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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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The Next Wave: インターネットの次に来るもの(5): 自己組織化
続き
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インターネット株相場は過熱した

最後の勝者

2000年問題を無事乗り切ったばかりの1月19日、ヤフージャパンの株価は店頭市場で1億円の大台を突破します。その後も株価は徐々に値を切り上げ2月22日には1億6790万円を付けました。1億円を突破した時のヤフージャパンの株数は27,900株。2月22日の最高値で計算すると時価総額は4兆5千憶円になります。ヤフージャパンの売り上げは急速に増加していましたが、それでも前年の1999年最後の4半期の売上はまだ16億円でした。

後にも先にも日本の株式市場で1億円を突破した株はありません。ヤフージャパンの株価1億円突破のニュースは、ドットコムバブルと呼ばれるインターネット関連株式のブームを象徴する出来事として世界中で話題になります。

ヤフージャパンの親会社(ヤフージャパンはソフトバンクと米ヤフーとの合弁)のヤフーも絶好調でした。2000年1月3日の終値は118.75ドル(分割修正済み。分割前価格で475ドル)と史上最高値を付けました。時価総額は1,500億ドルを超えました。

ヤフーの提供するものは、要するにインターネットの電話帳です。インターネットには膨大な数のウェッブサイトがあり、日々増加を続けていました。ウェッブサイトを見つけることができなければ、いくらインターネットが世界中のどこでもアクセスできるようにしたと言っても意味がありません。ウェッブサイトとブラウザーを結び付ける仕組みが必要でした。ヤフーはカテゴリー別にウェッブサイトをまとめて、ユーザーが目指すウェッブサイトに簡単にアクセスできるようにしたのです。

ヤフーはただのネットの電話帳ではありません。インターネットのユーザーはウェッブサイトのアドレスを知らない限り、ヤフーを通じて必要なサイトを探すことになります。ヤフーのサイトはインターネットへの玄関口-ポータルとしての地位を確立します。インターネットに入ってくるユーザーの求める情報と関連する広告を選んで表示れば、高い宣伝効果も期待できます。インターネットの電話帳を持つヤフーは、インターネットを使った広告媒体として独占的と言っても良いほどの存在となります。

ドットコムバブルの中でも、ネット関連企業のビジネスモデルが本当にまともに収入を得られるものかは疑問を感じている人は沢山いました。利益を生むどころか、売上さえないままで上場して高値を付ける企業が多かったのです。その中で明確で強力なビジネスモデルを持つヤフーは輝いていました。ヤフーは本当の意味でインターネットが生み出した新しい企業でした。誰にも、ヤフーこそPC時代のマイクロソフトのように、インターネット時代の最大の勝者になるように思えました。

インターネット関連株のバブルはあっけなくはじけます。2000年3月10日にハイテク市場のNASDAは5042ポイントの高値を付けますが、3月15日には4580ポイントで終わります。その後もNASDAQは急速に値を下げ、その年が終わるころには3000ポイント、2003年を迎えるころは1000ポイントそこそこまで下落します。NASDAQの中心的存在だったドットコム企業は次々に姿を消してしまいます。いくら夢のようなことを言っても、収入がないのでは株に高値は付かないという当たり前の姿に戻ったわけです。

その中で、ヤフーはアマゾンなどとともに生き残ります。インターネットが依然急速な普及を続けている限り、インターネットの要を押さえたヤフーのビジネスモデルは盤石と思われました。しかし、ヤフーには弱点がありました。カテゴリーを頼らずに、キーワードでインターネットを検索する検索エンジンは、IBM PCがOSとマイクロプロセッサーをマイクロソフトとインテルからそれぞれ供給を受けていたのと同じように、グーグルという小さな会社から提供されていたのです。

情報検索はコンピューターの得意分野です。キーワードを使った文献検索は図書館や科学技術の論文で広く実用化されていました。しかし、インターネットで従来の文献検索技術をそのまま使うことは大きな問題がありました。インターネットの情報はあまりにも巨大で、検索技術で目指す情報を見つけることはほとんど不可能だったからです。たとえば「自動車」「量子力学」と入力して何百万個の文献をリストアップされても使いようがありません。
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グーグルを創立したラリー・ペイジ(左)とセルゲイ・ブリン

それまでの文献検索技術では、一般に文書は特定の単語を何回使用しているかでランク付けされていました。しかし、それでは意図的に同じ言葉繰り返すと中身とは無関係に上位に選ばれてしまいます。インターネットの世界では検索はたまたまレストランの名前を知っていたときのように、「知らないこと」ではなく「知っていること」を調べることしかできないと考えられていたました。

1996年、コンピューター科学者の父と母を持つラリー・ページとロシア人移民のセルゲイ・ブリンは、インターネットの文書がどれだけ多くの他の文書からリンクされているかを調べることで、文書やサイトの重要性をランク付けできるのではないかと考え、そのアイデアの検証を始めます。結果は満足のいくものでした。自信を持った二人は1998年グーグル社を設立します。時代が若い彼らに味方しました。多くのドットコム企業と同様、アイデアだけで何の収入も得ていないグーグルはベンチャーキャピタルから110万ドルの資金を調達することに成功します。

