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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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The Next Wave: インターネットの次に来るもの(4): 進化
続き

誰もインターネットを設計していない

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ボブ・メトカーフ


ボブ・メトカーフはコンピューター・コミュニケーション技術の巨人ともいえる存在です。メトカーフはLANネットワークの業界標準になっているイーサネットの発明者であり、ネットワーク機器の大手の3Com社の創立者でもあります。「ネットワークの価値は接続ユーザー数の二乗に比例して増加する」という、メトカーフの法則の提唱者としても知られています。

そのメトカーフはInfoWorldの1995年12月4日号のコラムで「来年中(1996年)にインターネットは増加するユーザーを支えきれずにネットワーク全体が崩壊するだろう」との予想を行います。メトカーフは同じ月のWWW国際会議のスピーチで「もし私の予想がはずれたら、InfoWorldに書いた自分のコラム記事を食べてやる」と見得まで切りました。

しかし、メトカーフの予想はあたりませんでした。メトカーフがコラム記事を本当に食べたかどうかは不明ですが(5年後のWWW国際会議でメトカーフは「もうコラム記事を食べたくないので、予想に賭けるようなことはしない」と言っています)、インターネット全体が崩壊するようなことはなかったのです。

メトカーフは根拠のないことを言ったわけではありません。1995年からインターネットを流れるデーター量は爆発的に増加を始めます。その流れはマイクロソフトのあるシアトル地区を始め、いくつかの箇所に集中していました。コンピューターネットワークだけでなく、道路でも電力網でもネットワークの形状をもっているシステムで、これは好ましくない状態です。拠点のいくつかが増加するデーター量に対応できず立ち往生すると、ネットワーク全体が機能不全になることは十分にあり得ることでした。

メトカーフの予想を覆したのは、インターネットの将来に対する期待から出た膨大な投資です。電話会社やインターネットプロバイダーがインターネットユーザーの増加を見込んで容量の大増設を行ったのです。期待に応えるように、インターネットのユーザー数の増加は驚異的でした。1995年末にはすでに1,600万人のインターネットユーザーがいると見積もられていましたが、その数は1998年には1億を突破します。インターネットユーザー数の増加の勢いは過去のラジオ、電話、テレビなどと比べられましたが、スピードはずっと早く、早晩世界中の人々がインターネットにアクセスするようになると考えられました。インターネットは人と物の流れを大きく変えたの19世紀の鉄道ブームとも比較されました。鉄道ブームが産業革命を支えたように、インターネットは第2の産業革命を引き起こすと言われました。

Wroldwideweb.jpg


インターネットを使えば、どんな小さな会社や個人でも、世界中を相手にしてオンラインで商取引が行えます。インターネット以前は、強力なコンピューターネットワークを持つこと自身が企業の競争力の一つと考えられていました。インターネットを使って、新しいビジネスモデルを構築するという「ドットコム」企業が次々に現れ、インターネットを使うというだけで先進企業として株式市場で人気を呼びました。ピザの注文をインターネットで行って届けるだけの商売が、「新しいビジネスモデルを創造した」ともてはやされました。

初期のインターネットを使ったビジネスで話題を集めたものに、ジーンズメーカーのリーバイ・ストラウスのネットでのジーンズ販売があります。リーバイスは一度来店した顧客を採寸して、その後はインターネットでジーンズを注文できるようにしたのです。これで顧客は来店することなく自分にぴったりのジーンズをいつでも注文できますし、店側は在庫を持つリスクなしでジーンズを販売できます。

良いことずくめのようですが、問題がありました。注文に応じでジーンズを裁縫する製造システムができていなかったのです。問題点は明らかでした。いくらインターネットを使って受発注を合理化しても、製造、調達などの内部プロセスがそれに合わせて合理化できなければ、インターネットの効果は限定的だということです。

しかし、新興のネット企業と既存企業のどちらが勝つか「クリックかブリック(煉瓦:既存企業の象徴)という議論は、本格的にインターネットの活用を行うアマゾンドットコムのような企業が現れることではっきりしました。アマゾンドットコムは巨大な倉庫と物流システムをネット発注を組み合わせることで既存の書店を打ちのめしてしまったのです。インターネットをうまく活用できれば、全く新しいビジネスモデルを作ることができるのです。

PCメーカーのデルもインターネットを全面活用することで、販売チャネル維持の負担を減らしながらシェアの拡大を行いました。ネットで顧客は好みに応じてPCの仕様を決め、デルは素早く注文に応じた製品を製造し顧客に直接届けましたが、それには需要予測、部品の調達、物流基地での製品組み立てなど多くのプロセス実行のイノベーションによって始めて可能なものでした。

