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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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わかっていても
福田辞任

総選挙では皆4匹の兎を追う

福田首相が辞任してしまいました。「びっくり」と「またか」の感想が入り混じっていますが、どうも自民党総裁選挙、首班指名と来て、やはりここは総選挙で民意を問うという流れになりそうです。

一寸先は闇という政界ですから、何が起きるかわからないのですが、とにもかくにも総選挙ということになると自民党か民主党か、どちらかを中心とした政権が誕生するはずです。第3の道として大連立という選択肢もあるのですが、それはなさそうです(もちろん、何が起きるかわからないわけですが)。

しかし、今自民党と民主党が総選挙を行うと、何が争点になるのでしょうか。「どちらが国民の目線で、国民のためになる政治をするのか」では政党選択の基準としては同義語反復でしょう。

争点としては無意味に近いのですが、テレビも新聞の「そこが一番大事」といつも言っていますから、同義語反復の科白をどちらが、より大声で叫ぶかが勝敗の分かれ目になるのでしょうか。

自民党と民主党も1.国民の福祉を向上させ、2.経済を好転させ、3.消費税は上げず、4.財政は再建すると言っているように聞こえます。政策の実現可能性は別として、基本は「4兎を追う」ということのようです。

そんなことはできるはずはないと、おそらく日本国民の大部分は思っているのですが、あれも嫌これも嫌と言っているうちに、こうなってしまいました。

ただ、この4つが同時に成立するのが数学的に不可能と証明されているわけではありません。現に戦後の高度成長期の日本はまさに、消費税なしで、赤字国債の乱発もなく、好景気のもと福祉はどんどん向上して行ったのです。

いくら少子高齢化といっても、国家は人間と違って、生理的老化が運命付けられているわけではありません。「夢よもう一度」と考えても良いのかもしれません。

自民党の「上げ潮路線」を提唱しているグループの主張はある意味、合理的に「4兎を追う」という主張です。ただ、上げ潮派も前提となる経済の高度成長を実現する明確な具体論を持っているわけではありません。

しいて言えば、「規制緩和」ですが、郵政の民営化でもあの騒ぎでした。政府系金融機関の統合くらいでも、官僚との命がけの激突は避けられませんでしたし、まして廃止ともなればなおさらです。農業の規制緩和や自由化にいたっては、まじめにやれば首相のくびがいくつあっても足りないでしょう。

ということで、5.規制緩和はそこそこにして、場合により昔に戻すという、5匹目の兎も追い駆けようということになります。ここまでくると、高度成長期を含めても実例は見当たりません。高度成長期には少なくとも産業界は自由化を進めました。

政策が同じになる理由をゲーム理論で考えると

皆バカバカしいと思いながらも4匹も5匹も兎を追っ掛けるフリをする羽目になるのは、民主主義である以上、ある程度しかたのないことなのですが、二大政党制は一層その傾向を強める働きがあります。

今、町の端から端、A点とB点を結ぶ1本の道沿いで、屋台のラーメン屋を開くとしましょう。端から端まで歩いて30分くらいなら、どこに店開きしても、そんなに繁盛の程度は違いないでしょう。そこで、A点から5分くらいの場所に店を開くことにします。

ところが今競争相手が現れて、A点から6分のところに店開きをしたとします。そうすると、新しい屋台はB点から自分の屋台までの人は皆奪うことができます(屋台の味や値段の差はないとします)。

前からの屋台はA点から自分の屋台までの客と、新しい屋台との中間の客までしか奪えなくなります。これでは困るので、前からいた屋台はA点から7分のところに屋台を移動します。

そうすると新しい屋台はA点から8分のところに屋台を移動します。このようなことを繰り返すと二つの屋台はどちらもA点から15分、A点、B点の中間地点に店を置くことになります。

これはどちらの屋台にとってもベストの戦略ですが住民にとってはベストではありません。本当はA点から10分、B点から10分のところに、それぞれ屋台を開いてもらうのが一番良いのですが、屋台にとって大切なのは自分の商売で、住民の便利さではありません。

二大政党制では様々な意見の中央にどちらの政党の政策も収束する傾向があります。とは言っても、消費税を25%にして北欧型の高福祉社会を作るか、アメリカの共和党右派のように防衛以外は福祉であろうと企業救済であろうと連邦予算は一切使わせないという、本来の両端が示されているわけではありません。

中間点もそこそこの税率で、そこそこの福祉になるはずですが、実際には自民も民主もいかにも4匹の兎、つまり税金は少なく、福祉は大きくを追っているような態度を取ります。

選挙でおいしいことばかりを言うことこそ、まさに「国民を目を向けた、国民目線の政治」に他なりませんから、一概に責めるわけにもいかないのですが、選挙の後、A点、B点どちら寄りに屋台の店開きをするのかは、本当は知りたいところです。どんな政策でも、必ず損をする人得をする人は出てくるはずだからです。

奇跡を期待するより、現実的な政策を

実際に4匹とか5匹の兎を一度に捕まえることはできるでしょうか。高度成長はその答えの一つですが、年間10%の成長を実現する政策は思いつきそうにありません。

思いつかないのなら、高負担、高福祉か低福祉、低負担か、あるいはその中間かの選択をオプションとして提示するのがまっとうなやり方というものでしょう。そんなことは自民党、民主党どころか社民党、共産党にもありません。実のところ、外交防衛問題を除けば、どの政党も4匹兎を追い駆けますと言っているのです。

4匹の兎の中では「財政再建」だけを単独で取り上げるのは無意味です。つまり、財政赤字をなくしたいのなら、税金をバカ高くするか、歳出を福祉だろうと防衛だろうと何もかも切り捨てればよいのです。高福祉、低福祉の選択なしで財政のことだけ切り離しで議論するのは家計と国家財政を混同しているとしか思えません。その気になれば、少なくとも当分は借金は続けられます(借金なんか怖くない)。

経済活性化の議論も本質的ではありません。景気が悪いとき、政府支出で有効需要を作り、景気が良いときは、逆をして過熱を防ぐというのは、普通の経済政策です。公共事業をどこまで行うのかという、方法論は議論は分かれますが全体から見ると枝葉末節です。

多分、高福祉高負担、低福祉低負担のどちらが絶対的に正しいということはないでしょう。生活保護を冷たく打ち切られて飢え死にしてしまうような状態と、働かないで遊んでいたほうが得になるような状態と、どちらかが正しいというものでもありません。

政策は行きつ戻りつしながら、片方に振りすぎるのを修正するのが結局はうまくいく、というのが二大政党制の根幹でしょう。皆が4匹あるいは5匹の兎を追い駆けているのは、制度が機能していない証拠です。

残念ながら、無理だとわかりながら、まじめな政策論議は横において、口当たりの良いことを皆等しく言うのが今の状況です。兎が4匹とも捕まる奇跡は起きないでしょう。日本は本当にもうダメなのかもしれません。

以下の記事もご参照ください
社旗福祉は最大の景気刺激策
日本は大企業病
天下りを考える
高福祉それとも低負担
また公共投資ですか
借金なんか怖くない
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