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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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奇策ではない高速道路無料化論
高速道路

高速道路は公共財?

民主党はマニフェストの中で、都市部を除く高速道路の無料化を主張しています。例によって無責任な野党による、財源の裏付けのない単なるバラマキと思う人も多いのですが、他の政策は別にして、高速道路の無料化は、ただのバラマキとは違った意味合いを持っています。

防衛のように、対価を支払う支払わないに関係なく、誰もが同様な便益を得られるものを公共財と言います。公共財は自分が対価を負担しなくても提供されますが、皆が利己的に負担をしようとしなくなってしまうと、維持することができなくなってしまい、全体の利益が損なわれてしまいます。

そこで、公共財の提供には税金などの形で強制的に皆から費用を徴収することが必要になります。道路は公共財の中で、防衛と並んでもっとも一般的な例とされています。皆が道路の建設費を負担しない、あるいは自分の使う道路しか対価を支払わないと言い出すと、道路はつながらず、役に立たなくなってしまうからです(なぜ救急車はタダなのか)。

ところが、日本では高速道路に世界でも類を見ないほど高額の通行料が求められます。なぜ、これほど高額なのかという理由は、高速道路の建設のために要する多額の費用を捻出するためと、高速道路という便益を享受する受益者負担が必要と説明されています。

高速道路が受益者の負担を求め、それにより建設、維持されるのなら、もはや公共財とは言えなくなります。しかし、高速道路の公共的な性格は明らかです。高速道路は物流の要ですし、自動車が広く普及している日本では、特権階級のために存在しているわけではありません。

にもかかわらず高速道路に高額な通行料を支払わせるのは、税収の乏しかった日本で高速道路建設を行うために、平均的日本人よりはるかに金持ちだった自動車の持ち主から、税金の代わりに受益者負担の名目で第二の税金として高速道路料金を徴収しようとしたからです。

当初は第二の税金の高速道路料金は、高速道路は公共財だという原則により、建設費に要する費用が回収された後、無料化される予定でした。ところが、道路建設を持続的に続けることが政治基盤維持の道具になった自民党と、高速道路を天下り先確保のために使う官僚とが、第二の税金の高速道路料金をなかば恒久化してしまったのです。


第二の税金は財政規律を失わせた

高速道路を税金で建設すると、採算性を無視して建設を推進する。つまり、財政規律を失わせるという意見があります。無視できない心配ですが、少なくとも高速道路を第二の税金である高速道路料金で建設するという方法は、結果的には財政規律を失わせました。

税金で高速道路の建設を行うと、そのための予算は他の省庁との奪い合いになります。あまり感心した状況とも言えないのですが、税金の奪い合いはある種の相互牽制が働きます。

ところが、高速道路料金のような第二の税金は、使途が最初から決まっているため、国会のチェックも、他の省庁の相互牽制も働きません。結果は、道路需要とは無関係に、もくもくと組織の生存目的と、票の獲得のために高速道路を造り続ける結果になってしまいました。

財政の規律が失われたのと同様に、高速道路が高速道路公団により、独立した事業のような体裁で建設、維持された結果、膨大な公団ファミリー企業が誕生してしまいました。

これらの多くはサービスエリアのレストランなど、独占的な商売を行うことで、ほとんど不当と言ってよい利益を上げてきました。もちろん、公団ファミリーの企業は国交省、公団職員の格好の天下り先でした。

過去の借金は埋没コスト

高速道路建設は主として借入金で行われ、その残高は40兆円に達しています。高速道路の無料化で問題になるのは、この借金返済をどうするかということです。

借金は何らかの形で返済しなくてはいけないのですが、その原資を税金にするか、第二の税金である高速道路料金にするかは、単なる選択の問題です。

ここから先は民主党の説明が詳しいのですが、高速道路が無料化されれば、インターチェンジの建設や料金所の維持にかかる費用が削減され、利便性を大幅に高めることができます。

高額な高速道路料金が問題なのは、ただでさえ利用者の少ない地方の高速道路の利用者がますます少なくなってしまうことです。完成した高速道路の建設費は借金であろうとなんであろうと、もう使ってしまったお金です。

すでに支払ってしまった費用は埋没コストとよばれます。埋没コストは節約も削減もできません。経済的にはできもしない節約ではなく、埋没コストで得た資源を有効に使うことが必要です。ところが、人間は心理的に埋没コストにこだわって、このような当り前の判断ができない傾向があります。

高速道路の借金は埋没コストです。建設費の借金の返済方法を考えなければ、使えば使うほど資源としての有効利用が行われることになります。高額な料金のために、高速道路の使用は抑制されて、資源の有効利用が妨げられているのです。

高速道路を無料化しても交通量が増えるだけ?

