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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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張作霖暗殺とヴェノナ文書
nsa-hq.jpg
NSA本部

2年ほど前になりますが「櫻井よしこ 反中論の論理と非論理」というブログ記事を書きました。その中で、櫻井よしこ氏*が満州事変のきっかけとなった張作霖の暗殺がKGBの陰謀だったとしているのを「一般には当時の関東軍参謀河本大佐が犯人とされています。河本大佐は犯行後、首謀者と認定され処分も行われています。KGB陰謀説は奇説と言って良いでしょう」と述べているのですが、野口氏という方からコメントをいただきました。

コメントでは「この「一般には」が問題でしょう。」として、「米国で開示されたいわゆるVenona文書を冷静に読めば、櫻井さんの主張は正当だと思える筈です」とあり、Venona文書(以下ヴェノナ文書)で一般的な歴史認識は覆えるとの認識を示されていました。

ヴェノナとは1943年から1980年までアメリカ、イギリスの諜報組織がソ連の暗号文書を解読するプロジェクトに名づけられた名前で、ヴェノナ文書はその中で明らかにされたソ連の諜報文書です。ヴェノナプロジェクトの中心となったのはNSA(National Security Agency:アメリカ国家安全保障局)です。

ヴェノナ文書は、中西輝政氏、田母神俊雄氏そして多分(確認できなかったのですが)櫻井よしこ氏などの右派論客の多くが日本の第2次世界大戦とそこにいたる一連の行動が、ソ連の巧みな謀略に踊らされた根拠としており、張作霖暗殺KGB説もそこから来ているようです。

ソ連の暗号解読を行って、その裏をかくという目的のためヴェノナプロジェクトは高度の秘密とされていましたが、1995年から公開が始まり現在は約3千の文書がヴェノナ文書とされています。

もっともソ連の裏をかくという目的は、イギリスの諜報部員キム・フィルビーがソ連に内通したため、ソ連はヴェノナプロジェクトのことは早い段階から把握しており大きな成果は上げられなかったようです。

余談ですが、キム・フィルビーはその後イギリス諜報機関の総本山MI6の何と長官に出世してしまいます。ソ連は早くから掴んだ暗号が解読されているという情報をキム・フィルビーを出世させるためにあえて利用しなかったこともあるようです。

キム・フィルビーが二重スパイであったことは、ソ連から亡命したスパイの証言で明らかにされ、1963年キム・フィルビーはソ連に亡命します。その後ソ連はキム・フィルビーの顔の切手まで作ってキム・フィルビーの功績をたたえました。

余談が長くなりましたが、ヴェノナ文書の大きな衝撃はアメリカ政府、イギリス政府の内部に深くソ連の諜報部員が潜入し、機密情報を得るだけでなく、政府の意思決定に影響を与える数多くの工作活動をしていることが判明したことでした。

ヴェノナ文書が明らかにした諜報活動の中で重要なものの一つに、原爆製造の機密情報をソ連に流したローゼンバーグ夫妻のスパイ活動があります。1950年、夫妻は逮捕され死刑判決を受け。1953年に執行されます。

当時はヴェノナ文書は最高機密であり、明らかにされた証拠は他のスパイの自白だけだったため、ローゼンバーグ夫妻については反ユダヤ主義(夫妻はドイツ系ユダヤ人だった)、反共主義による冤罪ではないかとの抗議が強くありました。

ヴェノナ文書が明らかになったことで1950年代を吹き荒れた「赤狩り」いわゆるマッカーシズムを再評価しようという動きも出てきました。日本でも中西輝政氏などは「マッカーシーは正しかった」という評論を書いています。

しかし、マッカーシズムに関して言えば、やはり反共ヒステリーによる非民主主義的な弾圧活動だったと考えるべきでしょう。マッカーシズムと言われているように赤狩りを扇動したのは、共和党のジョセフ・レイモンド・マッカーシー上院議員ですが、マッカーシー議員はヴェノナ文書にアクセスしていたことはありません(伝聞的に共産主義の浸透の話は聞かされていたかもしれませんが)。

実際、マッカーシー議員は提出した「共産主義者のリスト」なるものはヴェノナ文書とは無縁の偽証や歪曲に基づくものでした。マッカーシズムは反共主義を政治的プロパガンダとして利用しようとした、な思想統制でした。

政府部内に浸透して諜報活動、工作活動が行われていたというのが明らかにされるのは相当ショッキングなことであるのは事実です。しかし、諜報活動や工作活動があったことと、それによって全ての政策決定が外部によって操られていたというのは別の問題です。

