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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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日本はイギリスになれるか(3)
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発展する中国の象徴の上海
1980年代に頂点を迎えた日本経済はバブルの崩壊とともに失われた10年とも15年とも言われる停滞期に入ります。1990年から2004年までの14年間の日本の名目経済成長率はわずか10%にとどまります。人口は2005年に1億3千万弱でピークを向かえ、これからは高齢化の進展と人口縮小が同時に進行すると予測されています。

日本が停滞している間に単なる巨大下請け国家と思われていた中国は急速な発展を遂げます。日本が14年で10%成長しかできなかったのに対し、中国は毎年10%内外の成長を達成しました。それでも名目GDPは日本のまだ半分程度なのですが、実質購買力や元が安値に抑えられていることを考えると、すでに事実上日本を抜いているとも考えられます。実際、原油輸入量は日本の2倍、鉄鋼生産量は3倍近くになっていて、中国の動きが全世界の一次産品の需給環境に非常に大きな影響を与えています。

軍事費は名目上日本の防衛費の7割程度の4兆円以下と発表されていますが、信じている人は誰もおらず、実質は2-3倍に達していると推定される上、急速に拡大を続けています。発表している軍事費だけでも、物価とくに人件費が圧倒的に安いことを考えると、日本の防衛費を大きく上回っていることは確実です。内容的にも核兵器、ミサイル、原子力潜水艦を含め、アメリカ、ロシアを除けばもっとも強力な破壊力と攻撃力を持っています。

20世紀の始め、ドイツの急速な発展はイギリスにとって最大の脅威でした。ドイツ民族の国々を糾合し1871年に成立したドイツ帝国は、ヨーロッパで最大の面積(ロシアを除く)と人口を有することになります。植民地をほとんど持たないドイツでしたが、すぐれた科学力を背景に工業化の進展は著しく、ついにはフランス、イギリスに植民地の再分割を要求するまでになります。イギリスは対抗上、19世紀の「栄光ある孤立」を放棄し、ロシア、フランスと次々に同盟を結びます。ドイツもまたオーストリア・ハンガリー帝国などと同盟を結び、複雑な同盟関係と相互の不信が第一次世界大戦につながることになります。
ドイツ皇帝ウィルヘルム1世の戴冠式
ドイツ皇帝ウィルヘルム1世の戴冠式
現在の中国は急速に国力を伸ばし脅威となった20世紀初頭のドイツ帝国にたびたび例えられます。また、中国の面積、人口を考えると20世紀初頭に20世紀はアメリカとロシアの世紀と予想された(これは半ばあたったわけですが)ように、21世紀は中国とインドの世紀になる可能性は大きいでしょう。日本はイギリスがドイツとの戦いに勝ち抜いたように、中国に対抗することが可能でしょうか?

実はこの設問はあまり妥当なものとは言えません。イギリスが直面したドイツの脅威は、覇権に対する脅威でした。つまり、領土、制海権など国家が支配できる範囲をめぐる争いでした。国家と国家が覇権の及ぶ範囲で争うと、最終的には軍事的な優位が決定的になります。しかし、中国と日本は覇権を求めて争っているのではないでしょう。いや、中国は依然として軍事力、支配力の及ぶ範囲を拡大するという意志を持っているという意味で覇権主義的ですが、日本は経済的な勢力、競争力、国民の福祉が重要なはずです。少なくとも国民が経済的に繁栄するために軍事的に競争相手を打倒する必要はありません。

企業から経済的利益を得る方法は、株主になる、顧客になる、納入業者になる、従業員になる、の4つしかありません。そしてこの4つのうち国籍が決定的になるものは一つもありません。日本人であるにしろ、中国人であるにしろ、あるいはアメリカ人、イギリス人何であっても、自国の覇権の及ぶ範囲と自分の経済的利益は本来関係ないのです。

尖閣列島の石油など、資源の所有権は覇権と関係あるという人がいるかもしれません。しかし、石油が尖閣列島で産出しようが、イランで産出しようが、はたまた北海沖、アラスカで産出しようが、石油の購入価格は石油市場で決定されます。要するに、世界全体での需給バランスが石油の価格を決め、それ以外ではありません。

もちろん、第一次石油ショックでアラブ諸国を中心にOPECがアメリカに対する交渉力に石油を使ったように石油資源は時として武器にもなります。自国に安定的な石油供給を実現しようとして石油資源の確保に走る必要が生じるということはありうるでしょう。しかし、今の世界で「カネはあるが石油はない」という状態になった国は北朝鮮を含め皆無です。石油の確保が物理的に重要になるのは第二次世界大戦の日本のように戦争状態にあるときだけです。

