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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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ギリシャの危機は他山の石なのか
ギリシャ神殿

EUではPIGS(ポルトガル、イタリア、ギリシャ、スペイン)それにアイルランドを加えてPIIGSの経済危機の問題が取り沙汰されています。中でもギリシャは政府が赤字の穴埋めに借金をしようとしても、思うように資金が得られず、ほっておくと国が破産しかねないところまで追い込まれていると言われています。

ギリシャが借金をしようとしても借金ができない。つまり国債が売れなくなってしまっている状況を日本の900兆円にも積みあがった国債残高に重ね合わせて、「他人ごとではない」と心配する論調も目立ってきました。これに対し亀井金融大臣は「国民が国債を買っている日本とギリシャは全然違う」と反論し、「ギリシャを反面教師として政府の対応が大切なことを学ぶべきだ」と語っています。

日本の国債残高がGDPの2倍近くにもなってしまっているのは、世界的に見ても異常なことですし、積みあがった山がいつ崩れるか心配するのは常識人としては当然でしょう。しかし、日本とギリシャを政府債務に苦しんでいるという意味で同一視するのは間違いです。

ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマンも指摘しているように、ギリシャはリーマンショックが起きる前は、資本の流入も活発でしたし、輸出も好調でした。問題が起きたのは不況で資本の流入どころか流出が起きてしまったからです。

GDPは個人消費+政府支出+設備投資+輸出です。輸出が減れば他の費目、たとえば政府支出を増やさなければ、GDP、つまり経済は縮小します。余談ですが、慢性的な輸出黒字国の日本はリーマンショックで輸出が大幅に減り、大打撃を受けましたが、万年赤字国のアメリカは輸入が減って、その分経済の縮小は小さくて済みました。日ごろから浪費している方が、いざ節約となると節約余地が大きいということになるのでしょうか。

さて、ギリシャですが、資金の流入が減っても為替レートが安くなれば輸出を増加させることができます。韓国はリーマンショック後一時ウォンが円の半分程度まで減価しました。お陰で日本から大量の観光客が訪れ、世界市場では日本製品に有利な戦いを行うことができました。日本より韓国が素早く不況から立ち直れたのは、円高が進んだ日本に対し、ウォン安の効果が大きかったと思われます。

ところが、ユーロ圏にあるギリシャは為替の調整はできません。為替が変わらなくても賃金を大幅に下げてしまえば同様の効果がありますが、賃金は大変下方硬直性、つまり下げるのが容易でないという性質があります。これは人間には「貨幣錯覚」というものがあり、実際の購買力より名目の金額にこだわるからだと言われています。

ともあれ、大幅とは言わないまでも何とか賃金を下げようとする企業側の努力は左翼の強いギリシャでは社会不安につながる危険性があり、実際そのようになっているようです。社会不安が起きれば資本はますます流入しにくくなります。

輸出を増やす為替調整はできない、無理に賃金を下げると社会不安が起き、ますます資本流入が滞るとなると、経済の崩壊を防ぐには政府が支出を増やすしかありません。しかし、外資の流入が細っていて国債を売るさばくことが難しい。しょうがないのでEUの経済大国のドイツなどの支援が必要というのがギリシャの危機です。

確かに国債が売れるの売れないのという意味では、将来(明日にでも!?)日本の国債を突如国民自身も含め誰も買わなくなることはあるかもしれません(そうならないようにしようというのが亀井金融相の魂胆でもあるでしょう)。しかし、ギリシャでは国債が売れないのは為替調整ができないという問題の結果であり、危機の原因そのものではありません。

今(2010年5月7日)ユーロが暴落し、それと一緒にニューヨークも東京も株式市場が大きく下げています。問題の本質はユーロという単一の通貨圏の下で、経済発展の大きく異なる国が経済運営を行い続けることができるかどうかということです。

財政を切り詰め賃金を下げれば、経済危機に対応できるのかもしれませんが、それではギリシャのように経済危機だけでなく政治危機も招いてしまう危険があります。拡大の一途を続けたEUという壮大な実験は大きな試練に立たされています。日本の赤字財政と直接の類似性はありません。ギリシャを見て日本が心配する必要もありませんし、亀井金融相のように日本の強さを自慢するのも見当違いと言うべきでしょう。
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