ビジネスのための雑学知ったかぶり
ビジネスでも雑学は重要! 知っていると少しは役に立ったり、薀蓄を自慢できる話題をご紹介
プロフィール

RealWave

Author:RealWave
Twitterアカウントはrealwavebabaです。

馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

ご連絡はrealwaveconsulting@yahoo.co.jpまで

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

お客様カウンター

Since 2009/10/21

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

日の丸コンピューターを再評価する (4)
FujitsuTech.gif
富士通はIBMに対し強硬路線を取ろうとした

日立とIBMの間で起きた「IBM産業スパイ事件」が刑事の司法取引、民事の和解という形で落ち着こうとしていた1983年になって、事件とは無関係だったはずの富士通がIBMとソフトの使用に関する秘密協定を結んだとのニュースが飛び込んできました。

IBMは互換OSを開発、販売していた富士通、日立がIBMのOSをコピーしているのではないかという疑いをずっと持っていましたが、IBMと違って富士通も日立もユーザーにOSのソースコードを提供しておらず、確たる証拠をつかむことは難しい状態でした。

話は1977年にもどりますが、アムダールや日立のIBM互換機が売上げを伸ばす中、IBMはそれまで無料で提供していたOSの有料化を始めます。ハードウェアから見ればわずかな金額でしたが、互換機で稼動するIBMのソフトウェアの対価を得ることにしたのです。

OSが無料では、たとえコピーがあっても対価の請求は難しいが、有償のソフトウェアのコピーがあれば請求できる。IBMは富士通のOSがIBMのOSと同一のバグ(ソフトウェアの障害)を起こすなど、証拠を積み上げて1982年10月にソフトウェアの無断使用に関する交渉を富士通に申し込みます。IBM産業スパイ事件の発生から4ヶ月がたっていました。

1983年7月にIBMと富士通は秘密協定を結びました。協定では富士通は有償でIBMのOSと互換性を保つための外部インターフェースを使用できることなりました。互換OSの存在自身は認められたのです。しかし、内部コードのコピーは許されません。IBMは富士通のOSのソースコードをチェックする権利を得ます。続いて日立も同様の協定を結びました。

協定は結びましたが富士通は基本的にはIBMに対し強気の立場を保ちます。これに対し日立は事件の影響もあり、ずっと低姿勢でした。1983年12月になり、日立は国内の日立製IBM互換OS (VOS3/SP)の顧客の一部に自社ソフトを回収、交換した上、IBMの有償ソフトウェアの使用契約を結ぶよう依頼します。事実上、公にIBM OSのコピーを認めたのです。

ここで当時のソフトウェアの著作権についての当時の認識を、説明しておきます。現在ではソフトウェア製作者の権利を著作権で保護するというのは当然の考え方ですが、富士通とIBM]がOSのコピーについて交渉を始めたころは、そもそもソフトウェアを著作権で保護するのが適当かどうか、日本では議論がありました。
IBM3033.jpg
IBMは当初はOSを無償で提供した(写真は最初に有償OSを導入したIBM3033機)

またIBM自身、システム360、370上で稼動するIBMのOSは1977年まで原則無料にしていましたし、ソースコードはユーザーの求めに応じ提供していました。IBMはOSを「パブリック・ドメイン」としてO一種の公共財的に位置づけ、先進的なユーザーが必要に応じて改変することを認めていたのです。

製品を分析し同等製品を開発することを「リバース・エンジニアリング」といって、製造業ではごく当たり前のことです。そのような環境で富士通や日立がIBMのOSのソースコードを入手し、内容を分析し自分たちのOSを開発するのは、常識的には違法行為とは認識されていませんでした。

しかし、ソフトウェアはハードウェアや一般の工業製品と違って、コピーすることにより開発費用を劇的に削減することができます。現在の常識ではたとえ無償提供されてもソフトウェアの著作権は認めれますが、IBMはパブリックドメインだった無償版のOSのコピーへの請求をあきらめても、有償版のソフトウェアは不当なコピーは許さないという姿勢を取ることにしたのです。

