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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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危機管理
Kennedyincubancrisis.jpg
キューバ危機のケネディー大統領

「危機管理」という言葉が最近よく聞かれます。経営者に自社の問題点を聞くと、戦略と危機管理の欠如があげられたりします。それでは危機管理とは何なのか、何をすべきなのかと聞くと答えは必ずしも一様ではありません。危機管理について少し考えてみましょう。

危機管理とリスクマネージメントは違う

危機管理とよく似た言葉でリスクマネージメントがあります。危機管理を英語に訳しただけのようにも思えますが、危機管理の英訳はクライシスマネージメント(crisis management)です。

リスクマネージメントとは将来起こる可能性のあるリスクを予想し対策を予め立てておくことです。もし、完全なリスクマネージメントというものがあれば、危機は発生しないか、発生しても整然と決められた手順で完結することができます。

リスクマネージメントで大切なことは、可能性のあるリスクをできるだけ網羅的に予想し、リスクの影響、確率、対策を見極めることです。リスクマネージメントでは客観的で分析的な能力が重要です。リスクマネージメントでリーダーのするべきことは、リスクを無視せずきちんと対応策をつくる組織文化と仕組を作ることです。

これに対し、危機管理はリスクと想定されたこと、あるいは想定もされなかった事態が発生したとき、どのように問題を解決するかということです。危機管理では分析的な態度だけでは状況に対応できません。リーダーは決断力とリーダーシップが要求されます。

管理上の手法やリーダー、マネージメントの資質という観点から考えると、危機管理とリスクマネージメントは正反対とは言わないまでも、非常に異なったものだということができます。

重大な事態だから危機管理が有効とは限らない

危機管理は、企業、国家などの組織の存亡に関わる重大事件に対処することだと言われています。しかし、重大な事態だからと言って必ず危機管理の対象にはなりません。

日本では1年で交通事故で7千人程度の人が亡くなっています。膨大な人的損失があるわけですが、だからと言って交通事故対策は国家としての危機管理の対象にはなっていません。これは交通事故では日本という国家が崩壊しないから、というわけではありません。

もし高速道路のトンネルで大火災が起きて、300人の犠牲者が発生するようなことが起きれば、これは危機管理の対象でしょう。7千人という数は大変大きな数なのですが、1日平均20人程度の交通事故の死者は、通常のプロセスで処理するものだということになっているのです。

地球温暖化も危機管理の対象ではありません。地球温暖化は最悪のシナリオだと人類文明全体が崩壊してしまう危険があるのですが、短期的に解決できるものではなく、長期的な視点と粘り強い努力によって対応すべきものです。危機管理に解決を求めるようなものではないのです。

危機管理は通常の意思決定プロセスが機能しない問題に対応すること

それでは危機管理とはどのようなときに必要になるのでしょうか。企業でも国家でも組織は、目的を達成するためは膨大な業務プロセスがあり、そこで無数の意思決定が行われています。危機管理が必要になるのは、既存の業務プロセスで行われる意思決定に任せることができない問題に対処しなければいけないときです。

1982年、アメリカのシカゴでジョンソン・エンド・ジョンソンの主力商品の一つの鎮痛剤タイレノールを服用した7人が青酸カリ中毒で死亡するという事件が発生しました。

ジョンソン・エンド・ジョンソンは直ちに3,100万個におよぶタイレノールを市場から回収し、タイレノールの広告宣伝も全て中止しました。この時点で、青酸カリがタイレノールのカプセルに混入されたのは確かでしたが、犯人はもちろん、どの程度の範囲でこのような犯罪行為が行われているかは全くわかりませんでした。

ジョンソン・エンド・ジョンソンの損害は直接の製品の処理だけで1億ドルに達しました。その後ジョンソン・エンド・ジョンソンはタイレノールのパッケージを一新し青酸カリの混入を行うことを事実上不可能にした上で、タイレノールの販売を再開しました。

