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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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中国のユダヤ人と新型戦闘機
j10zhuhai2.jpg

中国の新型戦闘機J-10

今年の1月15日中国の航空兵器メーカー中国航空工業第一集団は、新型戦闘機J-10(殲撃十型)の「自主開発」に成功したと発表しました。J-10はアメリカのF-16に相当する、いわゆる第4世代の戦闘機と言われ、中国がソ連から導入した旧式のMIG-21などを置き換えるものです。

J-10は1988年に開発が開始され、2004年には15機の配備が始まったのですが、今年1月の発表が正式なもので写真や模型も公開されました。J-10の能力はかなり高く、台湾空軍のアメリカ製のF-16A/Bには十分以上に対抗でき、すでに中国が制空権を持っていると言われる台湾海峡の軍事バランスは大きく中国側に傾くと言われています。

J-10は1座、2座などいくつもの派生型を持ち、地上攻撃能力もある多目的(Multi-role)戦闘機ですが、開発は難航を極めました。もともとアメリカを始め西側諸国の協力を求めることは難しかったところに、1988年の開発開始の翌年の天安門事件で中国への軍事協力はますます厳しくなりました。
lavi.jpg

イスラエルが開発を中止したラヴィ戦闘機

ところが1990年代に入り、イスラエルが1987年に開発中止になった同国製のラヴィ(Lavi)戦闘機の技術を中国に提供をすることになり開発は進展を始めます。ラヴィ戦闘機はアメリカのF-16がベースになっていますが、イスラエルの独自技術が投入された高性能機になるはずでした。

1982年に開発が開始されたラヴィは開発が進む中、F-16の技術が利用されていること、国際兵器市場でF-16の競争相手になることを理由にアメリカで開発継続に反対が起きます。アメリカは多額の軍事援助をイスラエルにしており、アメリカの圧力で5機の試作機を製作後ラヴィ開発は頓挫しました。

同じ1980年代には日本でも「次期支援戦闘機」FS-Xの自主開発を行おうとして、アメリカが横槍を入れるということがありました。日本の場合は結局独自開発を断念して、F-16をベースにしたF-2支援戦闘機を日米共同開発することで決着しました。

1980年代はアメリカでは中国より日本の経済的脅威が問題とされており、経済的なヘゲモニーを獲得した日本が軍事技術でも独立性を高めようとすることに、アメリカは大きな危機感を持っていました。日本の方も、日米経済摩擦をこれ以上広げたくないという気持ちと、独自軍事技術開発への国内の抵抗があり、「日米共同開発」は妥協の産物でした。

日本が武器輸出をしないという原則を維持し、アメリカへの配慮をせざる得ない状況にある中で、日本以上にアメリカへの軍事依存が高いはずのイスラエルは、アメリカの最大の強敵になりつつある中国に軍事技術の援助を行うことにします。写真で見るとJ-10もラヴィも機体前方に小さなデルタ翼を持つことが共通しており、素人目にもよく似ていることがわかります。

ラヴィの技術の出発点はアメリカのF-16で、日本のF-2支援戦闘機とは兄弟とはいわないまでも、叔父と姪くらいの近親関係にあるわけですが、80年代のアメリカの友好国への自国の権益の押し付けが、21世紀になり極東の軍事情勢に大きな影響を与えることになったわけです。

イスラエルは中国にさらに先進的な軍事技術の提供を行うとしました。早期警戒管制(AWACS)ファルコンです。AWACSは高性能のレーダーを備え(と言うよりレーダーそのものが中核技術)、敵の攻撃の察知、味方の空軍の指揮統制を行う、近代航空戦の要とも言われる飛行機です。日本の航空自衛隊もアメリカ製のものを採用していますが、非常に高価で保有する国は限られています。

イスラエルは1998年、同時に60機の航空機を追尾できるファルコン(機体はロシア製のものを使用し、イスラエルはファルコン・フェーズドアレー・レーダーを提供)を4-8機、総額10-20億ドルを中国に売却する契約を行いました。しかし、中国の空軍力の増強を恐れるアメリカの強い圧力で2000年になり契約はキャンセルされます。

