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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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だからあなたは嫌われる: マーケティング戦略のない原発PR
原発の議論をしていると、原発推進派の言い分が原発のPR活動で十分には伝わっていないように感じられることがよくあります。 私自身は原発の将来性には懐疑的で50年以上の時間をかけて段階的に原発を廃止すべきだと考えていますが、逆に原発の即時全廃は現実的でもないし必要もないと思っています。ここでは個人的な原発に対する賛否ではなく電力会社を中心とした原発のPR活動についての問題をいくつか指摘したいと思います。


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祝島の原発反対運動

祝島と聞いてもあまり知らない人が多いでしょう。瀬戸内海の西の端、山口県に属するこの島は面積が千代田区の約7割の7.67平方キロ、漁業と農業を主として生計を立てている住民の数は五百人程度に過ぎません。

この祝島は、対岸の上関町四代田ノ浦に中国電力が建設を予定している上関原発に反対する住民が9割以上に達していると言われています。この反対運動には反原発派の運動家も参加し、住民と一緒に電力側の調査活動を妨害するなどかなりの広がりを見せています。

祝島の原発への反対運動とスウェーデンの再生可能エネルギーへの取り組みを対比させる形で、日本の原発政策への抗議を行う映画もできました。鎌仲ひとみ 監督の「ミツバチの羽音と地球の回転」です。この映画は一般の映画館では上映されないので、なかなか観ることはできないのですが、映画の上映会を開催すること自身が上関原発への反対運動の一部になっています。

上関原発は経済的には地域経済に莫大な利益をもたらすと考えられます。原発施設への固定資産税や電源三法による交付金(上関原発の場合初年度合計で3百億円近くが見込まれます)、さらに原発が稼働を始めた後は多くの就業機会を提供します。過疎に悩む瀬戸内海の小島には本来であれば非常に魅力的な話のはずです。

実際、原発予定地のある山口県は上関原発に前向きで、中国電力に対しては用地造成のための公有水面埋立免許が県から与えられています。また、原発が建設される当の上関町も原発推進派が6割を占め優勢です(中国電力社員100名が町長選挙のために不正転居を行ったと書類送検されるような問題も起きていますが)。

上関原発への反対は絶滅危惧種であるカンムリウミスズメの生息地が近くにあるなどの自然保護や巨大な原発が景観を破壊するなどの理由もありますが、何と言っても最大の理由は原発ができることで放射能汚染や原発事故での被害の懸念があるからです。反対派は原発の予定地近くに活断層が新たに見つかったことも指摘しています。

祝島の反対運動は関係者の間では大きな注目を集めていますが、全国的にはほとんど無名に近いのは、成田闘争のように機動隊員が殺されたり、大規模な破壊が行われたりされていないからでしょう。

しかし、中国電力からすれば原発の建設がどんどん先延ばしにされたり、地域住民と鋭い対立を繰り返すのが良いはずはありません。また原発建設は地球温暖化対策として今後も計画されていますが、全てが祝島同様あるいはそれ以上の反対運動が起きることも予想されます。

原発推進派の考えでは原発は安全で地球温暖化を防ぐクリーンなエネルギーのはずです。しかし、政治的な動きとは関係なく地域住民や一般の人の多くが原発に対して不安、不信を持っていることは間違いありません。なぜ原発推進派のそのような考えが伝わらず、原発に対し強い反対運動が起きてしまうのでしょうか。

1.PRのターゲットは誰か

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上の図は原発を日本国民がどう思っているかを調査したものです。原発を維持または推進していくことは8割近くの支持があり、即時廃止を求める意見は1.6%しかありません。反面積極的に推進するまで思っている人は1割以下で、日本国民の約半数は推進はしても慎重に行うことを求めています。

反面原発の危険に関して大半の人は不安に思っており、「安心だ」と言いきる人は6.1%です。原発の即時全廃を求める人ほどではありませんが、ごく少数派にとどまっています。