タイレノールに青酸カリを混入した犯人はついに捕まりませんでしたが、タイレノールは市場の信頼を取り戻し、ジョンソン・エンド・ジョンソンの対応策は危機管理の模範的な事例として記憶されることになりました。

もし、ジョンソン・エンド・ジョンソンがタイレノールの回収、販売、流通の一切の停止という決断をトップダウンで行わなければ、どうなっていたでしょうか。タイレノールの生産、出荷、在庫管理などの業務は通常通り行われていたでしょう。個々の業務の担当者はそれが決められた仕事で、それ以外の個別に事件に対応することは不可能だったはずです。

ジョンソン・エンド・ジョンソンは全製品の回収を決定することで、通常の業務プロセスで行われる意思決定を停止し、すべての判断をトップダウンで行えるように業務プロセスを変えてしまったのです。

情報と権限を集中する

危機が発生したとき問題になるのは、そもそも一体何が起きたのかが、すぐにはわからないということです。たとえば工場で爆発事故があったような場合、爆発の規模、死者の有無、原因などの情報を混乱した状況で直ちに正確に得ることは難しい場合が多いでしょう。

何が起きたか全貌がわからないまま、既存の業務プロセスが勝手に動き出し、個別に意思決定や外部への情報提供を行うと、混乱に拍車がかかり、後々訴訟などで不利な立場追い込まれる危険もあります。

先ず必要なことは、既存の分散された意思決定と業務プロセスと情報を集中することです。これは通常の効率性の観点からは好ましいことではありません。場合により事業活動は事実上停止を余儀なくされるでしょう。逆に通常業務と意思決定を停止する必要がなければ、本当の意味で危機とは言えません。

優先順位を決める

危機が発生したときに行う意思決定は、迅速に、しかも限られた情報で行うしかありません。後から考えればもっと良い方法があったとわかるかもしれませんが、意思決定の遅れは、事態を一層致命的にしかねません。

そこで、何を優先させるべきかを、はっきりさせて迅速に意思決定を行うことが非常に重要になります。ところが、一般に通常の業務プロセスは、効率性や経済性の追求に重点を置いており、危機的な状況での判断基準としては妥当でないことが少なくありません。

ジョンソン・エンド・ジョンソンのタイレノール事件のとき、在庫の損失や、工場での品質管理の確かさなどを基準に判断を行えば、市場から全ての製品を引き上げるような決断には至らなかったでしょう。その場合は製品だけでなく企業の信用が大きく傷つく結果になったと想像されます。

1994年11月、インターネットでインテル社の主力MPUであるペンティアムで浮動小数点の演算で計算間違いをする可能性があるという情報が飛び交いました。当初インテル社は、計算間違いは極めてまれなケースだとして、「ユーザーが影響を被ると証明できたときのみ」MPUの交換に応じるとしました。

ところが、インテル社がI計算間違いは2万7千年に一回程度しか発生しないと発表したのに対し、IBMが24日に1回エラーを起こすような表計算の事例を明らかにするなど、ユーザー、業界全体がインテル社の総攻撃にでるような事態になってしまいました。

インテル社は翌月、全てのペンティアムチップの交換に無条件に応じると発表することで事態はようやく沈静化しました。実際に交換を申し込んだユーザーは少なく、交換自身の経済的損失は小さいものでしたが、インテル社はPCのMPU市場を事実上独占する立場にアグラをかいた傲慢な会社だという印象を与えてしまいました。企業の信用は大きく傷ついてしまったのです。

ユーザーが交換を要求した例が少なかったことから考えても、技術的にはインテル社の主張は正しかったと思われます。しかし、「影響を自分で証明できれば交換する」という態度が、社会的には受け入れられなかったのです。意思決定が普通の経済的、技術的判断に基づいていたので、独占企業として社会で高いレベルの責任を負わされていることに十分配慮ができなかったのです。

危ないのは企業のトップではなく、たとえば専務あたりが危機管理の総責任者になる場合です。トップでない人間はトップにしか許されない意思決定はできません。本当の意味で危機に対して正しい優先順位に従った意思決定ができない可能性があります。

