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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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小沢一郎氏のマキャベリズム
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チェーザレ・ボルジア

塩野七生は「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」という小説で、この日本ではあまり知られていなかった、ルネッサンス時代のイタリアの英雄の生涯を描きました。ローマ教皇を父に持つチェーザレ・ボルジアは、15世紀末から16世紀初頭を生き、小国に分裂したイタリアの中でローマ教皇領の安定と確保に奮闘します。

塩野七生の小説の題名の通り、チェーザレ・ボルジアは当時の基準でさえ、残酷、冷酷な人物と思われていました。しかし、君主論を著したニッコロ・マキャベリは、その中でチェーザレ・ボルジアこそ理想の君主であるとしました。分裂し混迷するイタリアを統一し平和と安定をもたらすためには、冷酷さ、非情さは君主にとって持つべき資質であるというのです。

マキャベリが君主論で語った君主像は「目的は手段を正当化する」というマキャベリズムとして知られています。実際にはマキャベリは単純に目的が手段を正当化するとしたわけではなく、「国家の危機に際して、君主は手段を選んではいけない」としたので、通俗的なマキャベリズムはマキャベリの考えを摘み食いしただけという批判もあります。また、マキャベリが理想の君主としたチェ-ザレ・ボルジアもマキャベリは高邁な思想や卓越した自己制御を高く評価しており、残酷さ、権謀術数だけが君主の条件としたわけでもありません。

チェーザレ・ボルジアの目指したものは、教皇の権威によって分裂して新興大国のフランスなどの脅威にさらされていたイタリアを統一することでした。そして手段を選ばない冷酷さは、そのために必要なものとしてマキャベリには正当化されるべきものでした。

しかし、マキャベリが君主論で語った、「君主は愛されるより、恐れられた方がよい」という言葉は、その後現れた独裁者に座右の銘のように受け継がれていきます。優雅でも何でもないむき出しの冷酷さが支配者の統治の道具であり、マキャベリはあたかもその擁護者のように思われるようになりました。

選挙原理主義というマキャベリズム

小沢一郎氏にとって達成されるべき目的、目標とは何なのでしょうか。もちろん、本当のところは心の中をのぞくことができない以上わかりません。しかし、小沢氏が一貫して主張してきたのは、二大政党制によって政権交代ができるような国、具体的にはイギリスのような政体に日本を変えるということです。

当然ですが小沢氏はイギリスが日本の理想そのものだなどとは言ってはいません。しかし、小沢氏のウェッブサイトの政策とオピニオンには小沢氏の憲法改正構想が載せられていて、その中で参院議員を選挙では選出せず天皇による任命による終身制とする実質的な一院制を提唱しています。これは上下院のうち、上院議員は貴族から選ばれるイギリスとほぼ同じです。そしてイギリスは小選挙区制により二大政党政治を実現している国でもあります。

小沢氏の考える小選挙区制度の一院制によるイギリス型議会に比例区はありません。小沢氏は小選挙区での当選者と比例区の復活当選者を厳しく区別しています。このような傾向は自民党でもありますが、小沢氏の場合はずっと徹底しています。比例区の復活当選者など、小沢氏の理想とする選挙制度の下では存在しないはずのものなのです。

イギリスのような二大政党制によって政権交代が行えるように日本を変え、それによって日本人がより主体的に自分自身の責任と判断で民主主義に参加する。これが小沢氏の考える国家像、「普通の国」です。

このような小沢氏の描くイギリス型の政体という理想像は、賛否はあるにしても特にゆがんだものとは言えないでしょう。民主党が自民党から政権を奪えたのも、政策の中身より政権交代を実現したいという国民の意志が強く働いたからです。しかし、小沢氏が個別の政策より枠組みとしての選挙制度の変革を重視しているとすれば、納得できない人の方も多いはずです。一般の人にとっては選挙制度は単なる手段で、実施される政策こそが重要だからです。

小沢氏の場合、選挙という手段があらゆるものに優先します。どんな政策でも、政権を取らなければ実行できないし、政権を取るためには選挙に勝たなければなりません。小沢氏にあるのは、選挙に勝てずに理想を語っても全く意味はなく、政治家にとっては、選挙に勝つことが第一歩であり全てである、という選挙原理主義です。

