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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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ゴーン改革の未来
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GMがカルロス・ゴーン氏の率いるルノー、日産グループとの提携を拒否して、今後の行方に懸念が高まっています。一方、ルノー、日産グループも利益率の低下など問題が表面化してきています。特に日産はゴーン・マジックとも言われた急回復が最近息切れし、トヨタ、ホンダが増益を続ける中、減益となり将来への不安説も出てきています。いったい日産はどうなるのでしょうか。

将来の日産を考える前に、日産がルノーの出資を受け入れ、ゴーンが日産の事実上のトップ(当初はCOOだったが、すぐにCEOになった)で乗り込んできたときのことを思い出してみましょう。日産着任の前からゴーンは「コスト・カッター」として知られていました。ルノーのベルギーの工場閉鎖はベルギー政府との軋轢も生じたのですが、ゴーンは実行しました。彼が「日産リバイバルプラン」と名づけて、日産に対して行ったことも、基本はコスト削減です。村山工場の閉鎖、ディーラー網の再編と直営ディーラーの20%削減、世界で14万8千の従業員のうち2万1千を削減、1145社の納入業者を600に絞込み、などの諸策が功を奏して、日産は倒産寸前の状態から驚異的な回復を遂げ、着任の翌年には早くも史上最高益をあげました。

好業績を見て最初は懐疑的、批判的だったマスコミの論調も一転し、ゴーン氏は一躍ヒーローとして扱われることになりました。一方コスト削減を原資にして最高益を達成したことへの批判もありました。典型的なものとしては、「コスト削減で会社を再建するのは簡単だ。コスト削減で日産の長所、取引先との関係など失われたものは数知れない。今はいいが将来は大きな不安が残る」という論調もよく聞かれました。しかし、この批判は的外れとは言わないまでも、ゴーンの功績をはなはだしく軽く見ていると言ってよいと思います。

まず、コスト削減で業績向上するのは一見簡単ですが、そではありません。アメリカではコスト削減で業績向上を目指すというのは渡り鳥経営者の得意技ですが、うまくいくことはむしろ少ないくらいです。ほんの1-2年の取り繕いはできる場合でも、コスト削減の結果、顧客と従業員の心が離れて、再びコスト削減を行うというデス・スパイラルにはまってしまう方がむしろ多いのです。それどころか、日本では肝心のコスト削減自身もしがらみに囲まれて中途半端に終わり、残ったものは従業員の不信感だけとなることもまれではありません。その意味でゴーンの日産でのコスト削減は社員の志気の向上や、顧客の増加というプラスの結果を生みだし、時間的な素早さも含めて日本では極めて成功した例と考えてよいでしょう。

ゴーンは単なるコスト・カッター、財務屋ではありません。むしろ、テストコースを自らハンドルを握って新車のテストを行い、通勤はポルシェ(事故を起こして明らかになったのですが、今でもそうかは知りません)という車好きです。また、レバノン生まれで、ブラジル育ち、アメリカ、フランスでのビジネスの経験が長いという根っからの国際人で、自ら日本語を勉強し、夫人に日本でレストランを開業させたくらい日本に溶け込もうとしました。これは日本にいる海外のビジネスマンで、特にゴーンのような高い地位にある人間ではきわめて例外的です。ゴーンは車が好きで、日産の社員と一緒に良い車を作って、業績を上げようとしたことは間違いありません。

自動車産業は巨大で高度な技術を集約した非常に複雑な業界です。しかし、自動車会社を評価するのに、簡単な方法があります。それは街を走る車を見て、格好が良いと感じられる車を作っているメーカーは大体うまくいっているということです。これには玄人好みの評価ではなく、むしろ一般のつまり普通に車を買うような人の評価がより重要になります。ゴーンの来る前の日産は、不思議なほど無個性でつまらない車が多かったのですが、ゴーンが着任してから日産の車は、急に格好良くなりました。プリメーラ、シーマなど完成度の点でトヨタに劣っているという批評もあったようですが、アグレッシブで個性と主張があり、乗ってみたいと思わせる車が発売されるようになったのです。ゴーンは車のデザインを変えるため、デザイン部門を技術部門と独立させ、技術や経済性にデザインが妥協を強いられることを小さくしようとしました。また、デザイン部門のトップに他メーカーからデザイナーを招きました。これは日本の自動車会社では、ほとんど考えられないことでした。

ゴーンはマネージメントの責任感を明確にするため、コミットメントという考えを強く打ち出しました(ゴーンが日本に来て間もないころ、前会長が「この会社は危機感がないんだよ」と悠然と言うを聞いて仰天したと書いています)。また、部門間の壁を打ち破るため、CFT(Cross Functional Team)と呼ばれる業務改革チームをいくつも立ち上げました。全体としてみるとゴーンは、日産の問題点を明確に認識し、正しく戦略を立て、着実に実行したと言えるでしょう。ゴーンが腕の良い経営者と言ってよいでしょう。

しかし、過去にうまくいったことが、このままうまくいくかどうかは別です。コミットメント重視は、実質的な部分を見る洞察力を欠いていては、数字だけを追いかける業績至上主義に容易に堕落します。CFTも全社的な展開を目指したVUP(Value Up)プロジェクトを多数作り出してから、数をこなす形骸化の兆候が出てきているようです。さらに、ゴーンがルノーと日産のダブルCEOになって、日本とフランスの往復を繰り返すようになって、次第に現場を見られなくなってきている事実があります。ここで現場を見るとは、ディーラーや工場を大名行列で訪ねて、社員とにこやかに握手する写真を取ることではありません。現場の問題点を直に本音で探るということです。ゴーンはもともとは、問題点を聞き出し理解する能力は非常に高いと思われますが、彼も人間ですから時間がなくてはできることは限られています。

私が一番気になるのはGMを食べてしまおうとした、ゴーンの問題認識です。普通に考えると、規模が小さいことがGMの問題には思えません。売上げに比べ、従業員、工場その他、過剰の資産が多いのは確かでしょうが、そのような資産をたとえば日産の米国工場の変わりに利用しようとしても、GM、フォードの最大の問題と言われる退職者への医療費保険の支払い問題が解決するわけではありません。結局自動車メーカーは格好が良く、性能、品質の優れた車を安いコストで製造し、行き届いたサービスとともに提供する以外に、必勝の戦略などありません。自動車業界はPCなどと比べれば、最終製品を製造するメーカーを頂点に垂直に高度に統合化された産業です。製造業として足腰の弱い国のメーカーは次々に脱落していきました。逆に物作りのインフラが揃っている日本では、いまだにアメリカと比べても多数の自動車メーカーが生き延びています。規模だけでは競争力は決まらないのです。

現段階の結論としては日産の業績の落ち込みは一時的なものと考えられます。ゴーンが日産を離れるときの餞別代りに、多数の新車を一度に発表した反動で業績が落ちただけで、製品ラインの更新が行われれば業績は立ち上がるでしょう。むしろ、魅力的な車を日産がこれからどれだけ開発し続けられるかが本当のキーでしょう。個人的には、新しいブルーバードのデザインを見ると、凡庸な車ばかり作っていたころの日産に少しもどりつつあるではないかと気になるのですが・・・。
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テーマ:経営 - ジャンル:政治・経済

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