さらに、情報の一元化の観点でも危険があります。危機管理の対策室に社長秘書から電話がかかり「状況を社長に教えて欲しい」と言われ、発表している事実を超えて情報が社長に伝わり、それを社長が勝手に記者しゃべるようなこともあり得ます。危機管理は基本的にトップだけが陣頭指揮に立てるものなのです。

キューバ危機

1962年10月22日、アメリカのケネディー大統領はテレビでキューバにソ連の核ミサイルが持ち込まれたことを発表しました。いわゆるキューバ危機です。1959年にキューバで社会主義革命を行ったカストロ政権はソ連と接近し、アメリカと目と鼻の先のキューバにソ連のミサイルを設置したのです。

テレビ放送の前、10月16日にキューバーでのミサイル設置をU-2型偵察機からの撮影により確信したケネディー大統領はエスコム(ESCOM: Executive Committee of National Security Council大統領国家安全保障会議)を組織し、危機管理体制を確立します。

国連でのU-2型偵察機による写真の公開、さらにU-2型のソ連軍の対空ミサイルによる撃墜など緊迫の度合いが高まる中、エスコムの軍首脳、CIA幹部の多くはキューバへの大規模な空爆ないし全面侵攻を支持しました。実はアメリカはキューバの核ミサイルは僅かしか設置されていないだろうと推察していたのです。

結果としてケネディー大統領が選択したのは、空爆でも全面侵攻でもない第3のオプションであった、キューバの海上封鎖とソ連船の臨検でした。そしてぎりぎりの交渉が続いた後、10月28日ソ連のフルシチョフ書記長はキューバからの核ミサイル引き揚げアメリカに通告し、キューバ危機は終結しました。

キューバ危機の真相は冷戦終結後明らかになりました。当時のアメリカの推察とは異なり、キューバにはすでに数十基の核ミサイルが設置済みだったのです。もし、全面侵攻や空爆が実施されれば、アメリカの大部分の都市は水爆により破壊しつくされていたでしょう。

ケネディーがなぜ軍首脳の進言にもかかわらず、選択肢の中でもっともおだやかな海上封鎖(ミサイルがすでに設置済みだったので、実際には意味がなかったのだが)を選択したかは定かではありません。

おそらくケネディーは直ちに軍事行動に移る前に、できるだけ段階を追った交渉を行いたいと思ったのでしょう。海上封鎖が効果があれば、少なくとも時間が相手を利するということはありません。

冷戦時代のアメリカは核戦争の脅しに屈し、ずるずる妥協を続けることは避けなければいけないという思いが強くありました。もし、強気で攻められて簡単に引き下がっては、アメリカが共産主義と戦い続ける意志がないとみなされることを恐れたのです。そうでなくても、単純な平和主義や弱気は外交で大きな失敗につながる可能性があります。

ケネディーは交渉を続けながら、全面戦争から逃げ出すようなことはしないという意志を見せる必要がありました。そのためには強硬派の軍の意見に従うことのほうが簡単だったかもしれませんが、ケネディーはそうしませんでした。

キューバ危機ではケネディーは賭けに勝ちました。それは実際にはケネディーがそのとき思った以上の価値ある勝利でした。今にして見れば、人類は破滅から免れることができたのです。

余談ですが・・右脳と左脳

最初に書いたように、リスクマネージメントでは分析的な能力が重要です。これは左脳が受け持つ領域です。危機管理は不十分な情報の中で全体的なバランスや直感で判断をする必要があり、これは主として右脳の領域です。

企業や官僚組織で出世する人は得てして左脳つまり分析思考に優れたタイプです。極めて左脳に偏った能力を持つ人がたまたま危機管理を行う状況になると、不十分な情報で果敢な意思決定を行うことができない可能性が高くなります。

誤解を受けそうなので、あまり深入りはしませんが、一般に男性は左脳の能力、女性は右能の能力が優れていると言われています。「いざとなると女のほうが落ち着いている」と言ったりしますが、脳生理学的には正しいのかもしれません。
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