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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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天下りを考える
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「天下り」とは普通高級官僚が、民間企業、特殊法人等に高い地位と報酬で迎えられることを言います。実際は高級官僚と一口に言っても、省庁による違いや、技官のような特殊技能を持つ場合など形態は色々です。

また、国家公務員上級試験に合格した高級官僚、いわゆるキャリア官僚だけでなく、ノンキャリア官僚も「天下る」こともあります。さらに、国家公務員だけでなく地方自治体の公務員の転職、民間企業の親会社会社から子会社への移動、銀行員の親密融資先への派遣・転職も「天下り」的なものも多くあります。

「天下り」のような人事にまつわるものは組織、個人、状況により大きく違ってくるので、一律に一般論を展開することは危険だということは認めざるえませんが、あえてここでは典型的なキャリア官僚の関連団体、民間企業への転職について考えてみます。

中央省庁には官房といわれる組織があります。各省庁のスタッフ部門を掌握している部門で天下りに関する人事は官房が全てコントロールします。官房は自分の省の出身者が、適正な処遇を得ているかを判断しつつ、国家公務員を退職した後も、出Oの実質的な人事異動を行い、OBが70歳に達するまで面倒を見ます。つまり、キャリア官僚にとって、本当の意味の定年は70歳ということになります。

70歳に達するまで、OBは複数の外郭団体や民間企業を転職し、多くの場合退職のたびごとに退職金を得ます。天下り後の処遇は公務員を退職した時点での地位に基本的にはリンクしているので、平均的な数字を求めることは難しいのですが、50代で局長級まで昇進した官僚なら、70歳まで3千万円程度の平均年収をほとんど保証されていることになります。

天下りの制度(法的な根拠な何もないのですが)がある背景には、キャリア官僚が完全な年功序列型の人事システムを採用していることがあります。同期で入省したキャリア官僚は出世競争で決して後輩に抜かれることも、先輩を抜くこともありません。

一見無競争でお気楽に思えるシステムですが、実際には課長補佐までは一律に昇進しても、課長、部長、局長とポストは減っていくので、40歳前後から「肩たたき」による退職が始まります。この肩たたきで異動させられていく先が天下りになるわけです。

日本のキャリア官僚は長い間東大法学部卒が圧倒的な割合を占めていました。東大法学部自身が大学としては最難関ですが、国家公務員上級試験はさらにその中で優秀な学生が合格できるものです(と言っても3分の1程度は合格できたのですが)。

つまり、日本の学生の中でもっとも学力の高い学生から選びぬかれて中央省庁に採用されるわけです。このように最優秀の学生を採用し、さらにその中で順次優秀なものを選りわけて、残りを退職させるというのは、雇用する側から言えば夢のような贅沢です。

しかし、このような贅沢が許される場合、アメリカでも比較的似たような人事システムをとることがあります。たとえばマッキンゼーのような超一流コンサルタント会社は一流MBA校の最優秀の卒業生を採用し、その中で順次すぐれた成績を収めたものを昇進させます。

コンサルタント会社の場合はパートナーという会社の経営に参画するレベルになれるかどうかが処遇面で決定的に重要で、パートナーになれないと見切りをつけた社員は自発的に退職します。また、会社側もある種の肩たたきのようなやり方で、見込みのあまりない社員を退職させます。

アメリカ社会は日本のように終身雇用がなく、社員は転職を繰り返すというのは、概ねあたっていますが、今でもGEのような会社は生え抜きから上級幹部を選抜していきます。ジャック・ウェルチが3人の対抗馬の中で、現CEOのジェフリー・インメルトを指名した時は他の2人は直ちに退職しました。

日本の中央省庁が最優秀の学生を採用し、時間をかけて組織のピラミッドを維持しながら、優秀なものを選抜していくというやり方自身は間違っているとは言えません。問題は、退職させ、結果的に天下りさせるキャリア官僚が天下り先の地位に相応しいかということと、中央官庁に入省する学生が本当に最優秀と考えてよいかどうかということです。

まず、後者に関しては、議論はあるでしょうが、少なくとも歴史的には正しかったと言ってよいでしょう。中央省庁でもキャリア官僚の最重要の仕事は、国家を運営するための施策を考え、それを実行するための枠組みを法律として成立させること考えられていました。東大法学部はまさにそのような役割を行える人材を養成するための機関として設立されたものです。