その戦争状態が心配なのだという考えもあるでしょう。しかし、中国と日本の関係に限れば、中国と日本が戦争し尖閣列島の石油の供給が両国の戦闘能力で決定的な役割を果たす、というほとんどありえない仮定を設けない限り、尖閣列島の石油が中国、あるいは日本の存亡に決定的に重要になることは考えられません。

経済の世界では軍事力でも覇権でもなくカネが全てです。北方領土で日本人の漁民が射殺、拿捕されるというのは本来北方領土は日本のものであるという認識に立てば許しがいたい暴挙です。しかし、花咲ガニを食べたいだけなら、今でもロシアの漁船が捕ったものを含めて根室の市場でいくらでも買うことができます。花咲ガニが食べられるかということと、国後、択捉が日本の支配権が及ぶかどうかということは別の話です。

ニューヨークのロックフェラーセンターが三菱商事に買われたとき、アメリカでもこのままでは日本に占領されてしまうという話まで出て大騒ぎになりました。しかし、バブル崩壊で三菱地所が売却し、現在にいたるまでアメリカ資本、日本資本そしてアメリカ資本と変遷したことは何か変化をもたらしたでしょうか。ロックフェラーセンター名物のクリスマスツリーは相変わらず11月末になれば点灯されます。国境を超えて広がる経済と、領土に制約される国家とは全く違う存在なのです。

イギリスは第一次、第二次世界大戦を経て領土は、元の100分の一の大きさに戻りました。しかし、絶対的には今イギリス史上もっとも高い一人当たりのGDPを実現しています。また、イギリスの多くの製造業が外国資本の下になっても、イギリスから工場が消滅したわけではありません。かつてのロールス・ロイスの自動車工場は今も職人芸をこめた車作りをしています。「ウィンブルドン化」と呼ばれるように、ロンドンの国際金融市場のシティーは外国の金融機関が中心となって動かされていますが、イギリス人の職場が減ったわけではありません。

「日本はイギリスになれるか」という問いには二つの答えがあると思います。一つはコモンウェルスを中心に築き上げ、世界言語となった英語を基にした影響力を日本は持ちえないという意味でイギリスになることは不可能です。あまり愉快な話ではありませんが、これからますます英語力の必要性は高まるでしょう。食べていくためには国語も他の必修科目も減らしてひたすら英語を勉強しなくてはいけなくなることも考えられます。いや、実際はすでにそうなのに、問題から逃げ回っているだけかもしれません。日本の心は大切ですが、江戸時代の生活水準に戻るわけにもいかないでしょう。

もう一つ、覇権を失っても経済は成り立つかという意味では、イギリス以上の成功をおさめることは十分に可能でしょう。なんといってもイギリスは植民地に依存することがあまりに多すぎました。「狭い国土で一生懸命頑張る」という意識は日本ほどはありません。皮肉ですが、この点では英語が世界言語であることが一面マイナスに働いているのかもしれません。イギリス生まれで南アフリカ育ち、カナダに移住してアメリカ企業に就職、現在はオーストラリア駐在、というような人はいくらでもいますが、彼らは東京生まれで京都の大学を出て、九州で働いている程度の気持ちなのでしょう。英語の世界では国境はそれほど重いものではありません。Imagineではジョン・レノンも「Imagine there's no countries .It isn't hard to do 」と歌っています(日本人にはすごく大変なのかもしれませんが)。

国家と覇権という点については、イギリスの現実主義はやはり見習うべきものがあると思います。イギリスはアメリカとの特殊関係を最大限活用して、ドイツやソ連という強敵と対峙してきました。軍事的には米ソについで3番目の核保有国になったのに、今では事実上アメリカ製の核兵器と運搬システムに依存していますし、将来数兆円と予想される核兵器の更新をやめて核兵器の放棄を行う議論がされていますが、実現すれば史上初めて核兵器を放棄する国にイギリスはなるわけです。

日本の相対的経済力が1980年代末を上回ることは将来ないでしょう。しかし、国家の領土、覇権と国民の経済的利益を混同せずに、日本人の勤勉さや高い教育水準を活用すれば、生活水準の向上を実現することは今後とも可能なはずです。もちろん、どこかの国が日本を侵略してきたとき、最後まで血を流して戦い抜くと期待できるのは日本人以外にはありません。その意味で日本自身による国防は必要でしょう。しかし、軍事力は何の経済的利益をもたらさないし、何の関係もないということは肝に銘じておくべきでしょう。

日本はイギリスになれるか (1)
日本はイギリスになれるか (2)
日本はイギリスになれるか (3)
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テーマ:進化論的組織論 - ジャンル:政治・経済

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