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馬場正博: 元IT屋で元ビジネスコンサルタント。今は「A Thinker(?)]というより横丁のご隠居さん。大手外資系のコンピューター会社で大規模システムの信頼性設計、技術戦略の策定、未来技術予測などを行う。転じたITソリューションの会社ではコンサルティング業務を中心に活動。コンサルティングで関係した業種、業務は多種多様。規模は零細から超大企業まで。進化論、宇宙論、心理学、IT、経営、歴史、経済と何でも語ります。

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チキンゲームは終わらない
20070220164955.jpg


昨年10月に北朝鮮問題をゲーム理論の観点で分析した記事を書いたのですが(チキンゲームと北朝鮮(1)(2)(3)タカ戦略とハト戦略-チキンゲームを勝ち抜くために(1)(2))、その時の結論は米朝は50%以上の確率で衝突するのではないかというものでした。 しかし、その後米朝のベルリンでの二国間折衝と、それに続く6カ国協議で、北朝鮮が核施設の「無能力化」を条件に、エネルギー支援を受けるという形で、当面の解決が行われました。

50%以上という予想はあっさりはずれたわけですが、前述の記事で「北朝鮮は最後までタカ戦略を取り、回避行動を取ることはない」という部分の予想は正しかったと思います。つまり、北朝鮮は「核兵器を手放す」という妥協はしていないのです。

意外なのはアメリカがハト戦略、つまり回避行動を取ったということです。この場合ハト戦略でないタカ戦略とは「北朝鮮にあくまでも後戻りできない形で、完全な核放棄を実現を要求し続ける」というものです。

アメリカが北朝鮮が「寧辺の黒鉛減速炉を始めとする5箇所の核関連施設を2ヶ月を目処に稼動を停止すること」を核放棄を意味すると解釈するほど、お人よしとは思えません。したがって、今回の合意はチキンゲームで運転する自動車のハンドルを切った、少なくとも大幅にスピードを落とした、ことになるのは理解しているはずです。

今回のアメリカのハト戦略への転換は、アメリカ国内のタカ派から強く非難されていますが、なぜアメリカがここにきてハト戦略を取ることにしたかは今一つはっきりしません。一応考えられるのは北朝鮮が核実験をしたという現実があって、何もしないというわけにはいかない、北朝鮮を攻撃するか、そうでなければ「少しでも朝鮮半島の非核化に向け前進している」という印象を内外に示したかった、ということかもしれません。

ここであたふたと妥協的な態度を取るより、有効性が明らかになった金融制裁をはじめ、北朝鮮への兵糧攻めを続けるという選択肢はなかったのでしょうか。これは軍事オプションを取るという完全なタカ戦略ではありませんが、少なくとも回避行動を取るのとは違います。

アメリカにとって問題なのは、兵糧攻めを続けたあげく、北朝鮮が軍事的に暴発する、または国家として崩壊してしまうという可能性が否定しきれないということです。軍事的な暴発が生じた場合(アメリカから攻撃しても同様)クリントン政権時代の予測で、5.2万人の米軍と50万人の韓国軍の死傷者、および膨大な一般市民の犠牲が生じるとされています。これはイラク戦争とは比較にならない巨大な損害です。

北朝鮮国家が崩壊した場合の予測も困難ですが、これは中国と韓国にとって耐え難い打撃を与えると思われます。戦争ほどではないでしょうが、中国、韓国だけでなく、アメリカや日本にとっても影響は大きいでしょう。

軍事的暴発にしろ、国家の崩壊にしろ実際にどの程度の確率でおきうるかということは、北朝鮮のような閉鎖国家に対して予測することは困難です。私はどちらも起き得ないだろうと思っていますが、本当のところは金正日自身を含め誰もわからないでしょう。

アメリカとしては戦争も国家崩壊も避けたい、まして中東で足を取られている状況ではとても朝鮮半島には手が回らないというのが本音だったのでしょう。戦争は北朝鮮が核兵器を持った現在、クリントン時代の予測よりさらに大きな被害が生じる可能性があります。核兵器の所有は北朝鮮にとってチキンゲームの勝利に間違いなく大きく貢献しているのです。

ただ、チキンゲームはまだ終わっているわけではありません。寧辺の核施設を「無能力化」しても、北朝鮮としては持続的に援助が欲しいでしょうから、何かまた脅威を作り出して、それをネタに援助を引き出そうという戦略を続けることが予想されます。

同じことを繰り返すと、アメリカ政府に対する批判も国内的に高まるでしょうし、本当に堪忍袋の緒を切らせて軍事オプションに突入するか、そこまで行かなくても再び兵糧攻め作戦に戻ることは十分考えられます。また、ゲームは振り出しに戻るわけです。

日本はどうすれば良いのでしょうか。あまり大きな声で言われていないこととして(少なくとも、日本人でそんなことを言う人を私は知りませんが)、日本は北朝鮮問題では一貫して有利な立場を享受しています。これは日本人がそう思っていないだけで、韓国人、北朝鮮人はきっと思っているでしょう。

まず日本の戦後復興に朝鮮戦争が大きな貢献をしたということがあります。朝鮮戦争のとき日本は特需で(当時としては)大きな経済的利益を得ました。これに対し、朝鮮半島では3百万以上の人命が失われ、国土は徹底的に破壊されました。朝鮮戦争がなければ、日本の経済発展はずっと遅れて始まったでしょう。朝鮮戦後も日本はアメリカから旧敵国として敵視されずに、同盟国として扱われることなりました。