グーグルが取り入れたアイデアはリンクの数で文書の重要度を測るだけではありません。検索エンジンを使う時、人々は関心のある言葉をキーワードとして入れるはずです。「ハワイ、スキューバーダイビング」と入力する人に、ハワイのホテル、旅行保険、スキューバダイビングの道具の広告をすれば効果的なのは確実です。グーグルは文字通り「言葉」に値段を付けて売るビジネスモデルを作り出しました。

インターネットのユーザーはすぐに必要な情報を探すのにはヤフーのカテゴリー中心の方法より、グーグルのキーワード検索の方が便利なことに気が付きます。1994年4月にグーグルが上場した時、時価総額は300億ドル以上とピーク時から350億ドルにまで下落していたヤフーとほとんど変わりませんでした。そして2004年の終わりに、グーグルの株価は2倍近くに上昇し、かつてのインターネット株の王者、ヤフーの時価総額を追い抜きます。

グーグルの成功はウェブサイトや文書のランク付けをヤフーのような人為的なサイト評価ではなく、リンクの数というウェブ自身が内包している性質を使ったことです。複雑系では外部の働きによるのではなく、自分自身で構造を作り出すことを自己組織化と言います。グーグルは文書同士のリンクの結びつきがインターネット*の中で自己組織化を行っていることを利用したのです。

リンク同士の結びつきの数が情報の重要性を示すというのは、脳細胞(ニューロン)が互いにシナプスで連結されているのとよく似ています。一つのニューロンは数千のシナプスを出し、特定の刺激に対し反応して他のニューロンに情報を伝えます。ニューロンから伸びているシナプスが別のニューロンのシナプスに情報を伝達することを「発火」と言います。刺激が重要なもの、記憶すべきものであれば、発火は高い確率で起き、そうでない場合確率は低くなります。物事に習熟したり、トラウマのような恐怖を感じるのは、シナプスの発火が特定のパターンを作り出していると考えられます。

脳とインターネットは全く違うものです。しかし、ニューロンを情報、シナプスをリンクと置き換えると、その構造はほとんど相似形と言ってもよいほどです。グーグルは文書解析のための自然言語の研究者だけでなく、脳神経の専門家も数多く採用しています。グーグルが脳をモデルにして、検索エンジンの改良を行っているのは間違いないでしょう。

インターネットは当初のブラウザーが最重要製品だと考えられた時代から10年を経て、自己組織化を利用した検索エンジンが主役になる段階になりました。複雑系では自己組織化は個別の構成要素とは全く違う性質を示す創発を起こす主要なプロセスです。水の分子は創発により、液体にも固体にも気体にもあり異なった物理的性質を示します。脳の中で創発は最終的に意識と呼ばれるものを作り出します。

もちろん、インターネットが自己組織化を行っていても、その構造が脳のニューロンやシナプスと相似形をなしていても、それだけではただの「例え話」に過ぎません。グーグルの検索エンジンが「意識」めいたものを作ろうとしているというのは妄想と言われても 仕方がないでしょう。しかし、インターネットの中で張り巡らされているリンクが、インターネットという複雑系の自己組織化を行っていることは間違いありませんし、自己組織化が創発を引き起こすことが多いのも確かです。

今、インターネットの中では検索エンジンがリンクを調べるためにロボットと呼ばれるソフトウェアを四六時中稼働させています。ロボットたちはインターネットを徘徊してリンクと情報の中身を調べ続けます。インターネットのアクセスの中でロボットの占める割合は大きく、サイトの訪問者の数からロボットの訪問数を取り除かなければ正確なアクセス数の評価ができないほどになっています。脳に話を戻せば、脳は外界につながった神経系から来る情報より、内部のニューロン同士の情報交換がずっと大きな割合を占めています。夢の中で外界からの刺激を全く受けず、空中を飛んだり、化け物に襲われる恐怖を感じたりすることができるのはそのためです。

インターネットの自己組織化が進んだ先には何が待っているのでしょうか。インターネットは最後に意識を持つことができるようになるのでしょうか。まだ全ては空想の中の話に過ぎません。コンピューターが現れた時、コンピューターが「人工知能」になり、最後は人を支配するようになると多くの人が心配しました。その時コンピューター学者は「そうなったらコンセントを引き抜けばいい」と答えました。しかし、インターネットのコンセントを引く抜くことはできません。人類は兎にも角にもインターネットと生きていくしか道はありません。(続く
Self_organization_11.jpg


* 正しくはワールドワードウェブ(WWW)と呼ぶべきでしょう。インターネットはネットワークそのもの、WWWはリンクで結びつけられたインターネット上の情報集積です。ここではあえて区別しないで使っています。

インターネットと「意識」については「スポンサーから一言」にも書きました

インターネットの次に来るもの:目次
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