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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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日の丸コンピューターを再評価する (6)
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ルイ・ガースナー

1993年、このままでは倒産しかないという事態になって、IBMは初めて生え抜きでないCEOを迎えることにしました。RJPナビスコのCEOだったルイ・ガースナーです。

ガースナーの着任の前のIBMは混迷を極めていました。1991年に初めて伝統を破って行われた首切りは、毎年規模を拡大しながら続けられ40万人の社員数は30万人まで減少していましたが、赤字がとどまる様子はありませんでした。統合された企業としてのIBMの存続は不可能ではないか。誰もがそう思い始めました。

RJPナビスコのCEOの前はアメックスのCOO、その前はコンサルタント会社のマッキンゼで会社始まって以来のスピード出世でパートナーに上り詰めていた、ガースナーは、アメリカのプロの経営者の多くがそうであるように、リストラと同時に会社の切り売りを行うに違いない。しかし、予想は当たりませんでした。

ガースナーはベテランのコンサルタントらしく、社員と顧客への徹底的なインタビューを行います。顧客はバラバラになったIBMは望んではおらず、統合されたソリュージョンを提供する企業でいて欲しいと思っている。ガースナーはそう結論付けました。

顧客が望んでいる統合されたソリュージョンを提供するにはどうすればよいか。ガースナーは製品中心だったIBMの事業体系を、サービス主体へと転換します。ここでIT業界のサービスという言葉の定義を少し説明しておきます。

サービスは通常の製品では「保守」と同義語です。顧客に設置された製品が所定の性能を発揮できるように維持することがサービスです。コンピューターももちろん保守という意味のサービス(service)がありますが、ソリュージョンを提供する、つまり顧客の問題解決を行うために必要な作業を提供するという意味のサービスがあります。こちらのサービスは英語ではservicesと複数形になります。

サービス(services)にはシステム開発、コンサルティング、システム運用のアウトソーシングなど様々な形態が含まれます。実はIT業界ではハードウェアやソフトウェアという製品よりサービスビジネスの方がはるかに大きく、IBMのサービスへのシフトはある意味当然のことでした。

とは言っても製品と違ってサービスは人間自身を商品として提供するものです。IBMは従来から顧客のシステム開発の構築や、業務分析などのサービスを行ってきましたが、それを一層徹底する必要がありました。ガースナーは30万人にまで減った従業員をさらに25万人まで減らしますが、実際には15万がIBMを去り、10万人が新たに採用されました。IBMは外も内も別の会社へと変身を始めました。
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IBMインドは今やサービスの一大拠点(写真はバンガロールのIBMビル)

IBMに新たに加わった社員のうち、もっとも大きな部分を占めていたのは顧客の社員でした。IBMは顧客のIT部門の運用を引き受けるアウトソーシングを積極的に推進し、顧客のIT部門を社員とともに買い取り、ITシステムの運用の長期契約を次々に結んでいきました。

アウトソーシングは今では日本でも数多く実施されていますが、日本と日本以外の国では大きな違いがありました。日本では通常アウトソーシングのための新会社を、顧客とアウトソーシング会社が合弁で作ることが多いのに対し、他の国では顧客の社員はアウトソーシング会社に移籍するのが普通です。社員の帰属意識という意味では、日本のアウトソーシングは中途半端でした。

顧客との合弁を主体とする日本独特のアウトソーシングは、日本IBMを含めた日本の主要ITベンダーの基本的な戦略でした。これは日本の企業風土の中では必要なことで、これ自身は良い悪いの問題ではないでしょう。しかし、日本でのアウトソーシングが、独立した事業と言うより、顧客との関係を長期的に維持するという営業政策の一環としての色彩が強かったのは確かです。サービスそのものを中心に会社を再編するという点ではIBMは日本のITベンダーよりはるかに徹底していたのです。

IBMのサービスビジネスへの徹底はアウトソーシングだけでなく全ての分野で行われました。コンサルティング事業の強化では、トップコンサルタントに市場価格に見合った給与を支払うため従来の職階の概念も大幅に変更されました。本来、日本企業に近い人事、給与体系を持っていたIBMにとって、顧客社員を受け入れるアウトソーシングや高給のコンサルタントの雇用を可能にするためには、人事システムの柔軟性と多様化はサービス化の推進にとって必須のものだったのです。