つまり日本国民は原発は必要で今後とも増強をすべきだとは考えているが、危険性については不安を持っていて、とても全面的に原発を信頼しきってはいないということになります。

原発に安全だと思い積極的に推進すべきだと思っている人に原発のPRをする必要はないでしょう。逆に原発に強く反対する人は何を言っても聞く耳を持たないでしょう。そのような人は反原発団体に属することも多く、理屈とは別に自分たちのコミュニティーの立場として原発に反対します。

したがって、原発のPRは積極的には原発に賛成することはなくても、原発の有用性は認めているが、原発の危険性には不安を持っている人達ということになります。

このような人は数も多く社会でも中核的な存在なので、この人たちが強い原発推進派にならないまでも一定の理解を原発に持ってくれれば原発推進派にとって大きな力になるでしょう。

さらに無関心だったり、小難しい話は苦手と言う人もいます。このような人もかなり数は多いのですが無関心派もいったん自分の住んでいる近くに原発ができるとなると一変する可能性があります。できれば原発の説明はそれほど高い教育を受けていない人でも理解し納得できることが大切です。

電力会社の原発のPR資料を読むと、どうも相手の立場や関心にきちんと答えていないのではないかと思えることが多々あります。また、子供向けの原発の資料は社会の勉強には良いかもしれませんが、子供に原発のPRをしても反対運動の抑制に役立つとはあまり思えません。「わかりやすい」ことと「子供向け」とは違います。

2.原発の利益ではなく危険への不安に焦点を当てる

100万錠に1つ致命的な毒性を持つ錠剤を飲むとしたら、いくら貰えば飲むでしょうか。金輪際飲まないという人も多いと思いますが、100万円くらい貰えば飲む人は結構いるかもしれません。これを確率論で考えると、100万円なら飲むと言う人は自分の命に100万円の100万倍たつまり1兆円の値段を付けていることになります。

命は一つしかありませんから、1兆円くらいの価値があると考えても不思議はないのかもしれませんが、同じ命の値段で向こう1週間絶対に自動車事故で死ぬことがないと保証してくれるならいくら支払うでしょうか。

1万円以上支払うと言う人は少ないでしょう。1千円でも嫌、1円も払わないという人も多いかもしれません。もちろん向こう1週間絶対に自動車事故で死なないことをどうやって保証するのかという至極まっとうな疑問はありますが、そこを無視すれば向こう1週間の間に交通事故で死ぬ確率は概ね100万分の1です。

同じ命の100万分の1の値段に何桁もの差がつくのは、人間は新たな危険性が付け加わることは、はすでに存在する危険よりずっと大きく感じるということです。これは従来の100%合理的な人間を前提とした経済学とは違った観点で経済を考える行動経済学の分野で比較的最近問題にされるようになった事実です。

経済学的に考えれば不合理な人間の反応も進化生物学から考えれば当たり前のことに思えます。人類の祖先たちは目の前に食べものがあっても危険を察知したら、危険と食べ物の確率的期待値の比較などはせず、とにかく危険から逃げ出すように進化してきました。危険に対する敏感さは人類のDNAに刻み込まれているのです。

原発のPRでは原子力発電の優れた点、温暖化ガスの抑制、資源確保と価格の安定性などが強調されます。しかし、原発の利益がいかに大きくても、危険性に対する理解を得られなければ、目の前の果物を放り出してライオンから逃げ出した先祖のように、原発が近隣に建設されることになれば強い反対にまわる可能性があります。