当初中国は、イスラエルがファルコンを中国のライバルであるインドに売却する意図であることを知ったこともあり、イスラエルを強く非難し10-20億ドルの賠償金を要求しました。その後2002年になり事態は沈静化し、イスラエルが前受け金の2億ドルに加えて1億5千万ドルを中国に支払うことで合意が成立しました。

ファルコンの件は正式なコメントを中国が拒否していることもあり、沈静化に至る経過は推測の域を出ませんが、J-10で築かれた関係をこれ以上悪化させたくない気持ちが中国にあったと思われます。中国はファルコン技術を搭載するためにイスラエルに運んでいたロシア製のII-76MDに自国製レーダーを搭載しますが、追尾能力はファルコンの同時60機に対し12機にとどまることになりました。

中国とイスラエルの日本人にとっては意外にも思われる親密な関係は長い歴史的背景があります。中国にユダヤ人が入植したのはローマ軍にエルサレムが占領された紀元前に遡るとう説もありますが、歴史的に比較的確かなものとして扱われているのは、12世紀に南宋の首都開封にユダヤ人が住んだのが最初です。

開封のユダヤ人については13世紀にマルコ・ポーロが存在を報告し、その後何度か開封のユダヤ人についてのヨーロッパ人の記事が見られます。開封のユダヤ人は16世紀には10-12家族程度だったようで、中国社会ではきわめて小さな存在でした。それでも、中国の小さなユダヤ人社会は独自の宗教を守りながら、太平天国の乱で19世紀に壊滅的な打撃を受けるまで存続します。

近代になってユダヤ人が中国に現れたのは、19世紀にロシアがシベリア開発のため、少数民族にシベリア移住のインセンティブを与え、ハルピンにユダヤ人コミュニティーが作られたことに始まります。その後上海、香港にヨーロッパから多くのユダヤ人が住みつくようになりました。20世紀始めに上海には3万人以上のユダヤ人が住んでいました。
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上海のユダヤセンター

上海を中心としたユダヤ人の中国への移住は、1917年のロシア革命、1930年代のナチスの登場によって加速化されます。第2次世界大戦中にナチスドイツは日本に上海のユダヤ人社会を消し去るように圧力をかけますが、日本は結局大戦終了まで実行しませんでした。これがヒューマニズムに基づくものだったとも考えにくいのですが、ドイツと日本が一枚岩ではなかったことの証明にはなるかもしれません。

ともあれ、上海には沢山のユダヤ人が戦争終了まで在住したしていたのですが、かれらの多くは共産中国の成立と相前後して建国間もないイスラエルに移住します。イスラエルには世界各地からユダヤ人が集まりましたが、その中にかなりの中国からの移住者がいたのです。

イスラエルにいる中国からの移住者がラヴィやファルコンという先端技術を中国に移転するのに何か影響力を行使したかはわかりません。実際にはイスラエルにとっては軍事産業の維持発展が主たる動機であることは間違いないでしょう。しかし、日本以上にアメリカに依存しているはずのイスラエルが、いつの間にか中国と軍事的な関係を深めているという事実は、単眼的なものの見方からはなかなか理解できないのはないでしょうか。

イスラエルが原爆を保有しているのはほとんど周知の事実です。そして、アメリカは国連の安全保障会議のイスラエル非難決議に数限りになく拒否権を発動して、そのイスラエルを守り通しています。そして、J-10の開発は台湾海峡だけでなく、世界の軍事バランスに大きな影響を与えるはずです。

うがった見方をすれば、J-10もアメリカの新型戦闘機F-35、F-22の敵ではなく、新型の戦闘機配備の理由付けのために、半ば古い技術であるラヴィ技術移転をアメリカは黙認していた可能性はあります。その中で本当に脅威となるAWACSの流出は断固許さなかったということかもしれません。

それでも、アメリカの隙を見てラヴィやファルコンを中国に売ろうとしたのは、イスラエルがアメリカの単なる属国ではないことを示すものでしょう。少なくとも日本とは別次元の現実主義をユダヤ人たちは持っているようです。世界でもっとも長い歴史を持つ二つの民族の関係をもっと注視しておく必要はありそうです。
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