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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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どうして「情報」が高校の必修課目?
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コンピューター実習環境は整ったが

騒ぎはひとまず収束したように見える、高校の未履修問題ですが、この11月15日に情報処理学会が安西会長名で「高校教科「情報」未履修問題とわが国の将来に対する影響および対策」という文書を出しています。

この文書では「この問題の根幹には,一般企業社会に浸透してきた法令遵守の考え方が学校教育の場には,まだ浸透していない現実がある。」とした上で、「必履修となった教科「情報」が履修されないままとなることはわが国の将来の発展に重大な障害となり得るものと懸念している。」と「情報」の履修を強く求めています。

未履修問題の原因が「ゆとり教育」や大学受験の影響であることは事実でしょうし、情報処理学会が冒頭で主張するように、「学校だってコンプライアンスは必要」というのは当たり前でしょう。しかし、本当に高校、さらに中学、小学校で「情報」を「必修」教科とすることが必要なのでしょうか。

「絶対必要なのだ」というのが情報処理学会の立場で、このまま事態を放置すると「ソフトウェア開発に代表される情報技術面で今日でも欧米のみならず中国・韓国・インドなどにも遅れを取りつつあるわが国が「情報後進国」に転落してしまいかねない」ということなのですが、本当なのでしょうか。

自動車、製鉄、テレビのような工業製品、さらに銀行、保険、小売のようなサービス業も厳しい国際競争にさらされていて、あるものは勝ち残り、あるものは敗れていきます。しかし、高校で「自動車産業を守るために、ギヤボックスの構造くらい教えるべきだ」とか「為替業務も習わないから日本の銀行はダメなんだ」という話は聞いたことがありません。なぜソフトウェア産業は特別なのでしょうか。

情報処理学会の文書によると高校の「情報」で「最低限学ぶべきことは」
• コンピュータの基本的な構造と動作原理
• さまざまな情報の表現
• 情報と問題解決の関わり
• 情報の収集や発信における各種の問題
• 知的財産権など情報社会で守るべき約束ごと
• 情報社会における多様な変化や光と影
• さまざまな情報システムの形態やその役割
• 授業時間に対する一定以上の実習による理解

とされています。このようなことを学ぶことによって「情報活用力」つまり「現代の情報社会を生きる力」を身につけようということなのですが、これらの項目を見ただけで高校で「情報」を教える難しさがわかります。

そもそも「情報」と何のでしょうか。難しい議論をするつもりはありませんが、コンピューター、データー、システムなどと混ぜ合わさって、コンピューターの構造や使い方を勉強するのか、コンピューターを利用したデーター処理の環境、システムを学ぶのか「情報」という言葉が概念をあいまいにしてしまっています。

「全部やるんだ」ということなのかもしれませんが、「情報化社会の光と影」「情報社会で守るべき約束ごと」というのは、どちらかというと政治経済、倫理の教科内容です。「コンピュータの基本的な構造と動作原理」は技術家庭か物理、数学の範疇です。

プログラムを書くとなると、他の教科には当てはめにくくなりますが、文科省の指導要領では実習の中で、プログラミングを行うことを求めてはいません。電子メール、インターネットなどの使用が中心となるようですが、それでは銀行のATMを使ってもコンピューター実習だと主張できるような気もします。

もっともATMを使ってもコンピューター実習だというのは、それほど無茶な話ではないと思います。第二次世界大戦中、アメリカは家庭の主婦を含め大量の女性を工場に動員しました。工場では様々な機器を操作しなければいけませんが、当時のアメリカは自動車が普及し始め、家電製品もかなり出回っていて、一般の主婦もメーターだとかスウィッチだとかに面食らうこともあまりなく、工場の作業に入れました。

これが他国、たとえば日本などと比べてどの程度有利に働いたかはわかりませんが、日々使うことで、中身の理解が伴わなくても、平均レベルの知識の水準は上がっていくのです。最近ではATMの前で立ち往生するお年寄りの姿はほとんど見なくなりました。一般の人にとって銀行システムの理解は、預金通帳に記入があろうとなかろうと、コンピューターの中の預金データーが本物だとわかっていれば十分でしょう。

