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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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顧客志向を考える
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お客様は神様です
「Customer First」を日本語に訳すと「お客様は神様です」になるのでしょうか。顧客にフォーカスしろというのは、洋の東西を問わず言い続けられてきました。あまりに、言い続けられてきたので、「いい加減にしてくれ!」という気持ちになってきたのかもしれません。アメリカのウルスター大学教授のスティーブン・ブラウンは「ポストモダン・マーケティング-「顧客志向」は捨ててしまえ!」という勇ましい題名(原題は Free Gift Inside!!: Forget the Customer, Develop Marketease)の本を書いています。

ブラウン教授によると顧客に色々知恵を絞ってサービスしようとしても、今や顧客はスレてしまっていて、そんな手には引っかからない、そうではなくて「じらしてじらしてじらしまくり」それによって顧客を引き付けるべきだということになります。 つまり、手を変え品を変えて媚を売るのではなく、もったいぶり、隠し、じらすことで、顧客から主導権を取り返そう、「客を悩ませろ(彼らは、そうされるのが好きなんだ)」という、ほとんどヤケクソのような話ですが、顧客、顧客と言い続けている割には成果があがらないことの反省は必要かもしれません。

「顧客は常に正しい: Customer is always right」というのはよく言われている言葉ですが、これも常識的に考えて100%正しいとは思えません。顧客といっても、悪い人やゴネ得を目指す人もいるでしょう。全然利益に結びつかない顧客もいます。医者が患者(これも立派な顧客です)の意向を尊重することは必要であるにしても、治療方針を全て患者の言う通りにすると、患者は命を失う危険すらあります。

顧客満足という言葉を文字通り追求していくと、札束をつけてニコニコしながらタダで商品を渡すようなことになってしまいます。顧客が大切なのは、顧客が売上げや利益をもたらしてくれるからで、慈善事業の自己満足を味あわせてくれるからではありません。ドラッカーは「企業にプロフィットセンター(これもドラッカー自身が作った言葉ですが)はない、プロフィットは顧客からしか得られない」と言っていますが、「だから」顧客は重要だとも言えますし、「だから」顧客からは絶対に利益をあげなければいけない、ということにもなります。

クレイトン・クリステンセンは「イノベーションのジレンマ」で、もっとも優良で先端的な顧客の要求に応えている間に、技術の進歩で市場のほとんどには不必要な高機能で高価な製品に特化してしまい、ついには業界のリーダーシップを失うことを警告しています。クリステンセンはHDDのトップメーカーがHDDのサイズが5.25、3.5、2.5インチと小型化されるたびに入れ替わることに着目し、HDDのトップメーカーが高性能の求める一部の顧客を重視して、より小型のHDDで満足できる顧客の要求を無視してしまったことが、HDD製品の世代交代でその地位を失った原因だと結論付けました。優良顧客の言うことを聞いたために、結局市場から見放されてしまったのです。

「顧客志向」というのは、身を削っても顧客の得になる何かを提供することではありません。「顧客の視点で顧客が欲すること」を提供することです。あたり前に聞こえますが、現実には何か顧客志向の施策をしようとすると、ゼロサムゲームのように自分の取り分を減らして、顧客に便益を提供するようなことがすぐに出てきます。営業推進策の多くは、単なる値引き、割引のオンパレードになりがちです。ウォールマートのELDP(Every Day Low Price)は確かに、お得な商品を提供するということですが、本当の価値は「もっと安いところがあるのじゃないか。明日になればもっと安くなるんじゃないか」といった、値段に関する悩みを消費者に与えず、安心して必要な物を買うことに専念できるようにするということです。

今顧客に何か売ろうとするのではなく、戦争で敵と戦うことを考えて見ましょう。敵を殲滅するためには、敵を狙いやすいところに陣取るのも大切ですが、敵から狙われにくいことはもっと重要です。敵から狙われにくい場所を見つけるには、敵の立場に立って文字通り「敵の視点」を持つことが必要です。顧客志向とは、売る側の立場ではなく、買う側、サービスを受ける側の視点で、全てを見直そうということに他なりません。

カール・アルブリヒトが「サービス革命」で書いていますが、ホテルで大きなセミナーを開催した時、休息時間でどのようなサービスを期待しているか、ホテル側のスタッフに聞いたところ「香りの良いコーヒーを上等なカップに入れて提供すること」などと答えたのに対し、セミナーの参加者は「短い時間を有効に使えるように、コーヒーは待たずに飲めること」とか「トイレや電話が便利なこと」といったことを求めていました。一方的に顧客にためになることをしても、顧客には評価されないこともあるのです。

スティーブン・ブラウン教授の言うように、顧客をじらしたり、苛立たせることが顧客を引き寄せるのに役に立つことはあるでしょう。こんなことは、年頃の女の子なら男の子に対して皆やっていることです。しかし、顧客が本当にどう感じるか、それがどう消費行動に結びつくかの理解とシナリオがない限り、顧客を怒らせる結果を招いてしまう危険も大きいでしょう。

売る側と買う側の関係はゲーム理論ではプレーヤーが自分の利得を最大化しようとして行うゲームと考えられます。ゲームが一回限りの場合は、プレーヤーは相手の弱みに付け込んだり、自分の利得の増大だけを考えて行動しますし、相手のプレーヤーもそうするだろうと予想します。観光地の高くてまずい食事、ゴミを片付けない観光客というのは一回限りのゲームだとお互いに思っているのでしょう。しかし、ゲームが繰り返し行われるとすると、プレーヤーは相手の利得も考慮することによって、自分の利得を高めようとします。売る側は得意客を優遇し、得意客も時として最安値でなくても同じ相手から購入を続けようとするのは、繰り返し型のゲームで相手の利得を考慮する例でしょう。

顧客志向も、戦争も、ゲームも相手の視点で考えることが必要です。それを忘れて、「お客様は神様です」とか「顧客は常に正しい」と言っても、多分それは中身のないから念仏でしょう。大体スローガンの張り紙は実態の逆を表していることが多いのです。もちろん、ブラウン教授のように「顧客志向を捨てろ」と言っても、顧客が戻ってくるわけではありません。
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テーマ:進化論的組織論 - ジャンル:政治・経済

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