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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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急成長企業はなぜ体育会系なのか
Chorei.jpg
本文と写真は関係ありません


会社は従業員との自由で活発なコミュニケーションを行い、規則やノルマより創造性や積極性がいつも優先される。意味もない残業や上司への奉仕は必要がなく、必要な能力の育成に会社は積極的に援助をしてくれる。こんな会社で働きたいと誰しも考えます。しかし、そうもいきません。雇われる側から見れば、そんな会社は滅多にないし、雇用する側から見れば、そんなことをしても業績が伸びるとは限らないからです。

むしろ実態は急成長した企業のほとんどは上下の厳しい、創造性などより気合と根性を重んじる、言ってみれば体育会的な会社です。そしてその傾向はITベンチャーのような新しい企業でも、と言うよりそのような会社ほど強くなります。どうして会社は成長するために体育会的な秩序と規律が必要なのでしょうか。現実は理想となぜそんなに違うのでしょうか。

一つには日本のベンチャー企業の多くはグーグルやヤフーのようなに新しい技術やビジネスモデルの提供を行うのではなく、ウェッブサイトの運用やシステム開発の下請けのような、ありふれて付加価値のあまり高くない事業を行っていることです。

もちろんアメリカでもグーグルのような革新的な企業が四六時中現れているのではないですが、大企業や大学から飛び出して、高度な技術を基にした製品の開発で事業を興そうとするベンチャー企業は次々に生まれてきます。ユニークで競争力のある製品を生み出すためには、言うことは良く聞くが創造性はないような社員ばかりでは困ります。

これに対し、製品やサービスで差別化が難しければ、営業力で売りまくる、価格競争力を保つためにコストを極限まで圧縮することが重要になります。必要なのは管理の徹底です。ところが、管理の徹底は小さな企業では簡単ではありません。社員を怒鳴りつけても陰で何をするかわかったものではありませんし、給与を下げても人が逃げ出す一方では経営が成り立たなくなります。

急成長した会社を見ると、多くが金太郎飴のような均一な組織を横並びで沢山作ることに成功しています。たとえば昔大阪有線と呼ばれたUSENという会社があります。この会社の創業者は有線放送をが売れる見込みの潜在顧客数を調べ、一定の潜在顧客数ごとに営業を置き、一定数の営業毎に営業課長、さらに営業所長を置くという組織を作り上げました。

潜在顧客数が同じなら、売れ行きが悪いのは営業の能力のせいになります。営業の数が同じなのですから、管理を徹底して売り上げを上げられないのは営業課長、営業所長の責任になります。

このような組織が出来上がれば、営業の人事考課は売上の数字を見るだけで良いことになります。言い訳は許されず、数字の上がらない人間は減給、解雇をし、数字の上がる人間はどんどん昇給、昇進をさせることができます。

コスト管理もコスト構造を同じにしてしまえば、コストがかさむのは無能な証拠と考えてよいことになります。会計上の数字で管理も人事考課もできるわけですから、最初のビジネスモデルがしっかりしていれば企業は組織のコピーを作るだけで急激に成長することができることになります。

このような会社は横並びの組織でできるだけ同じことをする、創意工夫があるとしても同じ会社で同じことをしている同僚を少し出し抜くことができればよいことになります。何をどうすべきかのモデルがはっきりしているのですから、後は頑張りが大きい方が良い成績を上げることができます。

このように均一な組織のコピーの大量生産で急成長する会社の弱点は変化に弱いことです。消費者が製品やサービスに飽きる。まったく別の切り口から大企業があるいは他のベンチャー企業が製品を出してくる。政府の規制緩和あるいは強化でゲームのルールが変わる。

このようなことがあっても個々の社員は柔軟に対応する能力に乏しい、それどころかそんな能力を邪魔者扱いしてきたために、有効な対策を打ち出したり、まして事業形態を根本から変えることは容易にできません。

体育会系的な営業主体の会社の多くが、急激に成長した後、突然不振に陥り消え去ってしまうのは、殆どの場合、変化に対して柔軟性がないことが原因です。これに対し既存の大企業が好不況の波を越えて案外しぶとく生き延びるのは、会社が完全には金太郎飴化しておらず、環境の変化に対応する能力を潜在的に持っていることが多いからです。

企業も一種のエコシステムを生きています。生物の多様化のように多彩な能力を持って環境の変化に対応できることが長生きのためには重要です。これに対し均一の組織モデルで作られた会社は単一の作物を作っている畑のようなもので、害虫の発生や不順な天候に対する抵抗力が高くありません。

それでも急激に成長しようとすれば早道はモノカルチャーの会社を作ることです。そうでなければ、均一な組織のコピーで成長するのではなく、革新的でユニークな製品、サービスを生み出す会社を作らなければなりません。その点では失敗を許さない日本社会は、知恵や技術を集約した事業を起こすのに適しているとは言えません。高付加価値で創造力がカギのビジネスでなければ、体育会系の会社が成長には有利でしょう。かくして日本はモバイル時代でも、朝の朝礼は欠かさない営業部隊の作る会社ばかりとなるのです。
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