逆に、コンピューターの構造や使用法を教えるとするとどうすれば良いのでしょう。20年前までは文句なしにプログラムを書くことでした。80年代の初めPCが企業で使われ始めたころ、巷にはサラリーマンやOLを対象にした「パソコン道場」がいくつもできましたが、それらのパソコン道場ではBasicのプログラミングを主として教えていました。

当時の一般の社会人にとってプログラミングは習得するのが大変困難で、多くの人は挫折してしまいました。挫折せずに何とかプログラムが少し書けるようになっても、実務で使うことはほとんど出来ませんでした。OLのグループが出張旅費を計算するプログラムを作って、週刊誌で話題になるくらい、実際にはパソコン道場の知識は使い物にならなかったのです。

PCが企業から一般家庭に普及するようになると、今度は「デジタルデバイド」が問題になってきました。デジタルデバイドとはコンピューターを持てる家庭ともてない家庭で、子供のコンピュータ知識に大きな差が生じ、将来的な学習機会、就職機会にも影響を与えることです。

デジタルデバイドは日本以上に社会の格差の大きなアメリカでより大きな問題になったのですが、デジタルデバイドが単に家庭環境の違いが子供の将来に大きな影響を与えるだけなのか、コンピューター独自の問題があるかは議論がありました。

コンピューターに特有の問題が家庭環境とは別にあるのなら、小学校、中学校でコンピューターに触れる機会を与えれば、社会格差の解消にも役立つのではないか。そのような期待もあり、日本もアメリカも教育機関へのPCの配備に多くの努力を投入しました。

現在は教育機関へのPCの配備は、ほぼ充足しました。10年ほど前まではせっかく配備しても、使える教員がいないというようなこともあったのですが、今ではそんなことはありません。使えないということより、生徒の成績でも何でもPCに入れて、自宅のPCから個人情報が漏洩する方が、ずっと大きな問題です。

現在の日本でデジタルデバイドは重大な問題でありません。電子メールもインターネットも「使いすぎ」の問題はあっても、「使えない」という児童はごく少数派になっています。この上何を高校生に教えたいのでしょうか。

インドや中国でのソフトウェア開発は今では広範囲に行われていますし、他の産業と同じように、今後は高付加価値の分野での競争は一層激化していくことは間違いありません。高品質、高機能のソフトウェア開発能力を持つことは日本という国にとって重要でしょう。

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インドはすでに高いソフトウェア開発力を持っている


しかし、企業レベルのソフトウェアの開発の競争力は個々のプログラマーのプログラミング能力より、品質管理プロセス、業務分析力、創造力などであり、およそ高校の「情報」の中で教えられるようなものではありません。

インターネットや携帯電話で他人の中傷を広げたり、いじめの道具に使うような問題は現代的な問題そのものでしょう。出会系サイトで小学生、中学生が売春を行ったり、危険な目にあったりするのも同様です。このような問題は小学生に道路の横断の仕方を教え込んだり、中学生に避妊の仕方を教えるように、学校でも対処の仕方を教えておくべきでしょう。家庭は一義的な責任はあるとしても、一定レベルの知識を与えるのに学校は良いシステムです。

しかし、私は高校、中学、小学校で「情報」を独立したカリキュラムとして含める必要はないと断言できます。コンピューター技術は利用面ではあまりに変化が速く、教員、環境の整備も考えれば、初等教育に向いていません。また、日本のソフトウェア産業の競争力が高校の「情報」科目の完全な履修で将来高くなるとも、低くなるとも思えません。デジタルデバイドは過去の問題です。

確実なことは、「情報」であろうと何であろうと、必修課目だということできっちり履修を実施すれば、他の課目の履修は影響を受けるだろうということです。そんな暇があれば、数学、物理、歴史など長年にわたってカリキュラムが練り上げられた課目に力を入れたほうが、きっとソフトウェア産業の競争力も高くなるでしょう。情報処理学会はいったい何をどう考えているでしょう。
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テーマ:意思決定 - ジャンル:政治・経済

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"@hirun blog in Lineage US",,"LineageUS にて活動中のahirunの日記ですヽ(′?`)ノ ",http://blog.livedoor.jp/ahirun1/
【2008/01/17 06:15】 URL | ahirun #9hQ5CT7M [ 編集]


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