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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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カンバン方式
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KANBANは世界で通用する日本語
トヨタ生産方式ともよばれ、トヨタ自動車の副社長だった大野耐一が中心になって作り上げたトヨタの効率経営の要の生産方式です。海外でもJIT(Just In Time)、Lean Manufacturingあるいは単にKabanという呼び名で海外でも通用する日本発の経営技術として知られています。カンバン方式は通常の生産方式が、
販売計画→生産計画→必要部品量の予測→部品の調達→生産→出荷→販売
という順番であるのとまったく反対に、
  販売実績→売れた分の出荷→出荷した分の生産→作った分の部品調達
という流れで生産活動が行われます。カンバン方式では販売計画とそれに基づく生産計画からは出発しません。あくまでも売れた数だけ作り、作った数だけの部品を調達します。工場の中では生産実績の報告ではなく、作った数、使った部品の数をカンバンと呼ばれる板(ラミネート加工した紙などが使われます)を生産現場の前工程に渡して、前工程ではもらったカンバンの分だけの生産を行います。カンバンは製造工程とは逆の順に流れて、最後は部品や材料を製造するサプライヤー(部品業者)にカンバンが渡されます。

カンバン方式ではない販売計画、生産計画から出発する生産方式はコマンド・アンド・コントロール・システム、中央統制型の生産方式です。コマンド・アンド。コントロール・システムでは集中された情報システムが、計画生産量を作るのに必要な部品、材料を予測し各工程、サプライヤーに割り当てます。必要と考えられる部品、材料は各工程に普通は在庫として保有されます。これに対し純粋なカンバン方式では、部品製造、材料の調達は下工程からのカンバンによって開始されるので、理想的な状態では在庫はありません。また、計画と実績の相違による過剰在庫、在庫不測もありません。集中化された情報システムも不要で、情報の流れはカンバンが行います。

カンバン方式はトヨタの生産効率を飛躍的に高め、世界一をうかがう現在の地位を作る基礎になりました。トヨタはカンバン方式を自社内だけでなく、部品業者にも広げ部品業者の生産性も高めました。さらに最近では郵便、銀行など各分野にカンバン方式で生産を高めるために、トヨタ出身者が経営に参画することもあり、影響力をますます高めるようになってきています。

カンバン方式ではカンバンが来ないと生産活動を行えないので、どこかの製造工程にボトルネックがあると、稼動しない製造工程が目に見える形でボトルネックの存在を教えてくれます。カンバン方式では7つの無駄というのがあって、その最大のものが、このボトルネックのための「手待ちの無駄」と言われています(「手待ち」を「手持ち」と誤記することもあるようですが、「手持ち無駄」は「在庫の無駄」と呼ばれます)。どの工程も手待ちがなく、スムーズに流れるためには、各工程は無駄なく製造を行わなければなりません。また、ある工程の生産性が高まると相対的に他の工程はボトルネックになってしまうので、どの工程も競争して不断に改良、改善を続けなければいけません。不断に改善を続けることを普通「カイゼン」とカタカナで表記します。KaizenはKanbanと同様に英語表記でも通用する言葉になっています。むしろ、カンバンのような道具より、不断の「カイゼン」がカンバン方式の本質と言ってよいでしょう。

カンバン方式に問題や限界がないわけではありません。まず、常識的に考えても在庫がまったくゼロでは調達に時間のかかる部品、材料の不足は発生してしまいます。多くの材料は、石油や鉱物資源などが原料になっていて、カンバン方式で調達することは不可能です、結果としてトヨタがカンバン方式を推し進めると部品業者、材料業者が何らかの形で在庫を持っている必要が出てきます。また、必要な部品、材料を必要な時に持ってくる(Just In Timeの語源です)が要求される結果(トヨタにはそもそも在庫を置く場所がないことも多い)、トヨタの周りの喫茶店が部品業者であふれていると言われたりすることもあります。 さらに、少量で高頻度の配送を強いられることで交通渋滞が起きると言われることもあります。つまり、トヨタはカンバン方式を貫くための費用を、部品業者、材料業者さらに社会に負わせているというのです。そもそもカンバン方式はトヨタの圧倒的に強い販売力が基本にあって、それが部品業者に対する強い交渉力となり、自分の効率化のために周りを犠牲にしているという批判が巨額の儲けを上げるトヨタに対してあるのでしょう。

トヨタに対する批判がまったく的外れというわけではないでしょう。ただ、トヨタが他の自動車会社やメーカーと比べ、特別悪い納入先というわけではありません。むしろ、安定的に大量の部品調達を行い、生産改善指導も行う信頼できるパートナーとして振舞うのが基本と言っても良いでしょう。ただ、生産改善指導というのは要は原価を丸裸にすることでもあるので、損はさせないがぼろ儲けもさせないという批判は概ね正しいでしょう。

むしろ、カンバン方式を効率化の代名詞として他の企業、産業全般に広げるときに問題が生じる可能性があると思います。カンバン方式はカンバンのような道具立てより、カイゼンと、計画ではなく実績に基づいて生産活動を行うというプロセス設計に本質があることを忘れてカンバンを形だけ導入しようとしても成果は得られないでしょう。また、カンバン方式は自動車産業という多くのオプションがある大量生産、高付加価値の組み立て産業で、もっとも威力を発揮するというのは事実で、他産業での効果は必ずしも保証されないことは認識すべきでしょう。トヨタが実質世界一の自動車となった今、カンバン方式がドグマとして盲信されないように配慮することを忘れてはなりません。
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テーマ:経営 - ジャンル:政治・経済

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