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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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複雑系
350px-St_Francis_Cathedral_Santa_Fe.jpg
サンタフェの古い教会
サンタフェというと、今でも宮沢りえのヌード写真集の名前を思い出す人が多いかもしれません。1991年に発売された同名の写真集は、ニューメキシコ州の州都になっている人口6万人ほどのこの街で、篠山紀信によって撮影されました。スペイン語で「聖なる街」を意味するサンタフェは17世紀始めにできたアメリカで2番目に古い町で、多くの古い教会や街並みが残り、アメリカの宝石と呼ばれています。

サンタフェ研究所は1984年にサンタフェから50キロほどにある、ロスアラモス国立研究所の科学者たちによって作られました。原爆開発のために第二次世界大戦中に創設され、水爆の開発も行ったロスアラモス研究所は、10,000人以上の研究員を擁し、核兵器だけでなく、物理学、生物学、社会科学にいたる広範な研究を行っていますが、より学際的な問題にアプローチするために新しい研究組織が必要だと考えられたのです。

学際的なアプローチを必要とした問題とは、複雑系と呼ばれる分野でした。複雑系とは一言で言えば、沢山の要素から構成され、それぞれの要素が互いに作用をし合って、個別の要素とは全く異なる動きをするものです。複雑系とよばれるものは、生物学、社会科学、人工知能など広範囲は分野に存在しますが、複雑系の科学はそれらの共通点から複雑系独特の性質を解明しようというものです。

複雑系では非線形の問題を取り扱います。というより複雑系は本来非線形の性質を持っています。非線形の逆の線形とは比例するということです。10個のリンゴは1個のリンゴの10倍の重さがあります。1個200円なら10個で2,000円です。1個のリンゴのことが十分にわかれば、10個のリンゴのことも、100個のリンゴもわかるし、100万個のリンゴのこともわかるというのが線形問題の特徴です。

複雑系はそうではありません。複雑系では個々の要素と全体がお互いに作用する、フィードバックがあるので、全体と部分とは違うのです。たとえば、水の性質は単に水の分子が集まっただけと考えては解明できません。物には色がありますが、分子レベルで色があるわけでもありません。脳には1,000億個以上のニューロンがありますが、個別のニューロンの動きはかなり理解できているのに、知能とか意識の解明はまだできません。沢山のリンゴがあって、空から見ると「リンゴ」という字になっている、こんなことは1個1個のリンゴのことがいくらわかっても想像もできないというわけです。

複雑系では沢山のものが集まって、個別の部分と全く異なった性質を現すことを「創発」と言います。逆に言えば創発がなければ本来の意味で複雑系とは言えません。ただ、なぜ創発が起きるかというとその理由は様々ですし、全体を個別の要素と比べて、どのように違う振る舞いや状態になれば創発と呼べるのかも、決まっていません。複雑系で創発が起きるのは、沢山の要素の相互作用、全体と部分との間のフィードバックがあるからですが、ただ沢山の要素を集めても創発が起きるとも限りません。個々の要素の相互作用が一定の方向に組織化されることで、創発が起きるのです。

複雑系で沢山の要素が互いに結びついて、一定のパターンを形成することを自己組織化といいます。自己組織化の例としては雪の結晶があります。雪の結晶は、水の分子が冷却される過程で発生しますが、結晶の構造は水の分子と違って、それ自身意味を持っています。自己組織化で一番典型的なのは生物です。生物はまわりの栄養を吸収して、繁殖し生物として栄養物とは全く異なる細胞やさらにより大きな単位を作り出します。自己組織化は複雑系で創発が起きる原因として重要なものですが、全ての創発が自己組織化によるものではありませんし、自己組織化が必ずより大きなレベルでの創発を引き起こすとも限りません。

自己組織化は経済学、社会学の分野でも意味のある考え方なのは容易に想像がつくでしょう。そもそも「組織化」という言葉自身、人が集まって組織を作るということが元になっています。組織は個人と違う考え方、動きをしますし、人が集まって都市を作っていく過程は自己組織化の代表例だと考えられます。

