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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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埋没コスト
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Aさんが友人のBさんに3年前に2百万円で買った中古のドイツ製スポーツカーを売りたいと言ってきました。Bさんが「3年前に2百万円で買ったんだから、百万円ならいいだろう」と言うと、Aさんいわく「冗談じゃないよ。買値は2百万円かもしれないけれど。修理費に150万円もかけたんだ。250万円でなきゃ、売れないよ」

Aさんが頑張っても、修理でよほど性能が向上したのでもない限り、BさんはAさんの要求を飲むことはないでしょう。遣ってしまったが、もはや取り返せないコストを埋没コスト(Sunk Cost)と言います。会計的に定義すれば、簿価と実際の値段との差が埋没コストということです。しかし、このような会計的な定義とは別に、人間は自分が使った経費によって、ものの値打ちが高くなると錯覚する傾向があります。冒頭の例では修理費を遣ったAさんは、かけた費用で実際以上に自分の車の価値が上がったように思ってしまっていますが、他人のBさんにとってそれは意味がないことです。

埋没コストが広く認められるようになったのは、1968年のノックスとインクスターという二人の社会心理学者の行った研究からです。ノッククスとインクスターが競馬で賭けをする人を対象に、賭けた馬の勝ちそうな確率を7段階で評価してもらったところ、馬券の購入前の人の平均レートが3.5程度であったのに、購入後の人に評価は4.8になっていたのです。調査の対象者は購入前と購入後の違いしかないので、評価の違いは自分が馬券を実際に購入することで、馬の見方が変わってしまったということになります。

自分が投資したということが、客観的評価を歪めてしまうのは、埋没コストの発生する大きな原因です。買った株が値下がりして、売るに売られず塩漬けにしてしまうことはよくあります。しかし本当は、値上がりの見込みのない株を抱え込んでいるより、いったん現金にしてもっと値上がりの見込めそうな株に買えるほうが良いはずです。そうする人もいるでしょうが、多くの人にはかなり努力のいる決断のはずです。

埋没コストに対する執着は、個人的な意思決定にとどまりません。生産性の低下した工場。訴求力を失ったブランド。見込みのない研究。ゼロベースで考えれば、もはや無駄としか言えないものを持ち続けようとすることは実に多いのですが、過去の投資を価値と考えてしまう心理的要因が強く働いているのは否定できません。

会計制度が埋没コストを正当化している面はあります。もともとの埋没コストの定義にもどることですが、簿価と実際の価値に差があるとき、過去の投資を無駄だと言って捨ててしまうとその時点で会計上損失が発生します。これは会計上の話で、実際の支出はすでに行われていて、そこで損が出てしまっているのですが、株式市場を気にする経営者としては損を表面化させるのは難しいということはあるでしょう。しかし、会計上の損失が発生することを理由にして、過去の投資の存続を正当化してしまうのは危険です。ダメなものはダメとだと認識するのは経営者としては必要なことです。

埋没コストを守ろうとするのと似たような心の動きで、なくした切符に対する対応があります。5千円の観劇券を入場しようとしたとき無くしたと気がついたらどうするでしょう。買いなおす人も多いでしょうが、がっかりして観劇をあきらめる人もいるでしょう。では、切符をまだ買っていなくて、その代金と同じ5千円を落としたことを切符を買うときに気がついたらどうするでしょう。この場合は観劇をあきらめる人が、切符を無くしたときよりずっと少ないことが実証的に示されています。なぜそのような傾向があるか色々説明できるでしょうが、切符を買いなおさないのには、一度設定した5千円という切符の価値を変更したくないという心理が働いているようです。埋没コストが失敗を認めたくないという心理が背景にあるのと共通するものがありそうです。

埋没コストを認めて設備を廃棄する、あるいは落とした切符を買いなおす。このような失敗を失敗として対応策をきちんととることに、人間は抵抗したいという気持ちが強く働くようです。その気持ちは非常に強いので、埋没コストのように過去の投資は無駄ではなかったと無意識に信じ込もうとすることもあります。これは意思決定の間違いを起こす典型的な要因の一つとなっています。過去にこだわり失敗を認めることを拒否すると、値下がりした株を平均価格を下げるといって買い増したり、無理に恋人や配偶者と別れずにいたり、無益な戦争を続けたりとさらに大きな失敗を生むこともあります。冷静に意思決定をしたと思っても判断の基準になる価値判断自身が間違っていては、誤りは繰り返されることになるのです。
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テーマ:意思決定 - ジャンル:政治・経済

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