原発のPRはメリットに焦点を当てるのではなく、危険に対する認識を変えることを力点を置くべきでしょう。例えば次のような疑問があります。

(1) 原発は地震で大丈夫なのだろうか。地震で原発内で火災が発生したというような話を聞くが、大地震が起きたらどうなってしまうのだろうか
(2) 原発から放射性物質が大量に排出されているという話を聞くが本当なのだろうか。原発の周辺で奇形が多発したり化け物みたいな魚が取れたという話を聞くが本当なのだろうか
(3) 原発は大きな河くらいの温排水を出すと聞いた。そんなことをして環境は持つのだろうか
(4) 原発の寿命が終わった時、放射能の塊のような原発の残骸をどう処理するのだろうか。放射能は何万年も消えないと聞いたが、そんなものの管理ができるのだろうか
(5) メルトダウンが起きると大爆発で原発何十発分の放射能が撒き散らされるらしい。これは周辺住民にとってはこの世の終わりみたいなものではないだろうか
(6) プルトニウムは物凄く危険なものだと聞いた。そんなものを燃料にしたり廃棄したりするのは大丈夫なのだろうか。核兵器の材料になるらしいがテロで盗まれたらどうするのだろうか

このような疑問に適確に答えて納得感を持ってもらうのがまず必要です。もし答えなければ、反原発派が「原発は放射能垂れ流し放題」などという情報を吹き込むと知識のない人は信じるしかありません。そして人は一度信じたことを変えることは負けを認めることになるのでしたくないと思うものです。

3.再生可能エネルギーを敵視しない

原発推進派の人に再生可能得エネルギー、太陽光や風力による発電への期待を離すと、口を極めて再生可能エネルギーの問題点を指摘します。経済性がない、安定供給できない、そもそも電力として品質が劣るなどです。

そのような指摘をわざわざしなくても、再生可能エネルギーがなかなか普及しない、少なくとも自分の家が再生可能エネルギーの供給を受けることがない人は、それほど再生可能エネルギーを盲目的に信じていたりはしません。

再生可能エネルギーの悪口を言うのではなく、むしろ原発が再生可能エネルギーの普及を促進する、再生可能エネルギーと補完的な存在であることを強調した方がよいでしょう。できれば原発所内に太陽光発電や風力の施設を作って、所内の電力を賄うことをしても良いくらいです。

現在の再生可能エネルギーは原発の代替にはなりえません。それならば、再生可能エネルギーとの共存を強調することは原発にとってプラスになることは間違いありません。

4.システムとしての原発を理解してもらう

原発はシステム全体として事故が危険なメルトダウンが簡単にはつながらないように作られています。これは元は軍隊用語のdenfence in depth、縦深(じゅうしん)防御または深層防御と呼ばれる考え方です。

原発で事故を敵と考えると、敵が侵入しても深い陣地で順次敵の兵力を撃滅するように、何重にも安全策を講じることで、致命的なメルトダウンが起きないようにしています。逆に言えば事故は起きることはあるし、事故対策がいくつか失敗することはありうるわけです。

このような考え方はとても十分に理解されているとは思えません。結果的には「地震が起きて冷却装置が壊れたらもうお終いだ」といった話が広がってしまっていますし、柏崎刈羽原発が新潟沖地震に遭遇して火災が発生しただけで、「地震で原発が安全でないことが証明された」といった話になってしまいます。

また科学者、専門家と称する人たちが「ここには今まで知られていなかった活断層がある」と言うと、今までの安全対策全体が瓦解するような印象を与えてしまいます。

ただ安全だ、頑丈に作ってあると主張するだけでは「想定外の揺れがあったらどうする」と言われるだけです。どんな揺れにも絶対に壊れない建造物などありませんし、もし作るとしても莫大な費用がかかってしまいます。

原発は頑丈だから地震に強いのではありません。それもありますが、原発全体がシステムとして事故の影響を漸次吸収するように設計されているから安全なのです。

縦深防御は簡単ではありませんが、特別な高等教育を受けた人間でなければ理解できないようなものでもありません。原発がシステム全体の仕組みとしてどのように安全対策を行っているかの説明に「騙されてはいけません。原発は危険なのです」とばかり言う人は次第に説得力を失うでしょう。

5.どうやって伝えるか

一番の課題は原発のPRをするにしても、どうやって対象となる人に言いたいことを伝えるかでしょう。「原発は地球温暖化を防ぐクリーンエネルギーです」とテレビコマーシャルを流してメリットばかり強調してもあまり効果がないことは説明した通りです。