天下りの問題は退職したキャリア官僚およびキャリア官OBが、その仕事と処遇に値するかどうかということにあります。マッキンゼーの社員が他のコンサルタント会社に移ったり、企業幹部として採用されるとき、マッキンゼーは別に権力の行使はしません。あくまでも、各個人の能力を採用先が評価して転職が行われます。

ところが、中央省庁の天下りは、受け入れ側の意向より、省庁の官房の人事事情がずっと大きなウェートを占めます。相手先との相性や、当の官僚自身の意向は考慮するでしょうが、決定的ではありません。天下りは各省庁の非公式ではあるが、実質キャリア幹部人事異動なのです。

今となっては、このようなやり方は人事システムとして無理があると言わざるえません。明治、大正のように大学卒の数が非常に少なく、大卒レベルのマネージメント能力を持った人材が希少だった時代はともかく、現代のように大卒があふれかえっていては、中央省庁出身者だというだけでは希少な能力を持っているとは言えません。

このあたりが、キャリア官僚の自己認識と一般企業社会の認識とが根本的にずれているところではないかと思います。ほとんどのキャリア官僚は、小学校からトップクラスの成績をおさめ、東大法学部でも上位の位置を占めていました。

学生は成績の優秀な人間が偉いと思われる社会です。その認識のまま卒業してすぐに勤めた(ほとんどのキャリア官僚はいまだに卒業後すぐ入省します)中央官庁は官尊民卑の強い文化風土を持っています。自分は民間で働いている人間より本来的に優れているという自己認識が覆されることはないのです。

そもそも官という言葉自身、英語に訳すのは難しい言葉です。英語なら官民はPublicとPrivateとなるでしょうが、これは公と私という意味合いです。無理して官をBureaucratと訳してしまうと、官僚主義の総本山のように思われ、少なくとも尊敬されるようなものではありません。

にもかかわらず、キャリア官僚の多くは自分たちは基本的に一般民間人で東大にも入れなかったような連中より優れた能力を持っているという認識を持っています。また、キャリア官僚としての仕事は民間を指導、監督することですから、このような認識が変わることはありません。

自分たちが優れているのだから、天下りで高い地位、報酬を得ることは当然だと考えている限り、天下りに対して何か罪悪感のようなものを持つ必要なないわけで、ここが天下り問題の難しさの一つです。

しかも、これと矛盾しているようですが、キャリア官僚は自分たちは優れてはいるが、完全な自由競争あるいは一般雇用市場で勝ち抜いていけるという自信もないようです。心底自分たちは優れていると思っているキャリア官僚の多くは天下りなどせず、比較的早く退職してしまいます(やめる理由はそれだけとは限りませんが)。

今、キャリア官僚の天下りの弊害を除去するため、各省の官房が行っている、キャリア官僚OBの人事管理権限を取り上げ、官僚の再就職の斡旋をする「官民人材交流センター」というようなものを設立しようという構想があります。

もし自由市場で価値がある人材なら、ヘッドハンターなどからしょっちゅう声をかけられるはずで、そんなセンターは必要ないでしょう。必要もない人を雇わせようとするので、何らかの権限を行使する必要があるわけです。

今ではさすがにあまり言わなくなってきているのではないかと思うのですが、高級官僚の天下りの際、受け入れの民間企業は個室、秘書、車の三点セットを要求されました。これらは普通のサラリーマンでも夢としては望むものですが、天下り官僚の場合は多少切実な意味があります。

民間企業に行って、他人に交じって働くのはそれほど心易いものではありません。物理的に個室があれば、隔離されて気分的にも安心です。大体天下りした人は仕事など、ほとんどないことが多く、遅出、早退、居眠りが気楽にできることは重要です。

会社の内外との連絡も秘書がいれば自分であれこれ手配する必要もありません。話し相手にもなりますし、何かもっともらしい資料を作ることも自分でする必要がありません。車もよその会社を訪問して会社の外でタクシーを拾うようなみっともないことはしたくない、というのが本音でしょう。

多少漫画的に言っていますが、多くの天下り官僚が仕事の実質ではなく体裁、見た目の方がずっと大切だというのは本当でしょう。人事異動は勤め先の上司(いればの話ですが)ではなく、古巣の官房が行い、官房は処遇のバランス、前例の踏襲をもっとも重んじますから、よほどの酔狂でない限り、勤め先で実績をあげようと必死になるインセンティブは働きません。