高速道路無料化への反論として、高速道路が無料化されても交通量が増えて渋滞が起き、無料化の効果が減殺されてしまうというものがあります。

これは交通量の多い、たとえば首都圏ではその通りかもしれませんが、交通量の少ない地方では正しくありません。どう転んでも渋滞が起きるほどの交通量はないのです。

交通量が増えて、渋滞が発生すると予想されるところはどうすればよいのでしょうか。高速道路の利便性を確保したいのなら、料金を徴収すればよいでしょう。これは無料化政策と矛盾するものではありません。

ニューヨークやロンドンは車での乗り入れに対し料金を徴収します(高速道路ではなく橋などの通過時に料金を課しています)。渋滞が社会的損失を招くと判断すれば、料金を徴収して需要を抑制するのは正しいことでしょう。

現在の高速道路には「埋没コスト」としてETCの料金徴収システムが完備しています。ETCを活用すれば、時間帯に合わせて、きめ細かく料金を変えることができます。昼間の料金を高く、夜間を安く設定して、高速道路の利用率を平準化できれば、渋滞に合わせて高速道路に過大な投資を行うことも避けられます。

地方では狭い一般道が混み合って、高速道路がガラガラという光景もよく見られます。一般道の渋滞を解消するために新たな道路建設を行うより、高速道路の利用率を上げた方が経済的なのは明らかでしょう。

もし、それでは高速道路が混みすぎそうなら、ETCで渋滞時に料金を徴収すればよいでしょう。要は、高速道路、一般道路全体で地域経済に最適な通行量の制御を行うことが大切で、無料か有料だけに焦点をあてて議論することは、あまり意味はありません。

無料化は二酸化炭素を増加させるか

高速道路を無料化すると、輸送方法が環境負荷の低い鉄道から、トラックや自家用車にシフトするという懸念もあります。

しかし、二酸化炭素は高速道路を走る時だけでなく、一般道を走行しても排出されます。また、自動車だけでなく、様々な生産活動、消費活動でも二酸化炭素は排出されます。

二酸化炭素の排出量の削減を高速道路の料金に依存するというのは、目的に対し正当でもないし、多分有効でもありません。距離当たりの燃料消費は渋滞のある一般道の方が、高速道路より大きいのです。

鉄道からトラック、自家用車への移行で二酸化炭素が増えるのを気にするのなら、高速道路料金という形ではなく、もっと直接的に環境税、炭素税という形で徴収すべきでしょう。

環境のことを考えなくても、高速道路を無料化すればその分、何かで補う必要はあります。一つは単純に道路建設を減らすこと、もう一つは税金を投入することです。環境税をそれに利用するのもよいかもしれません(ただし、道路特定財源のような目的税化は絶対にいけません。予算の執行は必ずチェックが働く、一般財源にすべきです)。

奇策はむしろ高速道路の民営化

資源の有効利用を妨げてまで、高速道路が有料化されてるのは、高速道路は公共財という現実を無視して、テーマパークと同じような収益獲得の手段だという建前があるからです。高速道路の民営化は、その建前で行われました。

高速道路はイギリス、ドイツなどヨーロッパ諸国やアメリカでは民営化どころか、ほぼ無料です。ただ、1999年にイタリアの高速道路が民営化されたほか、スペインの高速道路も民営化されました。また、フランスでも民営化は議論になっています。

実はドイツも高速道路の有料化はトラックに対し最近行われるようになりました。アメリカでも有料部分の増加が行われています。

これらは、財政のひっ迫で、これ以上の税金を徴収するのが政治的に困難という理由が大きいと思われます。 また、ドイツはトラック輸送を減らしたいという環境上の配慮があります。

しかし、高速道路の民営化は高速道路は公共財という前提に立てば、無理があります。公共財は誰でも利用できますが、多くの場合独占的に供給され、競争状態にはありません。防衛に金を払えと言われたら、いくら払えばよいのでしょうか(実際は命も含めて何もかもになることも多いのですが)。

高速道路も鉄道や航空機と競合している部分もありますが、複数の高速道路が競争しているわけではありません。独占的な立場の企業が、完全に民間企業の論理で運営されれば、内部的な企業努力より、値上げで利益を確保しようとするでしょう。現にイタリアでは民営化以来高速道路料金の値上げが続いています。

結論を言えば、高速道路の民営化こそ奇策です。日本では民営化によって効率化され、高速道路料金が安くなるという理屈ありましたが、もともと競争のないところで民営化しても効率化へのインセンティブは働きません。

民主党の高速道路無料化政策に対し、自民党でも高速道路の大幅引き下げが議論になってきました。選挙前の数あるバラマキの一つなのかもしれませんが、民営化で効率化するなどという幻想を振り撒くより、ずっとましです。バラマキも時には世の中を良くすることがありそうです。

続く

追記:
高速道路の無料化論については山崎 養世氏の論文から多くの情報を得ました(高速道路の借金爆弾を処理せよなどをご参照ください)。

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この記事に対するコメント
最初の写真について
素晴らしい文章だと思います。
ところで、表紙(?)の写真って何処ですか?
高速道路が無料化されれば是非走ってみたい素晴らしい景色だと思いますが。
【2011/11/05 20:19】 URL | レンソイス #- [ 編集]


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