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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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PPBS ベトナム戦争の「失敗の本質」
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PPBS(Planning, Programming, Budgeting, System) は1960年代にアメリカのケネディー、ジョンソン政権下で国防長官を務めたロバート・ストレンジ・マクナマラが生み出しました。 PPBSでは国防省の予算を徹底した費用対効果の観点で運用します。

マクナマラはハーバートでMBAを取得した後、ハーバーとで経営学の助教授となっていたのですが、第二次大戦中は空軍でORを中心とした経営学の知識の活用をしました。マクナマラのかかわった仕事の一つに、ドイツの降伏後、ヨーロッパ戦線で使用していたB24爆撃機を太平洋戦線に移動するより、新型のB29爆撃機を新たに生産したほうが費用対効果が高いとした分析があります。また、日本人にとっては愉快なことではありませんが、日本爆撃を指揮したカーチス・ルメイ少将(後の空軍参謀総長)の下で、東京や大阪などを焼夷弾で効果的に焼き払う爆撃方法の分析研究を行っています。余談ですが、マクナマラは回顧録の中で、ルメイと「戦争に負けたらわれわれは戦争犯罪人になるな」と話したと書いていますが、ルメイはその後、航空自衛隊創設への貢献に対したことに対し、日本から勲一等旭日大綬章を叙勲されています。

PPBSはマクナマラの分析的、経営的知識を軍に応用したものと言えます。PPBSの成果の一つといわれたものに、B52爆撃機の後継機として開発されていたXB70の開発を費用対効果がないとして中止したことがあります。マクナマラは長距離爆撃機はミサイルより効率が悪いという結論に達したのです。マクナマラは軍人としての経験はあるものの基本的にはビジネスマン(国防長官の前職はフォード自動車社長)で、軍事には素人です。しかし、マクナマラはPPBSを中心としたシステム的、分析的な手法で軍を管理し、軍の意見を覆すことが多いことで知られていました。

ベトナム戦争はマクナマラの在職中(1961-1968)に激化し、最終的にはニクソン政権でアメリカがベトナムから撤退することで終わるのですが、「マクナマラの戦争」と言われるほど、国防長官であったマクナマラの関わりは大きなものがありました。ベトナム戦争は複雑怪奇な戦争です。今でもアメリカで「われわれは負けたのか?そもそもベトナムで何があったのか?」と議論されるほどで、アメリカがなぜ敗北したかを一つの「失敗の本質」で語ることはできないでしょう。しかし、PPBSに象徴されるマクナマラの分析的思考が大きな問題であったとの指摘が行われているのは事実です。

PPBSは基本的にシステム的、分析的なアプローチですから、数字を非常に重視します。経営に数字は欠かせませんし、KPI(Key Performance Indicator)を何にするかは、いつもマネージメントの大きな課題です。マクナマラはベトナム戦争のもっとも重要なKPIとして、ベトコンの死傷者数をとりました。マクナマラの考えではベトコンになりうる人数は有限で、ベトコンの殺戮を続ければ最終的に戦争に勝てるというものでした。戦闘は相手の兵士を殺害するのが主目的であり、殺害数を数えるのは軍では重要な作業なのですが、一定数以上のベトコンを殺せば戦争に勝てるというのはあまりに単純な見方でした。ベトナムでは南ベトナム政府に対する反感、北ベトナムの浸透などで南ベトナム人民がベトコン化が加速化される面がありました。また、北ベトナムの介入、脅迫、暗殺などにより地方の政府末端組織の弱体化の進行など、ベトコンの死傷者数とは別の戦争の展開がありました。

マクナマラはベトナムを何度も訪れていますし、ベトナムの状況に無知だったとは言えないでしょう。北ベトナムへのいわゆる北爆を行ったくらいですから、北ベトナムの介入を知らなかったはずはありません。しかし、PPBSのKPIにベトコンの死傷者数を採用して意思決定を行う中で、KPIでは測定されない様々な要素が抜け落ちてしまったようなのです。いや、そうとしか考えられないような意思決定が多く行われたというのが、マクナマラのPPBSに対する批判として言われているのです。

アメリカ軍は巨大で複雑な組織です。また、軍事は非常に専門的なもので、基本的に生え抜きのスペシャリストである軍人によって運用されます。この点はアメリカ軍も変わりません。PPBSは数字を重視し、システム的な手法を駆使することにより、意思決定を文民が有効に行うことを可能にしようとしたものでした。XB70爆撃機の開発中止のようにPPBSの功績と言われているものも多く、システム的、分析的な軍の予算管理が無意味だったとは言えないでしょう。数字を重んじシステム的に分析を行わなくては、アメリカ軍のような組織を管理することは不可能だったでしょう。しかし、数字を重視すると同時に数字化されないものが脱落してしまう面があるのは確かです。今となれば、マクナマラの意思決定は、ベトナムの前線にいれば常識として理解できることを理解できなかったとしか思えません。

マネージメント、経営にとってKPIの大切さはいまさら言うまでもないでしょう。 バランス・スコア・カードを提唱したキャプランは「測れないものは管理できない」と言っていますが、正確には「測れないものは管理が難しい。まして、現場を知らないで管理することはできない」と言うべきでしょう。数字への過信は時として致命傷になるのです。
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テーマ:意思決定 - ジャンル:政治・経済

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