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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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「一万年の進化爆発」そして未来
Evolution2.jpg

「現生人類は出現以来20万年不断に進化を続けてきた。特に文明が生まれてから進化の速度は100倍も速くなった。急速な進化は人種間の相違を大きくした。その結果としてアシュケナージ系ユダヤ人の知能は他の人種と比べて際立って高くなった」

このような話を聞いて眉をひそめる人は多いでしょう。進化によって人種間の優劣が決まるという考えは、白人が有色人種に対する差別を正当化するために考えだされた似非科学の代表のように考えられています。まして知能による差が人種間で存在するなど、戯言(たわごと)に過ぎないと考えるのが良識的な科学者の立場だと思われてきました。

グレゴリー・コクランとヘンリー・ハーペンディングの書いた「一万年の進化爆発」はそんな常識に真っ向から挑戦するような本です。著者たちによると人間は犬が農耕社会が始まってからチワワ、ドーベルマン、ダックスフンドのように同じ種とは思えないほど多様化したのと同様の強い進化上の選択圧を文明によって受けているというのです。

現生人類がアフリカで20年万前に生まれてから人類に根本的な進化はないというのは定説です。タイムマシンで10万年前の赤ん坊を現代に連れてきて育てれば現代人と区別がつかない人間に育つだろうと人類学者は考えています。大人だって髪をさっぱりさせて洒落たスーツを着せれば、地下鉄に乗っていても誰も振り向きもしないはずだろうというわけです。

そもそも人種というのは生物学的なものというより文化的な色彩の強いものです。朝鮮人と日本人は違いがあると言われても、秋田県人と鹿児島県人の差の方が大きいようにも思えます。人種の違いに直結する言語は非常に早く変化します。渋谷に集まる女子高生の言葉が全然わからないからといって、生物学的に親の世代と異なっているわけではありません。

人種の厳密な定義は諦めて、ナイジェリア人と日本人のように外見でかなり明確な区別ができる人種同士を比べても、遺伝的な分布は人種間より人種内の個人間の方が5倍以上大きいと考えられています。劣等民族と優秀民族とうい考えは根拠がなく弊害ばかりある危険思想だと看做されています。

それでも「一万年の進化爆発」には耳を傾けざる得ない事実が指摘されています。まず、進化の最大の原動力は環境の変化であり、人類が文明によってその人類自身の環境を全くと言っていいほど変えてしまったということです。

農業によって定住が進み人口密度が上がれば様々な伝染病のリスクは急に高くなります。進化は環境の変化にうまく適応して、より多くの子孫を残す遺伝子を増大させることで進みます。人類は伝染病と野戦いで伝染病に強い遺伝子をより沢山残してきました。つまりどのような伝染病に晒されているかで民族ごとの遺伝子プールは違ってきてしまいます。

同じようなことは日照量の差によって白人が生まれた(アフリカで生まれた人類は最初は皆黒人だったと考えられています)り、寒冷地の住民が平均的には体が大きくなる傾向があることでも示されています。確かに環境によって人種ごとに違った遺伝子セットが作られるというのは現実に即したものだと言えます。

それでは知能はどうでしょうか。著者たちはヨーロッパに住むユダヤ人、アシュケナージ系ユダヤ人は差別のために農業に従事することは難しく、金貸しや、税金の取り立てのような特殊な職しか開かられていなかったと述べます。

中世から近世に至るまで社会の大半は農民でした。現代の事務職に相当するようなこれらの職業は農民とは違う能力を要求したことは確かでしょう。それはIQで測定できるような能力だったかもしれません。そして、近代に入るまでは経済的な成功こそ沢山の子供を後世に残す最大の要因だったと著者は主張します。つまりIQの高さは生存競争と進化にとって意味のある働きがあったというのです。

このような見方を100%同意するのは難しいかもしれません。そもそもIQの高さは遺伝するのでしょうか。それ以前にIQというものは何か生物学的な実態なのでしょうか。遺伝子の研究が進歩した今でも、背を高さに関係する遺伝子はいくつか特定されていますが、微積分が得意になる遺伝子は見つかってはいません。

進化は遺伝子が沢山のコピーを残す競争によって起きるものです。かりに微分方程式を効率よく解く遺伝子があったとしても、500万年前に人類がアフリカのサバンナで果物の実を食べていたときにはどんな働きをしていたのでしょうか。

著者たちはこのような問いかけに一つの仮説を提示します。それは1万年前の農業社会の始まりの前に人間の知性に大きく影響を与える遺伝的な変異があったのではないかということです。

著者たちがその証拠の一つと考えているものに、有名なラスコーの洞窟壁画があります。フランスのモンティニャック村で発見されたラスコーの洞窟壁画は約1万5千年前にクロマニョン人に描かれたものとされていますが、確かに技術的なレベルや芸術の域に達していると言える表現力はそれ以前の人類の製作物とは大きく違います。
lascaux.jpg
ラスコーの洞窟画


ラスコーの洞窟壁画が描かれるのと相前後して同じころヨーロッパにいたネアンデルタール人は滅亡しています。ネアンデルタール人はラスコーの洞窟壁画を描くことを可能にした遺伝子の変化に滅ぼされてしまったのでしょうか。

この説は簡単には同意できないでしょう。確かにラスコーの洞窟壁画が発見されたころ中部ヨーロッパに現生人類とネアンデルタール人は共存していて、ネアンデルタール人が滅亡した時期はラスコーの洞窟壁画とほぼ一致してはいます。しかし、絵をうまく遺伝子がネアンデルタール人との戦闘でも有利な能力をもたらしたと考えるのは飛躍でしょう。