その後の日韓条約で日本は韓国に無償、有償合計8億ドル(当時のレートは1ドル360円)の援助を与えることになりましたが、北朝鮮への賠償問題は残っています。北朝鮮との国交正常化交渉が始まれば、北朝鮮への日本の賠償、援助が最大の課題になるでしょうが、核に加えて拉致問題があり、国交正常化交渉はなかなか始まりそうもありません。少なくとも日本は当面の支出は免れ続けているわけです。

北朝鮮の側から見ると、日本は拉致問題を盾に、国交正常化どころか、今回の6カ国協議の合意にもかかわらずエネルギー支援を渋っているという構図になります。北朝鮮は日本に強硬な態度を取っているように見えますが(事実強硬ですが)、日本に対しはチキンゲームを仕掛けることさえできない状態です。

北朝鮮が日本にチキンゲームを仕掛けられないのは、日本は憲法9条のおかげで、朝鮮半島への軍事的コミットをしなくても良いからです。日米安全保障条約や集団的自衛権のことを考えると、朝鮮半島有事の際、本当に日本は戦争に巻き込まれないか、という議論があるでしょうが、朝鮮半島有事すなわちアメリカの参戦ですから、日本だけを標的にはできません。

テポドン、ノドンや原爆で、一方的に日本に甚大な被害を与えることは可能なのかもしれませんが、甚大ではあっても「致命的」ではありません。北朝鮮工作員が原子力発電所や新幹線を攻撃することを心配する人もいますが、これは「戦争」のレベルでは甚大な被害にも相当しません。そもそも、日本は戦争するぞと北朝鮮を脅かしているわけではないので、チキンゲームにならないのです。

戦争ではなく北朝鮮が崩壊した場合はどうでしょう。武装難民が日本に押し寄せることを心配する人もいますが、船で100万人単位の難民がわざわざ日本を目指すとも考えられません(第一そんなに船をもっていないでしょう)。崩壊して困るのは韓国、中国で日本への被害は間接的です。

色々なケースを考えると、北朝鮮がどうなろうと、日本より先に韓国、中国、アメリカが困る以上、チキンゲームでいえば、日本は先頭車両の後ろを走っている状況です。スリリングかもしれませんが、命を的にしているというわけではないのです。

拉致問題は拉致家族にとっては極めて深刻な問題ですが、国家を揺るがすような事態ではありません。拉致問題でチキンゲームをやるなら、人質をとったハイジャック犯人のように、言うとおりにしないと、拉致した日本人を一人づつ殺すぞと言う手はありますが、拉致自身を認めない状況では、その手は最初から放棄しています。

最後は妥協の必要が出てくるかもしれませんが、北朝鮮が核なら日本は拉致問題だとつっぱり続けることで、北朝鮮以上に妥協の値段を高くすることができます(これは拉致家族の心情を無視した考えだというのはもちろんですが)。

このように考えると北朝鮮はチキンゲームでは強いが、チキンゲームの構図に持ち込まない限り、日本から当然受け取れるはずの賠償金ももらえない、損ばかりしている国ということになります。実際、今回の6カ国協議の合意でも、継続的に援助をもらえ続けるとは思えず、核保有国として自尊心を満足させただけで、果実をほとんど得ていないのではないかと思います。

イザヤ・ペンダサン(ユダヤ人となっているが実態は不明)の書いた「日本人とユダヤ人」で、ペンダサンは「日本人は外交的天才」と言っています。対北朝鮮の立ち回りを見ているとあながち間違っていないのかもしれません。

日本にいると「日本は外交が下手だ」「北朝鮮にいいようにあしらわれている」「日本は孤立化の危険がある」という論調ばかりが聞こえてきますが、見方を変えると日本は北朝鮮以上にしぶとく、巧みに事態を泳いでいるといえます。天才は自分のことを案外天才と気がついていないものなのかもしれません。

日本として難しい判断を迫られるとしたら、北朝鮮が再び拉致をあっさり認め「今いる拉致日本人の情報の完全な公開と日本人の返却に応じる」とした場合です。今の北朝鮮を見ていると考えにくいかもしれませんが、小泉訪朝で拉致を部分的であるにしろ認め、5人の帰国を許したことだって、以前の北朝鮮の言動からは考えられないことだったのです。

北朝鮮が絶対しないことがあるとすれば、核兵器を放棄することです。逆に言えばそれ以外は、なんでもありと思ってもよいでしょう。拉致問題が解決したら、核には目をつぶって北朝鮮と国交正常化を行い、莫大な資金援助を北朝鮮に行うのでしょうか。あるいは拉致された日本人を見殺しにするのでしょうか。

日本人はずるいというのは、韓国・北朝鮮、中国に限らず、日本人へのある種のステレオタイプとして存在するのですが、実際は国民的合意に基づき、長期的な観点で優先順位付けをするということが大変苦手な国です。合意形成ができないまま、国内事情に依拠した主張を続けるところが外側からはずるく見えるのかもしれませんが、結局は一番大きな果実を手にすることが多いのも事実のようです。まぁ、これこそ天才の天才たる所以かもしれませんが。
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