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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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官製プロジェクトはなぜ失敗するのか
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菅首相はフランスで開催されたサミットで日本の新たなエネルギー政策「サンライズ計画」を発表しました。2030年を目途に可能な住宅全てに太陽光パネルを設置するなどして、日本のエネルギー消費に占める自然エネルギーの割合を大幅に高めようというのです。

計画では太陽光発電のコストを2020年までに3分の1に、2030年までに6分の1にするとしています。コストが何を意味するのかはっきりしませんが、仮に発電コストそのものだとすれば、現在の1kW時40円以上と火力や原発の4倍以上する太陽光発電はコスト的にも他のエネルギー源に対し同等以上の競争力を持つことになります。

しかし、サンライズ計画という言葉はデジャヴのように、かつてのサンシャイン計画と呼ばれたプロジェクトを思い出させます。サンシャイン計画は今から約40年前の1974年にスタートしました。第1次石油ショックの後、石油依存と環境問題を抜本的に解消するために、西暦2000年を目指して、太陽光発電、石炭液化、地熱発電の開発を促進しようとしたのです。

サンシャイン計画には2000年に終了するまでに累積1兆円以上の国家資金が使われました。しかし、香川県の仁尾町に建設された太陽光発電施設が計画通りの能力を発揮できないなど、目に見える成果を上げることはできず、いつの間にか消え去っていきました。そしてサンシャイン計画終了から10年経った今、サンシャイン計画と名前も中身も瓜二つのようなサンライズ計画が発表されたのです。

サンシャイン計画がまったくの失敗に終わったと言うのは異論があるかもしれません。太陽光発電で日本が当初世界で圧倒的な強さを発揮したことにサンシャイン計画の補助金が役に立ったことは考えられます。

サンシャイン計画の頃と比べれば技術の進歩は著しいし、太陽光発電のような工業製品なら強力な支援策で普及を促進して生産量を高めれば学習効果が働いて価格は加速度的に低下するのではないか。サンライズ計画そのものというより太陽光発電を支持する人の多くは、そのような考えを持っています。その真偽は、いったん横に置いて、サンライズ計画のような「官製プロジェクト」の問題点を考えてみたいと思います。

官製プロジェクト、国家プロジェクト、国策プロジェクト、言葉は似ていますが、少しづつニュアンスは違います。「国策プロジェクト」は国が大小の支援をしてプロジェクトの御通しをする、「国家プロジェクト」は国が先頭に立ってプロジェクトを引っ張る。「官製プロジェクト」は特に日本の場合は官僚たちが自分の縄張りを広げるために「ぶち上げる」というニュアンスがあります。しかし、ここでは重なる部分が多いということで、それほど厳密な区別をしないことにします。

国家プロジェクトとして大きな成功を収めた例として、第二次世界大戦中原爆の開発を行ったマンハッタン計画と人間を月面に着陸させたアポロ計画があります。どちらもアメリカの国家プロジェクトで、現在の貨幣価値で20兆円に達する多額の国費が使われました。

マンハッタン計画は1942年の着手から3年で原爆を完成させ、広島と長崎で実際に使用されました。アポロ計画は1961年にケネディー大統領が「60年代中にアメリカ人を月に送り込む」と議会で演説した通り、1969年にアポロ11号は3人のアメリカ人飛行士とともに月面に着陸しました。

二つのプロジェクトに共通するのは明確な目標設定と強力な競争相手の存在です。アメリカにとってナチスドイツより先に原爆を完成するというのは至上命題でした。アポロ計画はそれまで人工衛星、有人衛星すべてソ連の遅れをとっていたアメリカが威信をかけて達成すべきものでした。

プロジェクトとは達成時期、使用できる資源を定めて実現にはリスクのある目標に向けて組織を動かすことです。マンハッタン計画もアポロ計画もプロジェクトとしての条件を備えていました。

そして強力な競争相手の存在と戦争(アポロ計画も冷戦の産物です)という環境は組織が陥りがちな官僚主義を乗り越える武器でした。第二次大戦中はソ連でさえ驚異的な高効率で兵器の生産をすることができたのです。

日本の場合はどうだったでしょう。明治維新や戦後の復興・高度成長のような先進国に追いつき追い越せの時代は、官製プロジェクトは有効でした。モデルは先進国にあり、やるべきことに議論の余地はありませんでした。「やればできる」と判っていることは途中でプロジェクトが頓挫しそうになった時には何より力になりました。

その点マンハッタン計画は「本当にできるのか」という意味でも大変なプロジェクトでした。最先端の原子物理学の成果をウラン濃縮、原子炉、原子爆弾という段階を踏んで具現化することは科学者のドリームチームとも言うべき強力なスタッフの献身的な努力があって初めて可能なものでした。

それに比べればアポロ計画は本質的には強力で信頼性の高いロケットエンジンを開発することが最重要の課題でした。大量の資源を目標達成までの限られた時間内にどのように使用していくかという管理能力が何よりも重要でした。

一見明瞭な目標が実は全然不明確だという場合もあります。1980年代日本は人工知能を実現するという触れ込みで「第5世代コンピュータプロジェクト」をスタートさせました。1千億円以上を費やしたこのプロジェクトは人工知能どころか、多少でもそれに近い成果を上げることなく消え去っていきました。

現在でも人のように考えるコンピュータはありません。自動翻訳のようなものさえ、「実用的」と言える製品はありません。プロジェクトがスタートした頃「どのような技術に基づきどんなコンピューターを作る」かというプロジェクトの目標はありませんでした。