IBMとの協定では富士通や日立のソフトウェアの検査をIBMは行うことができました。IBMが昔から計算センターを置いていた、日本橋の古ぼけたビルに、IBMは富士通、日立のソフトウェアの検査とハードウェアの評価を行う施設を作ります。IBMは初めて、富士通、日立のコンピューターを自社内に設置したのです。

TSEL(Tokyo Systems Evaluation Laboratory)と名づけられた、その施設は組織図上は日本IBMの配下にありましたが、実質上完全にIBM本社の管轄化にありました。IBMの開発部門からは一線の開発者が次々に来日し、富士通のソフトウェアの分析を開始したのです。

富士通のソフトウェアの分析を行うことは、相応の犠牲が伴いました。ソフトウェアの著作権の考え方では、ソースコードにアクセスした人間は、同種の製品の開発はすぐには行えません。IBMと富士通は1年間の期限を設定し、ソースコードを見た開発者がすぐには開発に戻れないというルールを設定しました。最優秀の開発者が分析に従事した後、さらに1年戦力にならなくなるのです。

TSELでは主に1983年の協定違反のチェックを行うことが目的でしたが、同時に富士通、日立の製品のリバース・エンジニアリングにより、IBMより進んだ技術を学ぶという側面がありました。ハードウェアについては、コンパクトな設計、クリーンな組み立てなど、日本製品の優秀性が改めて認識されました。

ソフト面でも学ぶべき点はありました。当時IBMも日本のメーカーもシステムの漢字化を行う製品を出していました。しかし、IBMの漢字関連製品はひどく使いにくい上に、製品化の速度が遅く、漢字で大きく遅れをとっていたのです。

富士通の製品を分析すると、富士通は漢字化を製品の内部構造に組み込まず、コンパイラー(プログラム言語をコンピューターで実行できる機械語に変換するソフトウェア)の前処理で主に行っていることがわかりました。コロンブスの卵的な発見でしたが、同様のことを行うことにより、IBMの漢字化は一挙に進展することになります。
20061204152529.jpg
AAAによる富士通とIBMの仲裁裁定の内容の発表

TSEL発足後2年を経過した1985年、IBMは富士通を協定違反があったとして米国仲裁裁協会(AAA: American Arbitration Association)に提訴します。TSELの分析では富士通は日立のように完全な形ではIBMソフトウェアの不当コピーを止めていなかったのです。

係争は激しいものでしたが、富士通の足場は不利でした。互換OSをすでに何千という顧客に出荷してしまっている以上、うかつにOSの書き換えを行うと、従来製品と互換性が崩れてしまう危険がある上に、ユーザーの心理的不安によるビジネスへの影響も無視できませんでした。富士通とIBMは合意に達し、1988年の暮れ、AAAは会見を行い仲裁裁定の内容を発表しました。

裁定では富士通およびIBMは開発部隊から遮断された施設(SF: Secured Facility)で、外部インターフェースの互換性を確保するために製品分析することができることになります。さらに富士通はすでに支払った分も含め、IBMに8億3,742万ドル、約1千億円を支払うことになりました。

1千億円はOS開発費と比べても巨大な金額です。富士通は互換OSという戦略に大きなツケを払わされたのです。しかし、IBMも著作権紛争は禍根を残しました。IBMは多くの製品のソースコード提供を取りやめるなど、知的所有権(または知的財産権:Intellectual Property)の維持を最優先として、他システム接続情報などユーザーの使いやすさを損なう方向に向かっていったのです。

メインフレーム業界で巨人たちが死闘を繰り返している間に、コンピューター業界を根本的に変える流れが始まっていました。オープン化とダウンサイジングです。(http://realwave.blog70.fc2.com/blog-entry-76.htmlこの項続く)

日の丸コンピューターを再評価する(7)
日の丸コンピューターを再評価する(6)
日の丸コンピューターを再評価する(5)
日の丸コンピューターを再評価する(4)
日の丸コンピューターを再評価する(3)
日の丸コンピューターを再評価する(2)
日の丸コンピューターを再評価する(1)
スポンサーサイト

テーマ:意思決定 - ジャンル:政治・経済

この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
→http://realwave.blog70.fc2.com/tb.php/75-c33a7cbc
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。