インターネットがますます社会に深く浸透する中で、メトカーフの予言の悪夢が再び頭をもたげてきました。コンピューターの2000年問題です。英語でY2K(2000年Year 2000(2K))と呼ばれた、この問題の原因は単純なものです。 コンピューターのプログラムでは1995年10月15日を951015のように西暦の最初の2ケタを略することは一般的でした。このような表記は普通問題になることはありませんが、1999年から2000年の境目ではトラブルを起こす可能性があります。コンピューター処理で見掛け上時間の流れが逆転することで、ローンの返済、到着順の優先順位などを行う種々のプログラムが影響を受けます。コンピューターはあらゆることろで使用されているので、電力供給システムがストップしたり、果ては防衛システムのエラーで核戦争の起きることまで懸念されました。

結果的には人類は西暦2000年を無事迎えることができました。しかし、それは決してY2Kが空騒ぎだったからではありません。Y2Kの解決のためのプログラム修正に世界中で多分数兆円と言う巨額の投資が行われ、何とか事なきを得たのです。

インターネットが2000年を迎えた途端に動かなくなることはないだろうか。すでにインターネットは社会インフラ、ライフラインとして不可欠となっていて、長期に障害を起こせば致命的な事態をもたらすことも考えられました。インターネットのY2K問題に対応するため、IBMや数多くのIT会社がインターネットでY2Kによる障害が発生する可能性を検討しました。アメリカ政府はWhitehouse Internet Y2K Roundtable(大統領インターネット2000年問題審議会)を発足させ、危機管理の態勢を整えました。

インターネットについてのメトカーフの予想も、Y2K問題への危惧も根は一つです。誰もインターネットを本当の意味で設計したことはないし、管理の責任を持ってもいないということです。インターネットは、普通システムがそうであるように、特定のデザイン目標に向けて設計され構築されたものではありません。インターネットに接続されている機器やシステムがどこまで基本的なルールに忠実に作られているかもわかりません。インターネットのパフォーマスや信頼性に何の約束もないことは、既存企業がインターネットを介してビジネスをすることをためらわせました。

それでも野心的な人々は様々な制約の中でインターネットを活用した事業を起こしました。インターネットは電話と違って、接続相手の距離と料金は関係ありません。そもそも全体が管理されていない以上、そんなことは元々不可能です。それを利用して、インターネットを使った電話、IP電話は、世界のどことも均一料金で通話ができます。しかし、初期(と言っても2000年ごろですが)の標準的回線速度では通話の品質は、相当問題がありました。株式投資の通話が途切れたと言って訴訟を受けたりしながらも、IP電話は次第に安定したビジネスを確立していきます。商取引も急速にインターネットが利用されるようになり、銀行取引もインターネットを介して行われようになります。PCがホビーの世界からビジネスの世界へと溶け込んでいったように、インターネットの利用範囲は広がっていきました。

インターネットの西暦2000年は静かに迎えることができました。ネットワークのシステムは年号に依存した処理はほとんど皆無で、インターネットにY2Kの問題は起きないだろうという予測は幸いに当たりました。21世紀に入るころには、インターネットのインフラ部分についての不安は概ね解消されました。回線速度も飛躍的に向上し、悪名高かったIP電話も音声だけでなく映像で会話を行えるようにまでなりました。

しかし、インターネットが予め設計されてできたわけではないことに変わりはありません。将来インターネットがどのようなものになっていくかも、誰かが決めているわけではありません。インターネットの変遷はその時々の都合で行きあたりばったりに変化していったという意味で、技術的な製品というより生物の進化に似ています。世の中でインターネットに一番似ているものを探すと、それは脳かもしれません。少なくとも複雑性という点でインターネットに比較できるのは脳だけと言っても良いでしょう。そして脳は驚異的な機能を持っていますが、それは何億年と言う生物の進化の歴史でつぎはぎだらけでできあがったものです。

沢山の要素が集まって全体として全く違ったものを生みだすものを複雑系と言い、複雑系が新しいものを生み出すことを創発と言います。脳は1,000億個のニューロンと500兆個のシナプスでできていますが、脳の作りだす、思考や意識は個々のニューロンやシナプスとは全く別次元のものです。意識は脳が創発で生み出したものなのです。だとすれば、インターネットが個々のサーバーやネットワークを超えて全く新しいものを作りだす、創発を行うことはあるのでしょうか。あるとすればそれはどのようなものなのでしょうか。(続く

インターネットの次に来るもの:目次
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