富士通、日立、NECなどの日本のITベンダーにとって、サービスを製品販売の付属物として位置づける戦略を根本的に変更することは、非常に困難を伴いました。特に人事システムの変革は難しく、コンサルティング事業などはNECのアビームのように別個の子会社として持つという妥協策にとどまりました。

システム開発も、顧客任せにせず自ら汗をかくという伝統が逆に災いして、大規模システム開発を独立した事業として展開する力の育成は遅れてしまいました。日本市場では大規模システムの開発力はNTTデータと日本IBMに集中し、富士通、日立、NECは後塵を拝することになってしまいました。

サービス化へのシフトが進む中、IBMは製品戦略の大幅な変更を開始しました。まず、当然のこととは言え、インテル、マイクロソフトと正面きって戦う戦略は放棄されました。Windowsに対抗しようとしていたOS/2の開発は凍結され、Pentium(インテルのPC用マイクロプロセッサー)に対抗しようとしていたPowerPC搭載のPC開発は中止となりました。

IBMは依然としてメインフレームではナンバーワン企業でしたが、次第にナンバーワンからオンリーワンになりつつありました。メインフレームはコンピューターの王者から特殊なニッチマーケットになったのです。IBMのUNIXであるAIXはUNIX市場で一定の競争力はありましたが、マイクロソフトのWindows/NTに押され将来性は決して明るくはありませんでした。OSの覇権は完全にマイクロソフトに移りました。

皮肉なことにメインフレーム時代の終焉は、富士通、IBMのメインフレームOSの著作権紛争が解決して相前後して起こりました。メインフレームの覇者IBMが「製品を売るためのサービス」から「サービス中心のビジネスモデル」に急速に転換したのに対し、日本のITベンダーの変化ははるかに緩やかでした。本来ならば多様な組織形態や人材構成に対応して行うべき人事制度改革も、富士通の「リストラのための成果主義導入」のようなその場しのぎのものに過ぎませんでした。

メインフレームの時代は統合型の企業が有利な時代でした。欧米ではIBMだけが半導体からサービスにいたる、IT関連の全てのビジネスを垂直統合する企業でしたが、日本では富士通、日立、NECはみなIBM以上に幅広い製品系列を持つ統合型の企業でした。メインフレームメーカーは日本以外はIBMを除く全ての企業が敗れ去ったのに、日本で3つのメインフレームメーカーが生き残ったのは、政府の支援と垂直統合された企業の強みが組み合わさった結果です。

しかし、ダウンサイジングとオープンはIT産業を完全な水平分業型のモデルに転換してしまいました。またIBMがサービスにビジネスの主体を移したことで、サービスの重要性は一層大きくなりました。

サービスは製品のような「収益逓増」のモデルは存在しません。市場占有率の高さがそれ自身製品の価値を高めることはないのです。それどころか人件費が大半を占めるサービスでは規模の利益も製品のようには働きません。企業の強みは個人の能力の中に蓄積され、しかも特許のように防衛する有効な方法もありません。

現在IT業界で「収益逓増」モデルを享受しているのは、実質的にマイクロソフトとインテルだけです。インテルはAMDが互換チップを出しており、一方的な優位を持っているとはいえず、マイクロソフトが収益逓増モデルの最大の受益であることは間違いありません。

IBMは世界一のサービスメーカーですが、それは「覇権」とは程遠いものです。IBMは今Linuxの普及に多大の資源を投入していますが、それは誰も所有権を持たない「オープン」ソフトのLinuxにより中長期的にマイクロソフトの覇権を脅かそうとしていると思われます。

IBMはまた、一度はPCでインテルに挑戦しようとしたPowerPCチップをPS3、Xbox、ゲームキューブ以降の任天堂ゲーム機全てに搭載しています。全てがコンピューター化される「ユビキタス」の世界で再びインテルの覇権に挑戦しようとしているのは間違いありません。IBMは失った製品での覇権をあきらめてはいないのです。(http://realwave.blog70.fc2.com/blog-entry-78.htmlこの項続く)

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PowerPCはユビキタスを目指す

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マイクロソフトマイクロソフト (Microsoft Corporation) は、アメリカ合衆国に本社を置く世界最大のコンピュータ・ソフトウェア会社であり、インターネット事業やハードウ wakanaの日記【2007/01/24 04:27】

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