これではかつて青雲の志と憂国の情にあふれたキャリア官僚が、民間企業や外郭団体に寄生して、体の良い飼殺しになるようなものですが、年を取って今さらチャレンジする気持ちがなくなった元キャリア官僚にとっては、自分はxx社社員でなく、xx省OBだというプライドと、高く安定した処遇で満足しようということでしょう。

以上は非常に悪い例だけを言っているかもしれませんが、典型的な天下りの現状でもあります。しかし、天下り禁止法案のようなものを作ろうと作るまいと世の中は急速に変わってきています。

まず、民間企業は国に頼る必要がなくなってきています。製造業はもちろん、かつては護送船団方式で守られていた金融機関も競争原理で動くようになり、天下りの先としてはか細くなっています。

民間企業が天下りを受け入れなくなってきている状況はずいぶん前からあり、その対抗策として天下りを目的として各省庁は沢山の外郭団体、特殊法人を作ってきました。それらの法人は民間企業と比べれば圧倒的に非効率なのですが、税金をつぎ込んだり、法的な特権を保持したりして存続しました。

このような状況は国家のために働くべき官僚が、国家を自分たちのためのサービス提供機関としてしまっているわけですから、とんでもないことです。民間企業への天下りも、それによって国からの事業を有利に獲得する方策になっていれば、広義の汚職行為です。

天下りという特権を保持しようという官僚の抵抗は、天下りの利益があまりに大きいため、きわめて強く続くでしょう。しかし、全体的に見れば、民間企業の政府依存の低下、国の事業予算の縮小と透明化により、天下りが社会から受け入れられなくなるのは、法律の有無とは関係なく間違いないでしょう。

天下りが本当に中央省庁の基本的人事システムとして機能しなくても、最優秀の学生はキャリア官僚を目指すでしょうか。この面でも、崩壊現象は進んでいます。昔ならキャリア官僚を目指したような多くの優秀な学生は、外資系コンサルタント会社、金融機関、法科大学院などに進路を変えています。

天下りというのは、日本の中央政府が置かれていた社会的な役割、構造に根差すもので、天下りだけを禁止しようというのは、無理な話でしょう。天下り禁止に反対する人の言うように、確かに職業の自由は無視してはいけません。

しかし、天下りできないのなら、人事の逆転を甘受した上で、国家公務員のままで勤務を続けてもらおうというのなら、キャリア制度そのものを見直すべきでしょう。もともと、キャリア制度は大卒が社会のごく一部だった時代の名残りなのです。

国の施策を考え、施策実現の枠組みとしての法律を作成するというのは、本来は国会議員の仕事のはずで、この点はアメリカの国会議員が沢山のスタッフを抱えるような体制に変わる必要があるでしょう。

同時に、中央省庁として優秀な人材が必要なら、それこそ「官民交流センター」のように、官と民の人材交流が行われるべきでしょう。アメリカでは中央省庁の課長クラス以上、1万人程度の高級官僚は政治任命(Political Appointee)として政権交代と同時に異動します。

ただし、政治任命については当のアメリカで批判が強いことは指摘しておくべきでしょう。政治任命の反対者が反対の論拠として挙げるものの一つに、軍は政治任命などなく、すべて生え抜きで構成されているということがあります。

つまり、専門性が高く、高度の組織への忠誠心が必要な職種は、生え抜きの方がうまくいくというのです。中央省庁のどのような仕事がそれに該当するかわかりませんが、多くの場合そのような専門性が高い仕事は現在はノンキャリアや技官が行っていて、一般のキャリア官僚は、次から次へとポジションを移るゼネラリスト志向です。

天下り制度は、民間企業の政府依存、最優秀学生の採用のような土台が崩れてきており、早晩崩壊は免れないでしょう。天下りのための莫大な国家予算の不効率な支出、外郭団体を守るためにある不合理な規制など、さらに本来は優秀な人材を無為に過ごさせるなど、天下りによる不経済はあまりにも明白です。

ただし、前述のように天下りだけを取り上げて、事態を改善しようとしても、複雑な事情がからみあってなかなか解決には至らないでしょう。何といっても、日本はアメリカではなく、アメリカは日本ではないのです。

それでも、キャリア官僚が今や構造不況業種になってきていることは間違いありません。金を稼ぎたい人はビジネスや起業を、国家を変革したい人は政治家をそれぞれ志した方がこれからはよいでしょう。いや、官僚も本人たちには一つのビジネスであるかもしれないのですが。(続き
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