現代人でも殆どの人はラスコーの洞窟壁画ほど絵を上手には描けません。ラスコーの洞窟壁画を描けることを可能にする遺伝子があったとしても現代人全てがその遺伝子を持っているわけではなさそうですし、絵を描くのが下手な物理学者や将軍はいくらでも存在するでしょう。

しかも世界にはラスコーの洞窟壁画とは別の壁画が各地で見つかっています。それらがラスコーの洞窟壁画と共通の遺伝子で描かれたとは考えにくいことです。たとえば、オーストラリアのアボリジニも壁画を描いていますが、アボリジニは5万年から12万年前にオーストラリアに移住して以降他の人種との交流は非常に限定的だったと考えられます。

それでも人類の社会環境の変化がある特定の知能に関連した遺伝子変異に有利に働き、その遺伝子が社会の複雑化を促進することで優位性がますます高まるようなことは考えられます。人類の知能の向上が社会を通じて遺伝子変化を加速して行ったことは十分ありえます。

問題を解くカギは遺伝子の変化が平均的にはそれほどの違いを生まなくても平均から遠いレベルでは顕著な違いを生むことにあるのかもしれません。これはIQを含めた身長、体重など身体的特徴の多くがベルカーブと言われる正規分布に従うからです。

NormDsit.png


日本人の男性の平均身長は171cmなのに対しオランダの男性の平均は181cmです。人口は日本が20倍もあるので、オランダの平均181cm以上の人口は日本とオランダはほぼ同じです。ところが190cm以上の身長を持つ男性の数はオランダが日本の5倍です。身長のように正規分布するものは分布の端の方で平均の差が極端に大きな違いを生むのです(詳しくは正規分布とオリンピックメダル獲得の関係)。

IQが正規分布に従うなら僅かな平均の差を生む遺伝子の変化が天才の集団を生む可能性があります。著者たちはまさにそのようなことが人口比で異常なほど大量のノーベル賞級の科学者を生むアシュケナージ系ユダヤ人で起きたと考えます。世界人口の600分の1のアシュケナージ系のユダヤ人が科学系のノーベル賞の4分の1を受賞しているのです。

アシュケナージ系ユダヤ人の平均IQは112程度です。これは他の平均IQ100の民族とそれほど大きな違いはなさそうですが、IQが140以上、160以上と平均から大きく外れた集団の数では極端な差を生むのに十分な違いです。

著者たちの主張が正しいとして、今後進化によって「新人類」とも呼ぶべき隔絶した知能を持つ集団ができあがるのでしょうか。これには大きな疑問があります。生産量の増加に必ず人口増が追い付く、いわばマルサス的世界であった近代以前は、経済的成功、社会的成功はより沢山の子孫を残すという結果につながりました。

確かに近代以前は知能を高くする遺伝子があり、それが金貸しや学者になることで経済的成功を得ることにつながれば、その遺伝子のコピーは増加する、つまりより沢山の子供をもうけることに結びつきました。

環境の変化が選択的に特定の形質を作りだす遺伝子がコピーを作ることに有利に働き、その遺伝子のコピーが増えることで種が変化していく。進化論の中で有利に働く形質とは、生存競争に勝つことと異性を引き付けることでした。

しかし、現代はマルサス的世界から脱出できたように思えます。経済的成功をおさめなくても子供を育てることはできますし、金持ちほど沢山子供を作るという傾向もあまりありません。遺伝子の立場から見れば経済的成功を可能にする能力がその遺伝子のコピーを増やすことには直接関係なくなってきているのです。

現代の人間社会では本当の意味の生死を左右するような生存競争は、少なくとも先進国の中ではもはやありません。異性を引き付ける能力でさえ遺伝子のコピーをより多く作り出すことに貢献するとも言えません。

アシュケナージ系ユダヤ人が中世のヨーロッパで差別され閉鎖的な遺伝子プールを作ることで実際にIQの平均値を高めたとしても、これからも閉鎖社会が続くとは考えにくいでしょう。

グローバル化した世界で知能を向上させるような選択圧が働いたとしても、それがある遺伝子の大きな成功(つまりコピーを増やすということ)に結びつくことはあまりないし、ましてそれが特定の集団の中で支配的な遺伝子になるようなことはほとんどなさそうです。

人類文明はこれからもますます新しい環境に人類を晒すことになるでしょう。しかし、それが文字通りの生存競争を通じて生物学的な進化をもたらすことはないでしょう。人類は種の多様化に向かうより均一化をゆっくり進めていくのでしょう。人類は長い歴史を通じて生存競争に勝ち抜くことが遺伝子コピーを増やすという進化論とは別の世界を作り出すできました。これこそ一番大きな進化ではなかったでしょうか。

参照:
正規分布とオリンピックメダル獲得の関係
未来の人類
ブッシュ大統領の知能指数
ネオテニーの日本人
ダンバー数
イケメン進化論
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この記事に対するコメント
誤字
アフリカで、のところは20年ではなく20万年では、
いつも興味深く拝見しております。当方働く主婦、こうした勉強になるサイトは他にありません。ご活躍お祈りしています。
【2010/06/29 12:48】 URL | 今村 #JalddpaA [ 編集]


双子の研究では数学が一番遺伝との関係が薄いそうです。
【2010/06/29 12:58】 URL | ひがし #67oAcE0k [ 編集]

Re: 誤字
> アフリカで、のところは20年ではなく20万年では、
> いつも興味深く拝見しております。当方働く主婦、こうした勉強になるサイトは他にありません。ご活躍お祈りしています。

今村様、
ありがとうございます。修正しました。
【2010/07/01 23:15】 URL | RealWave #- [ 編集]


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