中には原爆製造の方法の入手のような決定的に情報漏洩もありますが、多くの諜報情報は膨大な量の報告文書の中に埋もれてしまい上層部の耳に届きません。工作活動にいたっては、戦後のアメリカの工作活動はほとんど失敗だったとされるように(CIAの虚像と実像)、目的とされる結果を得るのは簡単ではありません。

ヴェノナ文書は3千以上という数になりますが、これはソ連の機密通信文の中で暗号を使い捨てにしなかったなどのミスにより、たまたま解読できたものだけで、実際にはその何百倍、何千倍とうい機密文書がまったく手つかずで放置されています。ヴェノナ文書が明らかにしている事実は全体のごく一部に過ぎません。

また、諜報員から送られる文書の全てが真実とも限りません。諜報員の中には自分の手柄を誇示するために、やってもいない活動を「自分が仕掛けた」と偽ることもあります。ヴェノナ文書にしても内容は他の証拠と合わせた検証が必要になります。

さて、話の始めとなっている張作霖暗殺のKGBの関与ですが、正直を言うと、当該事件に関するヴェノナ文書に行き当たることはできませんでした。これは公開されているヴェノナ文書が元の文書の画面イメージに手書きで書き込みをしているような代物で、検索機能で何でも見つけられるというわけにはいかないからです(興味のある方は)。

仕方がないので、ヴェノナ文書の中で張作霖暗殺に言及したユン・チアン著「マオ 誰も知らなかった毛沢東」から引用すると「張作霖爆殺は一般的には日本軍が実行したとされているが、ソ連情報機関の資料から最近明らかになったところによると、実際にはスターリンの命令にもとづいてナウム・エイティンゴン(のちにトロッキー暗殺に関与した人物)が計画し、日本軍の仕業に見せかけたものだという。(同書 (上) P301)」となっています(ブログ記事などを参照)。

これだけでは、右派論客の人達が言うような河本大佐首謀説をひっくり返すのにはいかにも根拠薄弱です。これは私がサボって一次資料のヴェノナ文書にあたらなかったからばかりではありません。日本の張作霖暗殺KGB説を唱えている人たちの根拠がほとんど、前述の著作になっているのです。

張作霖暗殺は河本大佐自身が自供しているのですが、論者によっては河本大佐KGBスパイ説を展開し、「河本大佐があのように簡単に自白を行ったのはKGBの関与を隠すために違いない」とまで言っています。この辺になると、張作霖暗殺は関東軍にも日本にも利益はなかったなど、かなり原著の記述不足を補うための断定が相次ぎます。

このような推定が間違いだと絶対的に証明することは難しいのですが、「マオ」の僅かな記述(毛沢東のことを書いた本ですから当たり前ですが)を精いっぱい膨らませても、定説を覆すにはいたらないと考えるのが妥当でしょう。

確かに歴史が新しい発見、事実により大きく見方を変えることはあります。個人の性癖のことであれば「XXはホモだというkとが判明したので、YYと恋愛関係にあったという従来の説は間違い」というここともあるでしょう。しかし、国家の意思決定、、歴史の大きな流れが諜報活動、工作活動で決定的に変えられるというのはほとんどないことです。

たとえば、ヴェノナ文書から日本に最後通牒を突きつけたハルノートはアメリカ政府に潜入したソ連のスパイの陰謀で、アメリカと日本はソ連によって戦争させられたという論を唱える人もいます。

しかし、アメリカ政府の意思決定がスパイの思う通り行われるというのは誇張以外の何物でもありません。日米開戦は双方が引くに引けなくなった状況と、おそらくルーズベルト大統領が簡単に片づけられると思った日本と戦争したいという背景があったのでしょう。

ヴェノナ文書は確かに多くの新しい情報をもたらし歴史を評価する上で大きな役割を果たしていくでしょう。しかし、それだけを頼りに定説を覆そうとするのはあまり理性的なやり方とは思えません。


*従来当ブログでは有名人は敬称を略すことにしていましたが、「呼び捨て」が別の攻撃的意味合いを持つこともあり、敬称を付けることに変えました。スポーツ選手などは「氏」付きより呼び捨てが普通ではないかなど、若干ややこしいとこともありますが、「選手」を付けるなど臨機応変に対応するつもりです。
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ここは酷いヴェノナ計画ですね

ヴェノナPHP研究所 ジョン・アール・ヘインズ Amazonアソシエイト by 中西輝政とその門下生の翻訳。相当なボリュームだが、圧倒的。 ソ連のスパイ入り込みすぎワロタ。あとアメリカ共産党がガチでソ連の手先で引いた。そりゃ憎悪の的になるよなあ マッカーシズムもか 障害報告@webry【2011/04/10 01:45】

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