小沢氏は政策論議をするなどというのは大して興味もないし、意味もないと考えているのでしょう。小沢氏のこのような姿勢は、一見思想的に非常に柔軟な態度を取らせます。民主党の中で小沢氏を支持するグループに旧社会党系がありますが、小沢氏は過去も現在も改憲論者です(小沢一郎ウェッブサイト 憲法改正論)。その小沢氏を現行憲法絶対保持の旧社会党系議員が民主党で強い小沢氏支援を行っています。

確かに二大政党制実現は政策の中身とは別に追及する意味はあります。自民党政権が長く続いているうちは、二大政党制の実現は、まず選挙で自民党を破ることに他なりません。小沢氏の選挙原理主義の目的と手段は一致していました。

しかし、選挙原理主義は政権を獲得するということにとどまりません。一つの政党の中で自分の意見を通していこうと考えると、政党の中で多数派である必要があります。さらにその多数派の中での多数は占めていこうということになると、非常にコアな仲間、というより意のままに動く手下を作るのが一番です。その集団でより大きな集団を支配することで、最終的には一つの政党そして国会の多数派を確保することになります。

このやり方は、小沢氏が師事した田中角栄氏の手法をそのまま踏襲したものですが、小沢氏の場合は、それをさらに徹底させています。たとえば、小沢氏は信条、力量と無関係に有名で票が取れそうだというだけで、タレント候補を擁立するのが得意です。タレント議員であろうと何であろうと議席には変わりがないというのが小沢氏の考えです。

逆に議員は議席を持っているという価値しか認めることはありません。議員の値打ちは選挙に勝てるかどうかということと、自分の言うことを文句を言わずに聞くかどうかが一番大切で、どんなに能力があっても取り換えのきく部品としての意味しかないのです。

小沢氏の選挙原理主義は選挙手法にも現れます。テレビで意見を述べて政策と顔を売ると言うやり方は小沢氏は評価しません。重視するのはどれくらい沢山の有権者と直に顔を合わせ、握手をし、言葉を交わすかということです。小選挙区制は二大政党制を作りやすいということと、小沢型選挙に向いているという二重の利点が小沢氏にとってはあります。

小沢氏の目的は手段を正当化するのか

このように考えると小沢氏の中で、イギリス型の二大政党政治システムのもとで自立した日本人を作るという小沢氏の目的と、そのために選挙に勝ち抜くという手段が倒錯してしまっているのではないかと思えてきます。自分の意志がなくトップダウンで言われた通り投票する投票マシンとしてしか国会議員を見なくなっているのです。

一連の資金疑惑にしても、カネの出所は別として多額の資金が、自分の意のままに動く議員部隊を作るために必要だったと考えて間違いないでしょう。新しい日本の政治システムを目指しながら、自分の意のままに動く手下を作るために昔以上の金権選挙を行うことになってしまっています。

小沢氏が信念の政治家であることは間違いありません。小沢氏を支持する人々の多くは、政党を作っては壊す「壊し屋」の小沢氏が政権獲得に向かう強固な意志と信念を持っているということを支持の理由にしています。

問題は二つあります。政治改革が現代日本にとってそれほど重要なのかということ、もう一つはそのためにはロボットのような小沢氏の意のままに動く国会議員を作るような小沢氏のマキャベリズムを許すかということです。目標の実現のために、15年前の細川政権の発足以来、小沢氏は共産党を除くほとんど全ての党と連立を組んできました。小沢氏にとって、政党の政策は関係なく、政党も一つの投票マシンに過ぎないのです。

チェーザレ・ボルジアの生きたルネッサンス期のイタリアは小国に分裂し、常にトルコのような大国の脅威にさらされていました。一方ではフランス、スペインなどの新興の国民国家がヨーロッパの中心になりつつありました。ローマ教皇が権威の中心だった中世はすでに終わっていました。

その中で、イタリア統一のためには冷酷、非情の限りを尽くしたチェーザレ・ボルジアは、同じ時代のマキャベリにとって理想の君主だったのでしょう。今の日本にとって選挙制度や政体の改革がそれほど重要な課題かどうかは疑問が残ります。民主党政権が成立した今となっては、政権交代自身は目的ではなくなっています。それとも、参議院の実質的廃止を含む小沢氏の考える新しい憲法を作ることを、イタリア統一のような大目標と考えるべきなのでしょうか。