反原発の宣伝、たとえば「ミツバチの羽音と地球の回転」はドキュメンタリーという形で知的な雰囲気で反原発を訴えます。原発がなくなってどうするのかという問いかけにはスウェーデンが再生可能エネルギーの活用で電力料金を下げていると語りかけます。

実はスウェーデンの電力料金は別に日本と比べて安いわけではなく(電力料金は基本料、契約電力により差、使用量や時間帯による違いがあって比べるのが元々難しい)、電力のうち日本の25%を上回り40%が原発なのですが、本当のことをあまりちゃんと言っていないだけで嘘は言っていません。

これに対し原発を推進する電力会社は原発によるバラ色の未来をきれいなパンフレットにしたりするのですが、図柄がきれいだったり、口調が素人向けに簡単にすることで、かえって素人を誤魔化そうという印象すら与えかねません(本当は小中学生向けの原発の解説書は内容が相当高度でこれはこれで問題がある)。おまけに縦深防御のように一般人にとって本当に重要なことは書かれていません。

むしろホームページで原発の持つ危険や不安をどのように解決しているかをきっちりと解説するような方法の方が効果的でしょう。このようなことは今でも行っているのですが、電力会社どころか原発ごとにバラバラに説明されています。もっと練り上げたものを作って全体で共有する方が効果的です。

過去の事故の例やデーターの改竄のような事例もきちんと積極的に見やすい形で公開していくべきです。これも実際にはちゃんと行っているのですが、いかにもお役所的な文体で書かれたものも多く、統一もされていません。「電力会社には隠蔽体質がある」ということへの反論は必要以上にはっきりと判り易く情報公開を進めるしかありません。

原発にはマーケティング戦略が必要


原発の安全性は工学的な問題です。つまり技術的事実を積み上げていけば、本来は合意できる部分は多いはずです。ところが、現実は根拠の有無とは無関係に「原発は危険だ」はては「原発と核兵器は同じ穴のムジナだ」といった意見がまかり通ってしまっています。

菅首相は消費税の影響で民主とが負けたと言われたことを「説明不足だった」と釈明しました。本当は自民党も消費税上げをマニュフェストに掲げていましたし、比例区ではその自民党より5割近く多くの票を獲得しているので、事実認識自身が間違っていると思いますが、原発の方は明らかに「説明不足」です。

丁寧で粘り強い説明をするのではなく、札束で「説得」しようとしてもかえってうまくいきません。それはマーケティング戦略がないのに突撃営業で売り込もうというのと同じです。無理な営業は軋轢を生みます。

原発に必要なのは腕力営業ではなくマーケティング戦略です。マーケティング戦略は顧客を見極め、効率的に資源を配分します。それがなければいつまでも原発は嫌われ続けるでしょう。
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この記事に対するコメント

つまらん爺さんのブログだな
地域住民自身が必要かどうか判断すればいい
リスクを負わず電力を消費するだけの爺がえらそうに説教すんなよ
この人相当頭悪い
【2010/08/18 15:23】 URL | ああああ #- [ 編集]


原発問題について、賛成、反対、それぞれ意見がありますが、
中立的に物事を見て、情報を整理されるこちらのブログは大変参考にさせて頂いています。
また、原子力を長期的なプロセスで、撤廃していくべきという考え方にも、共感するものがありました。

原子力(核融合も含めて)が、技術的に確立されたとしても、それは一部の限られた技術です。私たち消費者が、エネルギーに依存している以上、利権や隠蔽の温床になる可能性もあるように思います。
次世代エネルギーを検討する場合、その資源が偏在しないこと、地域レベルで自給自足できること、誰でも扱える技術であることが検討されるべきだと思いました。
かといって、自然エネルギーにも問題点が多いですね。

これからも、更新を楽しみにしています。
【2010/09/07 16:27】 URL | ps #VWFaYlLU [ 編集]


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