マンハッタン計画は壮大なプロジェクトでしたが「ウランの核分裂で発生する中性子で次の核分裂を起こせば、連鎖反応で莫大なエネルギーが得られる」という基本原理はありました。人工知能にそのような原理は1980年ごろも今も存在しません。

間違いは「成果」と「具体的目標」を混同することにあります。技術の世界ではこれは致命的です。「考えるコンピューター」は成果ではあっても具体性のある目標ではありません。サンシャイン計画も「石油依存と環境問題の解決」という成果は決められていましたが、中身は「太陽エネルギーを有効利用する」という漠然としたものでした。

それでも戦争のようにコストを無視してとにかく実現するという意志があれば、サンシャイン計画の場合でも目標は明確だったと言えるかもしれません。しかし、実際には太陽光にしろ地熱発電にしろ「既存のエネルギー源と競争力のある経済性を持つ」という暗黙の制限がありました。

コストの削減は官製プロジェクトの一番苦手な部分です。コストの削減には市場での競争を通じて企業がそれこそ身を削るように行うものです。これに対し官製プロジェクトの主な道具は補助金です。補助金はコストを高止まりさせても削減させる方向には向きません。

プロジェクト成功の可能性が疑わしい時、官僚の得意な言葉に「ポテンシャル」があります。自然エネルギーの活用でもNEDO(新エネルギー・総合技術開発機構)の風力発電、太陽光発電の設置場所として「ポテンシャル」のある場所の面積がデータとしてよく参照されます。

どの程度のポテンシャルがあるかは大切なことですが、実際にそのポテンシャルを形にするのはまた別の話です。民間企業でポテンシャルだけの事業企画はなかなか実現には向かいません。

官僚にとってポテンシャルとは責任を取らずに予算を取る便利な道具です。不可能と言うわけではない、うまくいけばこの程度の見込みがある。要するに鉛筆を舐めているだけなのですが、同じロジックで沢山の車の通らない高速道路や飛行機が使わない空港ができあがりました。

サンライズ計画はどうなるでしょうか。40年という時間を経て太陽光発電の技術が飛躍的に進歩したことは間違いありません。しかし、目指す「成果」もずっと大きくなっています。原発の代替、つまりコスト的、品質的に既存電力と競争力のある太陽光発電システムの開発です。

一番の問題はコスト削減という官製プロジェクトの目標としてもっとも不適当なものを中心に据えていることです。2020年までに3分の1、2030年までに6分の1というコスト削減は可能かもしれません。しかし、そのために補助金で日本の全住宅に太陽光パネルを付けるという政策は納得できるものではありません。

これは右足が沈む前に左足を前に出せば水の上を歩けると主張しているのに似ています。補助金を出せば市場原理が働くなり、太陽光発電の値段は、補助金政策が例えば1kW時40円での買い取りであれば、そこに張り付くでしょう。

もし太陽光発電のコストが下がらず、補助金政策を続ければ1千万戸の住居に太陽光パネルを設置するだけで10兆円近くの国費を投入することになります。40円以上の太陽光発電の買い取り価格で電力料金との逆ザヤを続ければ、毎年1兆円以上の補助金が必要です。それでカバーできる電力は全消費量の数%にしかなりません。

もちろんこれは随分と悲観的な見方かもしれません。日本では補助金漬けになって太陽光発電のコストが下がらなくても、世界市場で熾烈な争いで価格が下がり、太陽光発電がずっと安価に行えるようになる可能性はあります。

しかし、その場合補助金漬けの日本で日本メーカーは携帯電話がそうであったように、特殊な規格に守られたガラパゴス太陽光発電市場を作ってしまうかもしれなません。過去の歴史はそうなることを教えています。

サンライズ計画をプロジェクトと呼ぶのはあまりにも不適当でしょう。そこには「成果」に対する漠然とした願望はあっても、国家として責任を持って達成すべき目標も方法論もありません。あるのは補助金で沢山太陽光発電をばら撒けばそのうち安くなるだろうという、大金を費やすにしては安易な見込みに過ぎません。

いや恐らく大金がサンライズ計画に注ぎ込まれることもないでしょう。原発停止が続く中、毎年1兆円以上も逆ザヤで太陽光発電を買い続けることは極めて困難です。その費用は恐らくすべて消費者に電気代の値上げいう形で負担してもらうしかありません。その余裕はないはずです。

サンライズ計画がアポロ計画に近いところがあるとすれば、莫大な費用だけでしょうか。日本の全住居への太陽光発電パネル取り付けや逆ザヤの電気の買い取りを続ければ、総投資は20兆円を軽く超えるでしょう。アポロ計画もマンハッタン計画も上回る金額です。そしてそれでどんな「成果」が得られるか。結果が出るのは誰も責任を取る必要もない先の話であることだけは間違いありません。
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この記事に対するコメント

不断の決意が無いと難しいと思います。論理的に太陽光パネルを1000万世帯で取り付けるのが最良の策なのだということを説明できれば、或いは国民は犠牲を承知で全力を尽くすかもしれません。しかし他にも色々と良さそうな選択肢がありそうなところを何の議論の過程を経ずに「はい、これね」といわれても、国民が一丸となって頑張るわけもありません。しかも言い出しっぺの人間は明らかに数年以内にはいなくなっているのが分かりきっている状況ですから。無責任な人間が多すぎる。我が国の抱える問題は非常に厄介です。
【2011/06/01 03:40】 URL | ベトナム株式 #XzNY5sGc [ 編集]


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