このまま何の障害もなければ、小沢氏はロボットのように動く議員団をコアの手下として衆院支配、参院支配と進んでいくでしょう。小沢氏の執念と統率力があれば、憲法改正すら可能かもしれません。しかし、小選挙区を土台にした二大政党政治にしろ、憲法改正にしろ、枠組みに過ぎず中身ではありません。

小沢氏が政策を連立する政党(繰り返しますが、小沢氏にとってはただの投票マシンです)によって融通無碍(ゆうづうむげ)に変える中で一貫しているのは、議員のロボット化という言ってみれば民主主義の否定です。資金疑惑もさることながら、ここまで目的のために手段を選ばない小沢氏のマキャベリズムを日本は許容することができるのでしょうか。

マキャベリズムは本来君主が民衆を支配するためのものです。しかし、文字通り主権在民の国である日本で、支配者は国民でありどんな権力者も単なる僕(しもべ)に過ぎません。選挙と世論調査という意思表示によって、権力がたちまち奪われてしまうことは、私たちが見たばかりのことです。

マキャベリの言うように「愛情は利害によって裏切られるが、恐怖は必ず行われる処罰により裏切られることは」ありません。しかし、恐怖を感じなければいけないのは、ロボットのような小沢チルドレンではなく、小沢氏自身の方ではないでしょうか。

参考:日本はイギリスになれるか
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この記事に対するコメント
評価するのは未だ先では
 馬場さんは小沢さんのことがお嫌いなのでしょうか? 評価するのは参院選の後で良いのではないかと思いますが。
 政界再編→憲法改定の道筋が描かれているとは思いますが、現状はそれどころではないような気が。また憲法改定となれば、いくら小沢チルドレンと呼ばれる方達も、小沢さんの意に必ずしも沿うとは思えませんが。
【2010/01/26 11:54】 URL | 桃栗 #- [ 編集]

Re: 評価するのは未だ先では
>  馬場さんは小沢さんのことがお嫌いなのでしょうか? 評価するのは参院選の後で良いのではないかと思いますが。
>  政界再編→憲法改定の道筋が描かれているとは思いますが、現状はそれどころではないような気が。また憲法改定となれば、いくら小沢チルドレンと呼ばれる方達も、小沢さんの意に必ずしも沿うとは思えませんが。

桃栗さん、

小沢氏のことを個人的に好きか嫌いかと言われると、嫌いではありません。「政策に興味がない」と言いましたが、小沢氏の政治思想は自由主義的で、私とのずれは大きくありません。憲法改正案も平和主義的で穏当なものと思います(どんなものでも全て改憲に反対する立場でなければ)。民主党の閣僚が教条的にマニフェストに縛られるのと比べれば、安定感、信頼感ははるかに高いと感じています。

ただ、マネーロンダリングは国際的には重罪ですし、政治家が多額の現金を扱っても、「犯罪の証拠がない」ということで世間的にもおとがめがなければ先進国として恥ずかしいことだと思います。

小沢氏のマキャベリズム的傾向はやはり問題だと思います。事を成す人は、大なり小なりワンマンですが、小沢氏の場合はあまりにも徹底していて、民主主義にとって危険なレベルに近づいていると思います。

しかし、小沢氏が退いてしまったら、民主党はまた大混乱に陥って収拾する人が誰もいなくなる心配は大です。どのようにすれば一番良いのか私にはわかりません。

【2010/01/26 13:39】 URL | RealWave #- [ 編集]


>ただ、マネーロンダリングは国際的には重罪ですし、政治家が多額の現金を扱っても、「犯罪の証拠がない」ということで世間的にもおとがめがなければ先進国として恥ずかしいことだと思います。

これは事実に基づいたコメントですか?
証拠もなしにこのようなことを言っても許されるのでしょうか?
【2010/11/14 20:26】 URL | 金子敏彦 #2NFEem4w [ 編集]


なるほど、なるほど
小沢一郎氏に対する理解が深まりました
私がこれまでに読んだ数少ない小沢評の中で、一番有意義なものです
【2011/08/06 14:33】 URL | 匿名 #- [ 編集]


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