複雑系が話題になり始めたころ、一部で複雑系は従来の還元主義で解決できない問題を解決できると言われていました。還元主義はReductionismという言葉の通り、Reduce-減らしていくことで物事の解明をしようとします。100個のリンゴをまとめて分析しようとしても難しいので、1個取り出してみる。1個のリンゴを皮、果肉、種にわけて分析する。果肉をすりつぶして、水分や栄養素を分析する。1個のリンゴの中身が理解できれば100個のリンゴの中身もわかるはずだというのが還元主義です。

還元主義を文字通り実行すると、各要素を細かく調べようという話になるので、確かに創発や自己組織化で現れる動きや状態を分析することはできません。伝統的な科学の方法論は還元主義が基本ですから、複雑系の考え方を導入することで、従来の科学が解けなかった問題を解けるのではという期待があったのです。

サンタフェ研究所は創立当初シティーバンクが大きなスポンサーとなっていました。シティーバンクは経済予測に複雑性の研究が役に立つのではないかと期待したのです。経済予測で単純に還元主義を応用すると、個人個人の消費動向を考えることになるでしょう。しかし、個人の消費動向は経済の好不況に影響を与えるでしょうが、経済の好不況も個人の消費動向に影響を与えます。経済は複雑なフィードバック・システムであり、非常に多数の要素を含んでいるという意味で、複雑系そのものです。シティーバンクはサンタフェ研究所が物理学や生物学、人工知能といった経済学より確かそうな分野から、よりましな経済予測を編み出すことが可能ではないかと考えたのです。

しかし、予測という点については複雑系は難しい問題を投げかけています。複雑系で自己組織化の例として気候現象があります。気象現象は空気や水蒸気が、太陽熱や海面の温度などのエネルギーにより、どのような振る舞いをするかで説明されますが、時として台風や竜巻のような極端なパターンを生み出します。このようなパターンは気象現象の自己組織化で生じますが、パーターンがどのような形でいつ発生するかは、最初の条件がわずかに違っただけで全く異なってきます。カオス理論でバタフライ効果と呼ばれるものです。

バタフライ効果は、蝶が羽を羽ばたかせたために、竜巻が起きてしまうようなことをいいますが、わずかな初期条件の違いで予測できない出来事が起こすのがカオスです。複雑系で自己組織化によって作られるパターンの多くは、初期状態によって全く違ったものになる可能性があるのです。経済が気象現象と同じようなものなら、バブルの発生や、来年の流行色を予測(経済学ではないかもしれませんが)しようとするとカオス理論が行く手をさえぎることになります。

実際、カオス理論にしろ、カタストロフィーの理論にしろ、還元主義による要素分解、分析だけでは手に負えないのは事実でしょうし、自己組織化や創発はそれを別の言葉表現したものでしょう。しかし、科学理論の価値は予測ができることだという考えに立てば、複雑系の科学も役に立つためには、ある種の還元主義を使わざる得ません。自己組織化によるパターンの出現など、複雑系の多くの現象はコンピューターのシミュレーションで調べることができますが、シミュレーションというのは目の前の実体を何かもっと単純なモデルに置き換えて、そのモデルの動きをコンピューターで計算することです。モデルが単純でなければコンピューターでも計算しきれないないでしょうし、モデルが妥当なものかどうかはモデルを作る人の洞察力にかかっています。
図A
img59-1-sml.gif

図B
img59-2-sml.gif

図Aで中の要素が相互作用によってパターンを形成する(図B)


結局、物理学、経済学、生物学など様々な分野を学際的に複雑系で考えようとしても、複雑系としての共通項を見つけようということ自身が還元主義と言えなくもないでしょうし、共通項が経済学なりなんなりの特定分野の複雑系に当てはまるかどうかは、その分野の専門家の検証が必要なのは言うまでもありません。

複雑系は興味深い考えをいくつも提供してくれますし、学際的な研究により他の分野のアイデアが大いに参考になるということはあるでしょう。しかし、複雑系が独立した科学として、万能的に今まで還元主義の方法論で解明できなかった問題を解決してくれるというのは過剰期待でしょう。創発というのは魅力的で便利な言葉ですが、意味するものがあまりに広くかえって物事を理解するときに行き過ぎた単純化をしてしまう危険すらあります。最近一時の勢いがなくなっている気もする複雑系ですが、このあたりを意識していれば、まだまだ多くの刺激を与えてくれのではないでしょうか。
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テーマ:進化論的組織論 - ジャンル:政治・経済

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