を雇わなければ不正も行われないわけです。このように考えるとリスクとは忌避すべきものではなく管理すべきものであるということになります。どんなに努力しても大規模な地震の発生を防止することはできません。政情不安な国で内乱や通貨システムの崩壊が起きることも一企業ではどうすることもできません。しかし、そのような事象が発生したときの被害を小さくすることは可能です。カントリーリスクの高い国は多くの場合、賃金や不動産価格が安いですし、貿易上の優遇措置を享受することも可能です。「海の荒れた日は大漁」だといいますが、荒れた海に漕ぎ出せるだけの対応策を持っていれば、大きなリターンが期待できるのです。

ERMでは企業の「Risk Appetite」を先ず評価すべきだと述べています。「企業のリスク選好度」とでも訳すべきものですが、直訳すると文字通りリスクへの食欲-欲望です。事業欲とはリスク欲だというわけです。あまりなじみがないかもしれませんが、財務理論でハードルレートという考え方があります。これは企業は固有に市場から期待される最低限の利益率があり、どの企業も一律に同じ利幅をあげれば良いというものではないという考えが基本になっています。一般に低成長の安定した業界のハードルレートは低く、高成長だが競争の激しい業界のハードルレートは高くなります。一時鉄鋼会社が半導体事業を設立する動きが盛んでしたが、このようなことをすると鉄鋼業だけを営むより会社全体としてのハードルレートは高くなります。そうすると例え一定の利益をあげている事業でもハードルレートが高くなることにより、切り離さなくてはならない場合も起こりえます。企業が全体としてどのようなハードルレートを維持できるような事業のポートフォリオを組み立てるかは、企業戦略(事業戦略ではなく!)の基本です。

リスクが忌避すべきものではなく管理すべきものであるとすると、管理の基準は何でしょうか。当然、

・リスクの発生する確率
・発生したリスクのインパクト
・リスクを冒すことにより得られる機会の大きさ
・リスクを最小化(ないし消滅)させるためのコスト

の4点のバランスになります。ERMでもこのような視点で一つ一つのリスクの評価と管理の方法を検討すべきであると言っています。例をあげると与信の程度により、承認のプロセス、レベルは異なります。小さな取引で大きな取引と同じような承認プロセスを行っていてはビジネスのスピードは低下します。また、大きな取引であっても、与信のより合理的な判断や意思決定の速度が早くなるように情報システムがサポートすれば、競走上有利な立場に立てます(勘定奉行のCMで一方のセールスが「社に持ち帰って早急に」と言っている傍で「今承認が取れました!」ともう一人が言う場面がありましたよね)。

ERMでは確率は小さいがインパクトの大きいリスクは保険などにより他社とSHAREを行うべきだと言っています。確率が高く、しかもインパクトの大きなリスクですら最小化の適切な手段や十分なコントロールが可能なら、リスクを享受するという判断が合理的にできると言っています。

リスク管理の本質とは最小のリスクで最大の機会を獲得する仕組みを構築することだと思います。リスクを忌避しては競争力は低下しますし、ビジネス自身が行えないこともありえます。リスク管理は企業にとって戦略そのものと言っても良いとでしょう。

***********

別の角度の議論ですが、企業倫理の確立やCSRの推進を求める声が高まっています。経済合理性の観点で言えば、ビジネス倫理やCSRに反することを行った場合のリスクのインパクトつまり「賭け金」が従来よりずっと高くなっているという現実があります。雪印、エンロンなどは会社自体が消滅してしまいましたし、三菱自動車も存亡の危機に立たされています。道徳的な観点でCSRを語ることも可能でしょうが、社会の変化により企業の誤った行動により支払わされる対価が増大することにより、リスク管理の均衡点が変化したと考えることもできるでしう。

「返済は計画的に」と消費者金融がTVCMを行っていますが、ローン破産が増加すれば利息の低下を求める声が高まったり、規制の強化が行われるなどによりビジネスのコストが増大するのを予防する動きとも考えられます。企業が大きく一般に認知される度合いが高まれば、CSRの必要性はより大きくなるという一例かもしれません。
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テーマ:意思決定 - ジャンル:政治・経済

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